優しさの無言に気付くそんな歳
シャンソン再開暗譜に四苦八苦
喜寿同期会あのマドンナはどこにいる
お病気の方や家族、お友達へ 小西ひかる川柳集より
Aアルファクラブ関西通信 掲載句(平成23年8月~25年4月作)
優しい子きっと淋しさ知っている
さりげない言葉に涙する辛さ
温もりを求めて今日も人の輪に
肩書きを省いて生きる気楽さよ
立つ位置が変われば見える人の情
円満の秘訣本音を言わぬこと
ありがたい元気でそこに居るだけで
ライバルのお陰ここまで来れたのは
ありがたい茶飲み友達いるだけで
握る手の強さに老母の思い知る
つらいから心の中は覗かない
かたくなな心を溶かす人の情
悲しみで積もった根雪まだ溶けぬ
ひとりぼち肩に手をやる友の影
近すぎてつい優しさを置きざりに
優しさに囲まれていてなお寂し
優しさについ涙する気の弱り
踏まないでそこに四つ葉のクローバー
平穏な日々手を合わす大病後
初めての小さな勇気おつかいに
どうぞには笑みを浮かべてありがとう
かたくなもやがて溶け出す優しさに
優しさに敏感になる大病後
二人して歩幅合わせる老いの道
ゆっくりと歩幅を合わす老い二人
手術後の重湯に涙ぐむあなた
涙する心が友と友結ぶ
移り住む町で逢えそういい人に
その辛さいつか人への優しさに
また来るね布団の中の母の手に
病人の笑みに安堵の見舞客
老いるのは哀し 友だち減っていく
添い寝され病の重さ知る夫
優しいなやっぱ大病してたんや
お花見にお花見できるありがたさ
散るを知り力の限り咲く刹那
転んでも平気な顔のボク偉い
川柳は人生の友いつまでも
初対面前世もきっと深い縁
【あとがき】
平成十四年二月と二十年九月に胃癌の手術を受けました。(残胃八分の一)。平成二十一年一月から二十二年十二月までの二年間に十五回腸閉塞になりました。とても辛かったです。やるせない思いを五七五にすることを覚えました。それなりに気持ちが楽になりました。平成二十二年十二月に癒着剥離手術を受けてから腸閉塞はなくなりました。今は健康で幸せです。支えてくれた家族、友人に感謝です。スキルス性胃癌を早期に発見してくれた医師と温かく接してくれた看護師さんたちに感謝です。今後は、いただいた余生を、明るく楽しく笑顔を忘れないで生きていきたいと思っています。
平成二十六年五月
アルファクラブ関西 会員 小西ひかる
Bその他の句
駆け上がり最上階でひとりぼち
大空へ飛んでみたいな巣箱出て
老木も生きているぞと新芽出し
五センチの段差怖くて摺り足で
大空に絵筆をふるうつばめたち
何かある急に無口になった妻
やわらかい空気が癒す患者会
淋しげな風鈴主なき書斎
唯生きて唯生きていて欲しいだけ
余命聞きかける言葉が見当たらず
がんばれよ群れに遅れて飛ぶ一羽
無理をせず静かに風の声を聴く
クリップで留めておきたい今日の幸
今がある悔し涙をバネにして
病葉をみつけて掬う優しい手
残り火をじっと見ている秋ひとり
添い寝して軽い寝息に安堵する
風を読み静かに待っている好機
輪の中へ人の優しさ恋しくて
逆縁に泣き暮らす友生きてくれ
見た目ほど楽ではないぞ立ち泳ぎ
足音が響く病院午前二時
リハビリの努力が実り富士登山
母の床窓辺に移す秋日和
いつきても泣かせてくれる母の椅子
何かあるやわらかすぎるこの空気
真っ直ぐに落ちる涙に嘘はない
風涼し誰のものでもないわたし
病んだ今病んだあなたの気持知る
散るを知り競う紅葉の艶やかさ
散り際によぎる華やかすぎた日日
あなたには淋しい人が何故分かる
救われた命今度は人助け
夫婦仲救ってくれた子の寝顔
熱くなれ二度と来ないぞこの潮
掴んだ手離さないでね辛いとき
掴まえてと君の背中に書いてある
温い手が淋しいハート鷲掴み
母を待つ外階段に秋の風
温もりの仲間が悲しみを癒す
いい顔になったな辛さ乗り越えて
枯葉散る人の命の散るごとく
生きているものみな愛し大病後
誰にでも優しくできる人らしい
焦らずに流れにまかせいい出会い
ゆっくりと歩いて気楽最後尾
手術後の重湯に涙五年前
ありがたい好きな時間に愛読書
午前二時柱時計と俺ひとり
向かい風負けはしません二人なら
幸せに暮らしているなその笑顔
寒い朝いつもの人に出会わない
見た目ほど淋しくないぞ一人酒
主役にはなれなかったがいぶし銀
七色の絵筆が走る雨上がり
老木も新芽ふくらむ春隣り
心こめ優しい言葉そっと置く
睦まじくみせておきたい妻の見栄
枯れ木にもやがて吹くだろ春の風
若過ぎて気付かなかった深い傷
馴れ初めを聞かれ若い日甦る
若い日のときめき眠れない夜も
のどかなり日がな一日孫の守り
背伸びして春はまだかと冬木立
誰にでも最初はあるさくじけるな
ついでにのひと言眠れない夜に
ついでにと言ったひと言命取り
気になるな含み笑いをする女房
深情気がつきすぎて疎まれる
欠席の君が気になる患者会
終楽章迷わずタクト振り続け
春恨む見せたかったなこの桜
花吹雪来る筈のない君を待つ
通り抜け喧噪の中春ひとり
跳び箱を一段下げて楽に生き