この次はないかも知れぬこの祭
ゆっくりとしいな祭の夜ぐらい
痛かろう心の針を抜いてやる
4月
つらくとも笑顔を作り元気出せ
暴れても心の悩みとれへんで
にこやかな顔でも心暴れている
風吹いて次の花見は来年や
5月
肩書きを省けば気楽停年後
カウンセラー亭主の悩みそっちのけ
健康の悩み解決笑顔の輪
定年後人の輪求めカルチャーへ
6月
女優さん脱いだとたんに出番増え
夕立が帰路急ぐ人追いかける
虹みつけ指す手も止まる雨上がり
逆らえば倍の御返しとんでくる
逆らうな頭(こうべ)を垂れよ運命に
7月
病得て試されている生き方を
お悔やみの記事真っ先に歳を見る
想い出が記憶の海で泳ぎだす
言い訳はどれにしようか朝帰り
記念日のおねだりもっと甘えても
まぶしいなビーチバレーに弾む胸
足もつれ弾むピンポン逃げて行く
転んでも平気な顔のボク偉い
修羅場でも平気な顔の夫(つま)たぬき
雄孔雀こころ掴まん羽根いっぱい
初対面前世もきっと深い縁
驚いたライオン群れて象襲う
旅の月来し方思い独り酒
病院の去年の満月今我が家
こぼすなよ残ったものを見てごらん
立つ位置が変われば見える人の情
志立てた若き日ほろ苦し
花の香に心奪われ迷い道
焼香の順でお通夜に大げんか
折り紙を教える孫に教えられ
陽だまりに母と子の影鬼ごっこ
車窓越しくちびるに聞くさようなら
ありがたい元気でそこに居るだけで
お見舞いの孫が元気を連れてくる
2012年
添え書きにやさしさ届く年賀状
吹雪突き餅代を手に里帰り
ヤキモチのふくれっ面の目に炎
初恋の手紙書けずに白い朝
おさな子の微睡(まどろみ)の中笑み浮かぶ
話題作読んだつもりの書評欄
べそをかく顔に読み取る寝小便(ねしょんべん)
おばあちゃん帽子にマスク僕だあれ
地でいかにゃたんびにマスクしんどいで
立つ位置を変えて優しくなるあなた
卒業に植えた苗木がいま大樹
学校に出会いと別れ教えられ
感情に走れば負ける勝負ごと
助走前観衆の中無の境地
唄う会晴れ着を競うおばあちゃん
逃げ道を残してくれるできた人
春風に誘い合わせて花の道
考えておくはことわるいつもの手
考える端から忘れ老いを知る
ほどほどに知らん顔する思いやり
老いた今鏡の中に父の顔
握る手の強さに老母の思い知る
悲しみを濡れた枕で知る朝
ひざ枕崩すお許し出ない陽春(はる)
5月
わだかまり溶かす優しい詫び言葉
悲しみで積もった根雪まだ溶けぬ
手をかざし空のリングを指にはめ
空を裂く飛行機雲に我を乗せ
ハグされて心の鍵がそっと開く
6月
傘の花咲いて園児の声はじけ
傘を待つ学童保育最後の子
なつかしい人ばかりいる黄泉の国
夢の中なつかしい過去ありありと
つらかろう溜めた哀しみ胸貸すぜ
7月
すまないと星に言ったらまたたいた
ひとりぼち一番星が友を待つ
優しさにゆるむ涙腺困りもの
履歴書に書くの困るな長所欄
踏まないでそこに四つ葉のクローバー
8月
炎暑にも負けずひまわり凛凛と
あぐらかきぐっと一杯熱帯夜
なめくじのような男に塩をふる
塩辛とお酒一合あればいい
座禅組む悟りのはずが足しびれ
ゆっくりと歩幅を合わす老い二人
ゆっくりはできぬと病後生き急ぐ
ひたむきに黙って生きた母想う
無口こそ寄り添う君の思いやり
手術後の重湯に涙ぐむあなた
優しい子きっと淋しさ知っている
あこがれはきっといつかは恋になる
ドンマイと流せば楽になる師走
雑踏に背を向け師走冬籠り
すすり泣き響く廊下に午前二時
2014年
1月26日(日)
ばあちゃんの日課パソコン開けること
無防備に開けた心に矢がささる
古民家の柱のキズは三世代
午前二時柱時計と俺ひとり
気の合わぬ奴より気楽手酌酒
下戸なのに覚えた手酌左遷先
向かうとこ敵なし孫の立ち回り
向かい風負けはしません二人なら
さなぎたち春の入口探してる
父恋し鬼の捨子が鳴いている
母屋から出たみの虫に冬の風
近詠
面影を求めて止まぬ冬銀河
幸せに暮らしているなその笑顔
寒い朝いつもの人に出会わない
