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川柳ひかるワールドへようこそ

面影を求めて止まぬ冬銀河 
いい朝だ父母の遺影が笑ってる
近すぎてつい優しさを置き去りに

2018年1月(抜けた句のみ。お題抜き)

2018年01月30日 | 吹田川柳会

2018年

1月28日(日)

妻の目を覗けばそこに閻魔さま
優等生わざと覗かす通知表
答案を覗かせました好きな子に
次は勝つ負けた悔しさ忘れぬ子
辛そうな人に優しくさりげなく
最初から脇役目指しいぶし銀
欲張りに生きなきゃ余命ある限り
一日に欲しい四十八時間
「近詠」
姉の通夜外は凩哭く枯木
もうどこも痛まないよと姉眠る
ありがとの笑みを遺して旅に出る

コメント (2)

2018年1月(お題入り。ボツ句含む)

2018年01月30日 | 吹田川柳会

2018年

1月28日(日)

「覗く」
妻の目を覗けばそこに閻魔さま
優等生わざと覗かす通知表
答案を覗かせました好きな子に
「勝つ」
群がっていても淋しさには勝てぬ
次は勝つ負けた悔しさ忘れぬ子
二度勝って一度は負けてやる将棋
「目指す」
山頂を目指すライバルいい友に
辛そうな人に優しくさりげなく
最初から脇役目指しいぶし銀
「欲」
欲張りに生きなきゃ余命ある限り
一日に欲しい四十八時間
老木も欲の芽を出し若がえる
「近詠」
姉の通夜外は凩哭く枯木
もうどこも痛まないよと姉眠る
ありがとの笑みを遺して旅に出る

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NHKぼやき川柳(2011年から2014年)

2018年01月27日 | NHKぼやき川柳(2011年から2014年)

「ぼやき川柳」で読まれた川柳(2の1) 

ラジオ柳名「こにたん」(小西ひかる)

 

二〇一一年          (カッコ内はお題)

六月四日   下心消えたとたんにもてはじめ(全部)

七月二三日  あの人のカラオケ誰か止めてくれ(止める)

八月二〇日  スナックで帰りにくいな客一人(帰る)

九月一七日  川柳は人生の友いつまでも(時々) ※1 

一〇月八日  行列のわりに少ないお賽銭(列)

一〇月一五日 肩書きを省いて生きる気楽さよ(省く)

一〇月二二日 ロボットよ俺と一緒に泣いてくれ(ロボット)

一〇月二九日 常連客(おなじみ)としんみり語る店じまい(閉じる)※2

一一月一九日 円満の秘訣本音を言わぬこと(音)※2

一二月三日  玉子焼き食べて寿司屋の品定め(極める)

 

二〇一二年

一月七日   ライバルのお陰ここまで来れたのは(プロ)

一月一四日  ありがたい茶飲み友達いるだけで(飲む)

一月二八日  ときめきはぼやせんボツになるまでや

(ときめく)

(注)ぼやせん=「ぼやき川柳」(NHKラジオ番組名)※3

二月一八日  失敗にあふれる笑い人徳や(あふれる)

三月三日   白酒に頬も財布もゆるむばあ(勢い)

四月一四日  川柳は遊びのはずが苦の種に(遊ぶ)

四月二一日  落書きも今じゃネットでツイッター(落書き)

五月一二日  参観日来れない母を待つ子供(母)

ぼやき川柳」で読まれた川柳(2の2)

 

五月二六日  退職日妻へ内緒の感謝状(びっくり)

六月六日   ほめ言葉よりも料亭連れてって(料理)

九月八日   海外で賞を取ったら客が増え(映画)

九月一五日  曲がり角偶然会った振りをする(工夫)

九月二二日  名門小入試問題じい解けず(抱える)

九月二九日  余生にも進路相談ないですか(進む)

一二月二二日 足元でツケにできるか決めるママ(靴)

二〇一三年      

一月一九日  客一人貸し切りですと言われても(占める)

一月二六日  輝いて見えた未来がこれかいな(未来)

六月二二日  来世では静かな人と暮らしたい(静か)

七月一三日  懐が深いと言われついおごる(深い)

二〇一四年

一月二五日  見た目ほど淋しくないぞ一人酒(酒)       

「ぼやき川柳」は、NHK第一ラジオで放送の「かんさい土曜ホットタイム」の中の「ぼやき川柳アワー」(毎週土曜日三時五分~五五分)、人気のある長寿番組です。川柳作家大西泰世先生選。司会進行佐藤誠アナウンサー。

 ※1 この日九月一七日は胃癌の手術をした三年後の記念日でした。NHK大阪放送局スタジオに初めて参加して投句。こにたんの投稿と川柳が読まれました。『大西先生こんにちは。ぼやき川柳のファンです。NHKテレビで佐藤誠さんと番組をしておられた時からず~とファンです。平成一四年と二〇年に胃癌の手術を受けました。平成二〇年九月の入院中もTVを録画したDVDを病院に持ち込んでぼやき川柳を観ていました。辛い時苦しい時、どんなに癒され励まされたか知れません。今日九月一七日は三年前に胃がんの手術を受けた記念日です。昨日胃カメラの結果がわかり胃がんの再発がないことがわかりました。今日は赤飯です。川柳でいつも笑顔を忘れなかったことが良かったのだと思います。本当にありがとうございました。「川柳は人生の友いつまでも」いまの実感です。これからもみんなの心をなごませ励まし続けてくださいね。こにたん。』

会場から温かい拍手をもらい感激しました。

 ※2 NHK大阪放送局スタジオに参加して投句。

 ※3 NHK大阪ホールの公開放送の抽選に当たり観劇。会場で投句、会場大爆笑、インタビューを受け全国放送されました。

 

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お病気の方や家族、お友達へ 小西ひかる川柳集より

2018年01月24日 | 病気の方へ

 

お病気の方や家族、お友達へ 小西ひかる川柳集より

Aアルファクラブ関西通信 掲載句(平成23年8月~25年4月作)

優しい子きっと淋しさ知っている

さりげない言葉に涙する辛さ

温もりを求めて今日も人の輪に

肩書きを省いて生きる気楽さよ

立つ位置が変われば見える人の情

円満の秘訣本音を言わぬこと

ありがたい元気でそこに居るだけで 

ライバルのお陰ここまで来れたのは

ありがたい茶飲み友達いるだけで

握る手の強さに老母の思い知る

つらいから心の中は覗かない

かたくなな心を溶かす人の情

悲しみで積もった根雪まだ溶けぬ

ひとりぼち肩に手をやる友の影

近すぎてつい優しさを置きざりに

優しさに囲まれていてなお寂し

優しさについ涙する気の弱り

踏まないでそこに四つ葉のクローバー

平穏な日々手を合わす大病後

初めての小さな勇気おつかいに

どうぞには笑みを浮かべてありがとう

かたくなもやがて溶け出す優しさに

優しさに敏感になる大病後

二人して歩幅合わせる老いの道

ゆっくりと歩幅を合わす老い二人 

手術後の重湯に涙ぐむあなた

涙する心が友と友結ぶ

移り住む町で逢えそういい人に

その辛さいつか人への優しさに

また来るね布団の中の母の手に

病人の笑みに安堵の見舞客

老いるのは哀し 友だち減っていく

添い寝され病の重さ知る夫

優しいなやっぱ大病してたんや

お花見にお花見できるありがたさ

散るを知り力の限り咲く刹那

転んでも平気な顔のボク偉い

川柳は人生の友いつまでも

初対面前世もきっと深い縁

【あとがき】

平成十四年二月と二十年九月に胃癌の手術を受けました。(残胃八分の一)。平成二十一年一月から二十二年十二月までの二年間に十五回腸閉塞になりました。とても辛かったです。やるせない思いを五七五にすることを覚えました。それなりに気持ちが楽になりました。平成二十二年十二月に癒着剥離手術を受けてから腸閉塞はなくなりました。今は健康で幸せです。支えてくれた家族、友人に感謝です。スキルス性胃癌を早期に発見してくれた医師と温かく接してくれた看護師さんたちに感謝です。今後は、いただいた余生を、明るく楽しく笑顔を忘れないで生きていきたいと思っています。