2月23日(土)
主役にはなれなかったがいぶし銀
飼い主に似たのか尻尾振らぬ犬
七色の絵筆が走る雨上がり
だまし絵に隠れた君を追いかける
いややねんなんぼ本気と言われても
片手間に始めた筈がいま本気
梅見頃一句土産に朝散歩
枯れ木にもやがて吹くだろ春の風
近詠
老木も新芽ふくらむ春隣り
心こめ優しい言葉そっと置く
睦まじくみせておきたい妻の見栄
3月23日(日)
若過ぎて気付かなかった深い傷
馴れ初めを聞かれ若い日甦る
若い日のときめき眠れない夜も
蔵の中出番まだかと古道具
ダイエット道具揃えてやせた気に
カウンセラー俺の心を料理する
春告げる釘煮をあてについ二合
えさのない釣糸垂らしのどかなり
近詠
のどかなり日がな一日孫の守り
馴れ初めは青い芽の頃春うらら
哀しみへ涙も出ない陽が沈む
4月27日(日)
ついででもいいから来てと閑古鳥
ついでにのひと言眠れない夜に
ついでにと言ったひと言命取り
気になるな含み笑いをする女房
深情気がつきすぎて疎まれる
欠席の君が気になる患者会
助かるわのしに名前のない粗品
粗品にもにじみ出ているお人柄
終楽章迷わずタクト振り続け
迷うことあらへん金のある方や
近詠
春恨む見せたかったなこの桜
花吹雪来る筈のない君を待つ
通り抜け喧噪の中春ひとり
5月25日(日)
目移りはしたが女房はお前だけ
バイキング隣の皿が気にかかる
なぐさめに多くの言葉逆効果
日日感謝多くの人に支えられ
リストラに定石通り生きたのに
肩の手は許してあげる通り抜け
手品師は人の気持の裏をかく
家出したテントウ虫に草の宿
近詠
独りではないぞ手を振る友がいる
握る手に頬摺りされて帰れない
クラス会今年も一人二人抜け
6月29日(日)
朗報に破顔一笑さあ宴
恋文は母が破いていたらしい
ひと晩でもろくも消えた砂の城
潮騒に遠い日の恋よみがえる
同窓会五十年間道化役
手術跡ちと多すぎる親不幸
理屈より体で学ぶ護身術
ここがいいあなたの側にそっと咲く
あの二人雨が止んでも雨宿り
ばあちゃんの背中で聞いた七つの子
近詠
優しさが辛い 別れの時近い
失ってはじめて知った優しさを
病室の窓から遠い雨を見る
7月27日(日)
嫌なことすぐに忘れる生き上手
自分だけ本音を言わぬ聞き上手
逆らわぬ電気仕掛けの妻欲しい
独り居のキッチン電気つけたまま
石仏俺と一緒に泣いてくれ
とぐろ巻く蛇を心に飼っている
「近詠」
幸せになれば見えないものがある
優しさに気付き素直になる私
余生にも途中下車する好奇心
8月24日(日)
甲子園九回裏の初打席
父だからわけは聞かない娘の涙
人情にもろくて貧乏くじを引く
丸文字の恋文きっとミヨちゃんだ
みな通勤わしゃぶらぶらと図書館へ
妻の海凪の時には何かある
荒海は号泣したい時に行く
風まかせそれもいいだろグライダー
二度付けは御法度でっせおやじの目
「近詠」
今を生きる悔いもおそれもない余生
何色で描いてみようか今日の海
周波数変えて天使の声を聞く
9月28日(日)市民川柳大会
観たいのは映倫マークないビデオ
理屈とは逆の直観どちらとる
また隣唇を噛む壁の花
「吹田市教育員会会長賞」
面影を求めて止まぬ冬銀河
10月26日(日)
思い出の駅に乱舞の秋の蝶
駅ナカへ出かけ淋しさ置いてくる
遠い日の汽笛を聞きに無人駅
注ぐ酒に名残り惜しさが溢れ出る
優しさを注いであげましょ二合まで
目移りをして羅針盤狂いだす
をそんなに並べられてもな
メタボでもモデルになれるマタニティー
寄る辺ない蔓故郷がみつからず
一本の白髪仇のように抜く
「近詠」
背なを追うおいとけぼりがこわくって
幸せはこんなところに落ちていた
あの世では役に立つのか羅針盤
11月23日(日)
診察券出してもあかんコンビニで
じいちゃんがおごらなあかん年金日
友達が欲しいと背なに書いてある
呼び方でわかる凡その夫婦仲
「近詠」
嬉し泣ききっと隠していた辛さ
不幸にも手加減あっていいのでは