平成二十六年五月 

アルファクラブ関西 会員 小西ひかる

Bその他の句

駆け上がり最上階でひとりぼち

大空へ飛んでみたいな巣箱出て

老木も生きているぞと新芽出し

五センチの段差怖くて摺り足で

大空に絵筆をふるうつばめたち

何かある急に無口になった妻

やわらかい空気が癒す患者会

淋しげな風鈴主なき書斎

唯生きて唯生きていて欲しいだけ

余命聞きかける言葉が見当たらず

がんばれよ群れに遅れて飛ぶ一羽

無理をせず静かに風の声を聴く

クリップで留めておきたい今日の幸

今がある悔し涙をバネにして

病葉をみつけて掬う優しい手

残り火をじっと見ている秋ひとり

添い寝して軽い寝息に安堵する

風を読み静かに待っている好機

輪の中へ人の優しさ恋しくて

逆縁に泣き暮らす友生きてくれ

見た目ほど楽ではないぞ立ち泳ぎ

足音が響く病院午前二時

リハビリの努力が実り富士登山

母の床窓辺に移す秋日和

いつきても泣かせてくれる母の椅子

何かあるやわらかすぎるこの空気

真っ直ぐに落ちる涙に嘘はない

風涼し誰のものでもないわたし

病んだ今病んだあなたの気持知る

散るを知り競う紅葉の艶やかさ

散り際によぎる華やかすぎた日日

あなたには淋しい人が何故分かる

救われた命今度は人助け

夫婦仲救ってくれた子の寝顔

熱くなれ二度と来ないぞこの潮

掴んだ手離さないでね辛いとき

掴まえてと君の背中に書いてある

温い手が淋しいハート鷲掴み

母を待つ外階段に秋の風

温もりの仲間が悲しみを癒す

いい顔になったな辛さ乗り越えて

枯葉散る人の命の散るごとく

生きているものみな愛し大病後

誰にでも優しくできる人らしい

焦らずに流れにまかせいい出会い

ゆっくりと歩いて気楽最後尾

手術後の重湯に涙五年前

ありがたい好きな時間に愛読書

午前二時柱時計と俺ひとり

向かい風負けはしません二人なら

幸せに暮らしているなその笑顔

寒い朝いつもの人に出会わない

見た目ほど淋しくないぞ一人酒

主役にはなれなかったがいぶし銀

七色の絵筆が走る雨上がり

老木も新芽ふくらむ春隣り

心こめ優しい言葉そっと置く

睦まじくみせておきたい妻の見栄

枯れ木にもやがて吹くだろ春の風

若過ぎて気付かなかった深い傷

馴れ初めを聞かれ若い日甦る

若い日のときめき眠れない夜も

のどかなり日がな一日孫の守り

背伸びして春はまだかと冬木立

誰にでも最初はあるさくじけるな

ついでにのひと言眠れない夜に

ついでにと言ったひと言命取り

気になるな含み笑いをする女房

深情気がつきすぎて疎まれる

欠席の君が気になる患者会

終楽章迷わずタクト振り続け

春恨む見せたかったなこの桜

花吹雪来る筈のない君を待つ

通り抜け喧噪の中春ひとり

跳び箱を一段下げて楽に生き

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自己紹介にかえて ハガキ3枚(ABC)

2018年01月24日 | 自己紹介にかえて ハガキ3枚

 

Aハガキ1枚目 

小西ひかる川柳~作品集より抜粋(三の一) 