気がつけば置いとけぼりの隠れんぼ
12月28日(日)
立つ位置を変えれば違う風が吹く
飛んでみる違う世界が見たくって
海の色違って見えた別れの日
回り道して悔しさを捨ててくる
心棒のおかげここまで回る独楽
嘘のない顔に戻った終電車
自分史にちょっぴり嘘を織り交ぜる
二番手を走り長生きしています
「近詠」
病癒え第九を歌うよろこびよ
老いてなお第九に挑む心意気
歌い終え歓喜の涙頬伝う
2013年
1月20日(日)
新しい薪に残り火燃え盛る
青春の夢を下宿に置き忘れ
ごめんねと素直に言えた夢の中
淋しさに杯かたむける寒の月
嫁ぐ娘に持たす幼い日のリボン
近詠
淋しさに堪えられなくて輪を抜ける
むせび泣き漏れる病室消灯後
微笑みはきっと温もり待っている
2月11日
横恋慕それが失恋第一歩
まずいこと隠し通して石になり
勘定はきっとお連れの伊達女
妻も子も孫もいるのに何故淋し
近詠
淋しさの嗚咽に揺れる冬布団
その辛さいつか人への優しさに
青春の寄り道今は懐かしい
3月24日(日)
振り向いてくれるまで待つ黄水仙
おふくろの味が好みで嫁が来ず
食細い母の小皿につくし和え
近詠
優しい子きっとつらさも知っている
呻くのは淋しいからか夜具の中
草むしり飽きない爺に春霞
4月28日(日)
優しいなやっぱ大病してたんや
心臓の一の矢誰か抜いてくれ
結論を急がせている咳払い
近詠
職人の寡黙に秘めた志
お花見にお花見できるありがたさ
辛いのは人の淋しさ見えたとき
5月26日(日)
ふる里の我が家そのまま夢の中
そのままでいいよにあぐら五十年
踏み台になってやるぞと背を丸め
口説くのに利用していた花言葉
よう言うわ甘いマスクできついこと
針山に嫁と姑のもめん針
近詠
道化師の目は物悲し俺を射る
逆縁とぽつり洩らしたひと哀し
亡き夫と笑みを交わしたティータイム
6月23日(日)
指揮棒の先で踊っている音符
盆踊り父母楽しげに向う岸
ほろにがい酒酌み交わす左遷先
ほろにがい恋大人への第一歩
藤棚のつるに届くかもみじの手
近詠
再婚もいいよと逝った妻哀し
振り向いて欲しくて母の背を追う
ポイントであいづちを打つ聞き上手
7月28日(日)
雨垂れはかなわぬ恋のセレナーデ
しずくにも意地があります石穿つ
一滴じゃ効かなかったか惚れ薬
三度目のどじょうすくいに一人立ち
群れを出る石の届かぬところまで
生真面目でいい人なのに嫁来ない
子燕がやっと覚えた宙返り
近詠
淋しげな風鈴主なき書斎
唯生きて唯生きていて欲しいだけ
余命聞きかける言葉が見当たらず
8月25日(日)
奔放に育てすぎたかまた離婚
ノウハウを教え母屋を乗っ取られ
本心を聞けばよかった嫁ぐ前
たっぷりと墨を含ませ「不退転」
欲得を抜いてつき合う定年後
添い寝して軽い寝息に安堵する
飛びつく子母の温もり欲しくって
近詠
風を読み静かに待っている好機
輪の中へ人の優しさ恋しくて
逆縁に泣き暮らす友生きてくれ
9月22日(日)市民川柳大会
何かあるやわらかすぎるこの空気
真っ直ぐに落ちる涙に嘘はない
10月20日(日)
病んだ今病んだあなたの気持知る
家出した我が娘今ではいいママに
ネクタイの捻れないのに直す妻
ねじれたら首締まるかな赤い糸
流れ弾前から来ると思い込み
二次会へ流れ初めて聞く本音
俺のだけ最初に落ちる竹トンボ
人生はびっくり箱の連続だ
あれからは帰ってこないブーメラン
近詠
散るを知り競う紅葉の艶やかさ
散り際によぎる華やかすぎた日日
あなたには淋しい人が何故分かる
11月23日(土)
ピンシューズ見付け車両を変える朝
掴んだ手離さないでね辛いとき
掴まえてと君の背中に書いてある
温い手が淋しいハート鷲掴み
一泊もしないで帰る里帰り
一人だとこんなのびのびティータイム
近詠
母を待つ外階段に秋の風
温もりの仲間が悲しみを癒す
いい顔になったな辛さ乗り越えて
12月23日(月)
無駄話聞くのも介護嫁のぐち
終わる恋と知りつつ逢いにいそいそと