近すぎてつい優しさを置き去りに

手術後の重湯に涙ぐむあなた

大病に優しくなっていくあなた

さりげない言葉に涙する辛さ

散るを知り力の限り咲く刹那

生きているものみな愛し大病後

温もりを求めて今日も人の輪へ

平凡な日日手を合わす大病後

優しい子きっと淋しさ知っている

見た目ほど楽ではないぞ立ち泳ぎ

跳び箱を一段下げて楽に生き

枯葉散る人の命の散るごとく

老いるのは哀し友だち減っていく

 

平成十四年二月と二十年九月に胃癌の手術を受けました。(残胃八分の一)。平成二十一年一月から二十二年十二月までの二年間に十六回腸閉塞になりました。とても辛かったです。やるせない思いを五七五にすることを覚えました。それなりに気持ちが楽になりました。平成二十二年十二月に癒着剥離手術を受けてから腸閉塞はなくなりました。今は健康で幸せです。支えてくれた家族、友人に感謝です。スキルス性胃癌を早期に発見してくれた医師と温かく接してくれた看護師さんたちに感謝です。今後は、いただいた余生を、明るく楽しく笑顔を忘れないで生きていきたいと思っています。

平成二十六年十月 大阪 吹田川柳会 小西ひかる

 

 

Bハガキ2枚目

小西ひかる川柳~作品集より抜粋(三の二) 

面影を求めて止まぬ冬銀河

       (吹田市民川柳大会 教育委員会賞)

病室の窓から遠い雨を見る

独りではないと手を振る友がいる

心こめ優しい言葉そっと置く

嬉し泣ききっと隠していた辛さ

優しさに気付き素直になる私

ここがいいあなたの側にそっと咲く

日日感謝多くの人に支えられ

嫌なことすぐに忘れる生き上手

幸せになれば見えないものがある

駅ナカへ出かけ淋しさ置いてくる

余生にも途中下車する好奇心

逆境をさらりと語る人になり

人の世の儚さ思う風花に

生きるため捨ててきたもの今愛し

今を生きる悔いもおそれもない余生

 

平成二十六年十一月に腸閉塞になり十五日間入院しました。無理をして生き急いでいました。これからは、もう少し、ゆっくりと生きていこうと思っています。

平成二十七年三月    

大阪 吹田川柳会 小西ひかる 

 

Cハガキ3枚目

小西ひかる川柳~作品集より抜粋(三の三) 

やわらかい空気が癒す患者会

欠席の君が気になる患者会

独りではないこの辛さ患者会

優しいなやっぱ大病してたんや

病葉をみつけて掬う優しい手

優しさを注いであげましょ二合まで

人生に乾杯一度切りだもん

優しさについ涙する気の弱り

日に一度笑えばよしとする病後

青春を辿りたくなり鈍行に

あの夏の海に青春浮いたまま

病んでまた耐えられるかと試される

回り道自分を見つめ直す時

あと少し いい思い出を作りましょ

思うまま生きて悔いなしこの老後

ありがとねここまでついてきてくれて

 

平成二十七年六月に腸閉塞(十九回目)になり十一日間入院しました。疲れと冷えが身体の弱いところを突いてくるようです。まだまだ修行が足りません。これからは、日々平穏無事を大切にして、生きて行きたいと思っています。

平成二十七年九月    

大阪 吹田川柳会 小西ひかる

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2012年(お題入り。ボツ句あり)(連想吟カットあり)

2018年01月21日 | 吹田川柳会

 

2012年
1月22日(日)
「頼む」

不義理でも無心ことわる親友だから
頼まれる仲ではないと後退り
頼まれることもなくなり石をける
「酔う」

縄のれん下ろし女将と飲み直し
つらかろう俺も一緒に酔ってやる

酔いに負けついうたた寝の目に涙
「わさび」

ほどほどにさびを利かせる優しさよ

廻る寿司さびがりあがりみなセルフ

退職後お前がネタで俺わさび

「窓」

さようなら曇りガラスの字をなぞる

窓明かりひとり佇む月見草

窓を開け小鳥を放つ心地よさ
「連想吟」


抱きしめて手が回らない胴回り

「近詠」

文楽の仕草に習う艶っぽさ
花の香に心奪われ迷い道
初恋の手紙が書けず白い朝

2月19日(日)

「なさけ」

立つ位置が変われば見える人の情

遠吠えが母を恋しと冴える月

人恋しなさけ欲しくてあおる酒

「腹」

寡黙でも腹にいちもつ目に炎

優しさがお腹をさする母の手に

太っ腹見てくれだけのけちんぼう
「鍵」

大病が生き方変える鍵になり

鍵音に嫁も薄目の午前様

円満の鍵は本音を言わぬこと
「笑い」

物言いを優しくすれば笑顔増え

平然と微笑みながら嫉妬する

気位で笑みをたたえる憂い顔

「連想吟」


鎮魂の想いを込めてタクト振る

ハグよりもおやつが欲しいもう三時

抱き合って命の温さ確かめる

「近詠」
ありがたい茶飲み友達いるだけで
毎日をまっさらにする雪の朝
老いてなおときめく心持て余す

3月1日㈭「一日川柳教室」
「誘う」

お茶だけと誘われたのに二日酔い
春風に誘い合わせて花めぐり
絵本読む母も眠りに誘われる

3月25日(日)

「凝る」

料理より凝った器を先にほめ
平凡な絵を引き立てる凝った額
占いに凝って迷いがまた増えて
「柱」

柱知る寡黙な父の生きざまを
風雪に堪えた柱に父をみる

嫁ぐ前柱の傷を撫でる父
「万歳」

捕まえて万歳させて服を着せ

降参の万歳孫の的になり

逆立ちでよいしょと地球持ち上げる
「増える」

真実を語れば増える敵味方

居酒屋で名前知らない友が増え

頼まれる事増えるのも人徳や

「連想吟」


幕間から座長がのぞく客の入り

月明かりたしかここらに埋めたはず

満月に鎌で決闘影二つ

「近詠」
話題作読んだつもりの書評欄
多すぎる畑違いの評論家
同性の方がきびしいあら探し

4月15日(日)

「不思議」

不思議がる心があればまだ老いぬ
数学で自然の不思議解く学者

不思議だねまた会ったねと口説く奴
「仕切る」

座を仕切る奴が仕切れぬ家の中

運命と仕切り直しの大病後

国境を取れば地球は一ケ国
「積む」

悲しみで積もった根雪いつ溶ける

善を積む人に大病なんでやねん

想い出を積んだ夜汽車に老二人
「土産」

はりこんだ手土産実は頼み事

フルムーン妻に隠れて買う土産

お別れの痛みあなたの置き土産

「近詠」
雨宿り鈴を失くした迷い猫
わからないことわかりだす 老い楽し
老いてなお桜花に負けじ紅をさす

5月20日(日)

「蛇口」

泣きません涙の蛇口固く閉じ
蛇口からがぶ飲み若さはじけ散る

蛇口まで届かぬ幼児かかえ上げ
「せめて」

托鉢にせめておむすび一個でも
恨むまいせめて線香一本を

お別れにせめて聞かせてありがとう
「蝶」

淋しげな花を選んだ蝶の恋

群舞する蝶を尻目に花を摘む

夫には見せない蝶の髪飾り
「転ぶ」

転ぶなら一緒に転ぶ友だから

故郷で寝転び仰ぐ星月夜

鬼ごっこわざと転んで母を見る
「連想吟」
 

青春の古傷痛むバリケード

純愛がぶつかり合って悔い残る

襟正し初心の日々が甦る

「近詠」

握る手の強さに老母(はは)の思い知る
淋しそう最前列でひとりぼち
さりげない言葉に涙する辛さ

6月24日(土)