仏顔やっぱり嘘はつけんなあ
独り旅そろそろかもねいい出合い
近詠
枯葉散る人の命の散るごとく
生きているものみな愛し大病後
誰にでも優しくできる人らしい
2012年
1月22日(日)
不義理でも無心ことわる親友だから
頼まれる仲ではないと後退り
頼まれることもなくなり石をける
縄のれん下ろし女将と飲み直し
つらかろう俺も一緒に酔ってやる
ほどほどにさびを利かせる優しさよ
抱きしめて手が回らない胴回り
近詠
文楽の仕草に習う艶っぽさ
花の香に心奪われ迷い道
初恋の手紙が書けず白い朝
2月19日(日)
立つ位置が変われば見える人の情
寡黙でも腹にいちもつ目に炎
大病が生き方変える鍵になり
鎮魂の想いを込めてタクト振る
近詠
ありがたい茶飲み友達いるだけで
毎日をまっさらにする雪の朝
老いてなおときめく心持て余す
3月1日(木) 「一日川柳教室」
お茶だけと誘われたのに二日酔い
春風に誘い合わせて花めぐり
絵本読む母も眠りに誘われる
3月25日(日)
料理より凝った器を先にほめ
平凡な絵を引き立てる凝った額
占いに凝って迷いがまた増えて
柱知る寡黙な父の生きざまを
風雪に堪えた柱に父をみる
捕まえて万歳させて服を着せ
真実を語れば増える敵味方
幕間から座長がのぞく客の入り
近詠
話題作読んだつもりの書評欄
多すぎる畑違いの評論家
同性の方がきびしいあら探し
4月15日(日)
不思議がる心があればまだ老いぬ
数学で自然の不思議解く学者
座を仕切る奴が仕切れぬ家の中
悲しみで積もった根雪いつ溶ける
近詠
雨宿り鈴を失くした迷い猫
わからないことわかりだす 老い楽し
老いてなお桜花に負けじ紅をさす
5月20日(日)
泣きません涙の蛇口固く閉じ
蛇口からがぶ飲み若さはじけ散る
托鉢にせめておむすび一個でも
恨むまいせめて線香一本を
淋しげな花を選んだ蝶の恋
青春の古傷痛むバリケード
純愛がぶつかり合って悔い残る
近詠
握る手の強さに老母(はは)の思い知る
淋しそう最前列でひとりぼち
さりげない言葉に涙する辛さ
6月24日(日)
背伸びして大人の秘密見たがる子
かたくなな心を溶かす人の情
悲しみで積もった根雪まだ溶けぬ
わだかまり溶かす優しい詫び言葉
しなやかに一筆書きの様に生き
近詠
ひとりぼち肩に手をやる友の影
近すぎてつい優しさが置きざりに
優しさに囲まれていてなお寂し
7月22日(日)
踏まないでそこに四つ葉のクローバー
新しい出会いありそう一人旅
近詠
頬笑みで淋しさ隠すいじらしさ
温もりが欲しくて友の手を握る
ひとりぼち無性に欲しい優しさが
8月26日(日)
勝気より一歩引くのが恋上手
貸さへんでなんぼ仏と拝んでも
平穏な日々手を合わす大病後
両親を斜めに見上げ反抗期
補聴器の聞こえすぎるは不和のもと
近詠
つい声を淋しげな人放っとけず
ハンカチに手渡す人の温もりが
美しく決めたい着地人生の
9月23日(日)吹田市民川柳大会
初めての小さな勇気おつかいに
どうぞには笑みを浮かべてありがとう
かたくなもやがて溶け出す優しさに
サーフィンを終えた二人に秋の風
10月28日(日)
道化師は素顔を家に置いて来る
縄のれん下ろし素顔になる女将
首よりはましだと拝受する左遷
ありがとうよくぞここまで秋日和
二人して歩幅合わせる老いの道
近詠
親友に本音も言えずひとりぼち
淋しさが律儀な母の乱筆に
優しさに敏感になる大病後
11月23日(金)
想い出が帰らぬ人を追いかける
別れてもまだ追いかける夢の中
胸騒ぎ打ち消す母の声の張り
くつろいで尻尾を出した古狸
手品師は話術で客を油断させ
亡き妻の日記は読めず封をする
近詠
友が逝く哀しいまでに青い空
母の床窓辺に移し日向ぼこ
温もりを求めて今日も人の輪に
12月24日(月)
触る手の温さに溶ける雪女
涙する心が友と友結ぶ
つながった電話に安堵母の声
近詠
淋しさに盃を重ねる冬隣
あれこれと悩む子をただ抱きしめる
優しさに包まれたくて人の輪へ