「背伸び」

背伸びして大人の秘密見たがる子

背伸びして宇宙(そら)のリングを指にはめ

背伸びして見えるだろうか黄泉の国
「とける」

かたくなな心を溶かす人の情
悲しみで積もった根雪まだ溶けぬ
わだかまり溶かす優しい詫び言葉
「門」

芸の道破門覚悟の口答え

優しさの無視に心の門閉ざす

門扉にはお金をかける見栄っ張り
「電気」

灯り消え思いめぐらす退院後

電気では点かぬ優しい心の灯

節電で個室の家族集う居間

「連想吟」
  

しなやかに一筆書きの様に生き

優しさが愛のほころび縫う糸に

端役でもサイン練習する野心

「近詠」
ひとりぼち肩に手をやる友の影
近すぎてつい優しさが置きざりに
優しさに囲まれていてなお寂し

7月22日(日)

「踏む」

踏まないでそこに四つ葉のクローバー

天才は未踏の分野歩く人

純愛を傷つけ合った傷疼く
「出会い」

新しい出会いありそう一人旅

青春に出会いたくなり溜り場へ

初対面前世にきっと深い縁
「いびき」

いびきさえ小さくなった夫哀し

高いびきどこか似ているあの人に

自尊心傷つきいびきなどかけぬ

「羽根」

羽根痛め群れから遅れ淋しそう

恋をした天使が羽根の忘れ物

ひとりぼち折れた翼の渡り鳥
「近詠」
頬笑みで淋しさ隠すいじらしさ
温もりが欲しくて友の手を握る
ひとりぼち無性に欲しい優しさが

8月26日(日)
「勝気」

勝気より一歩引くのが恋上手

勝気などとうの昔に放ってきた

持て余す勝気御すため瞑想を
「ほとけ」

貸さへんでなんぼ仏と拝んでも

四度目はないと仏に叱られる

勝負事ほとけ心が仇になり
「後」

平穏な日々手を合わす大病後

淋しさは祭りの後の静寂に

残照に重ねる余生日没後
「明日」

炎天下明日もひまわり凛凛と

青い実も明日色づく恋をして

出会うかも未知の自分に明日こそ

「連想吟」
 

両親を斜めに見上げ反抗期

補聴器の聞こえすぎるは不和のもと

試合前心落ちつくヘッドホン

「近詠」
つい声を淋しげな人放っとけず
ハンカチに手渡す人の温もりが
美しく決めたい着地人生の

9月23日(日)吹田市民川柳大会
「勇気」

初めての小さな勇気おつかいに

真実の報道求め戦場へ
「浮く」

どうぞには笑みを浮かべてありがとう

浮ついた心諫める父の咳
「やがて」

かたくなもやがて溶け出す優しさに

待ちましょうやがておさまる反抗期
「連想吟」

 

サーフィンを終えた二人に秋の風

風当たり避けて二番手避ける知恵
「やる気」

叱るよりやる気引き出すほめ上手

ひいきほど辛いやる気の評価点
「乱」

淋しさが律義な母の乱筆に

乱れないつもりのお通夜泣き崩れ

10月28日(日)

「素顔」

道化師は素顔を家に置いて来る
縄のれん下ろし素顔になる女将

落語家の素顔高座と大違い
「首」

首よりはましだと拝受する左遷

番犬の首輪が外れ老いを知る

首と手の皺は年齢隠せない

「あくび」

噺家は客のあくびで芸磨く

退屈な授業に抗議するあくび

噛み殺すあくびを講師目で咎め
「予定」

已むを得ぬ葬儀のダブルブッキング

生き急ぎしているハードスケジュール

予定表見知らぬ印何だっけ

「連想吟」
  

ありがとうよくぞここまで秋日和

二人して歩幅合わせる老いの道

共通の敵を作って手をつなぐ

「近詠」
親友に本音も言えずひとりぼち
淋しさが律儀な母の乱筆に
優しさに敏感になる大病後

11月23日(金)
「未練」
想い出が帰らぬ人を追いかける
別れてもまだ追いかける夢の中
明日にする彼との写真火あぶりに
「騒ぐ」
胸騒ぎ打ち消す母の声の張り
潮騒の浜に黄昏老い二人
淋しさが分かり付き合う空騒ぎ
「無口」
ひたむきに黙って生きる人が好き
寡黙こそ優しい思いやりでした
つらい時無口な女将ありがたい
「油断」
くつろいで尻尾を出した古狸

手品師は話術で客を油断させ
うっかりと上座に座りまとめ役
「連想吟」
  

亡き妻の日記は読めず封をする

老々の介護に備え足鍛え

追憶の白球跳ねる黄昏に

「近詠」
友が逝く哀しいまでに青い空
母の床窓辺に移し日向ぼこ
温もりを求めて今日も人の輪に

12月24日(月)
「触る」
庭先に触りたくなる冬の蝶
触る手の温さに溶ける雪女
触れないで今の私は高圧線
「調子」
ハモニカの調べは哀し父の影
幸せの調べ奏でる子の寝息
体調がいいと風呂屋で浪花節
「結ぶ」
昼休みおむすび一個ロマンスに
涙する心が友と友結ぶ
結び目がゆるみはじめた午前二時
「つなぐ」
つながった電話に安堵母の声
携帯がつなぐ深夜のさびしんぼ
場つなぎの芸が本番よりも受け
「近詠」
淋しさに盃を重ねる冬隣
あれこれと悩む子をただ抱きしめる
優しさに包まれたくて人の輪へ

 

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2013年(お題入り。ボツ句あり)(連想吟カットあり)

2018年01月20日 | 吹田川柳会


2013年1月20日(日)
「新」
新しい薪に残り火燃え盛る
新しい出会いありそう余生にも
かしわ手に心いれかえ真っ新に
「夢」
青春の夢を下宿に置き忘れ
ごめんねと素直に言えた夢の中
絶叫に目醒めた夢をすぐ忘れ
「杯」
淋しさに杯かたむける寒の月
追憶の悔いる嗚咽に杯が揺れ
義理となる上座で受けた一献が
「美」
美しさ故の悩みを知らぬ幸
愛嬌は美人に不要という矜持
息ひそめ月下美人よ今宵こそ

「連想吟」

   

嫁ぐ娘に持たす幼い日のリボン

涙顔見られたくないサングラス

おーい春新芽出番を待っている

「近詠」
淋しさに堪えられなくて輪を抜ける
むせび泣き漏れる病室消灯後
微笑みはきっと温もり待っている

2月11日(月)建国記念日
「横」
横恋慕それが失恋第一歩
面倒見いい子の横に転校生
横臥する母の背を撫で子守唄
「まずい」
まずいこと隠し通して石になり
念押され言えなくなったまずい事
ビギナーズラックと知らず賭け続け
「派手」
勘定はきっとお連れの伊達女
淋しさは派手におどける子の影に
派手な服遠慮してねと参観日
「欲ばり」
妻も子も孫もいるのに何故淋し
火事場でも証文だけはふところに
欲ばりが鏡を見たら鬼がいた
「近詠」
淋しさの嗚咽に揺れる冬布団
その辛さいつか人への優しさに
青春の寄り道今は懐かしい

3月24日(日)
「待つ」
振り向いてくれるまで待つ黄水仙
満開に待っているかも黄泉の人
待ちかねた言われ財布の紐締める
「好む」
おふくろの味が好みで嫁が来ず
隅っこは一人を好む客の席
お好みはじっと見ていることらしい
「つらい」
残されるつらさなもんか解放感
つらくとも弱音は吐かぬ父の背に
呻くのを聞くのはつらい午前二時
「砂」
孫作る砂のぼたもち食べる振り
お題「砂」黄砂を詠めばボツやろな
砂時計メタボを知らぬそのくびれ

「連想吟」  

  

食細い母の小皿につくし和え

花になり蕾時代を懐かしむ

這い這いの孫の目の前土筆立つ
「近詠」
優しい子きっとつらさも知っている
呻くのは淋しいからか夜具の中
草むしり飽きない爺に春霞

4月28日(日)
「矢張り」
優しいなやっぱ大病してたんや
念押しの秘密はやはりすぐ噂
あの人はやはり待ち人だったのね
「痛い」
心臓の一の矢誰か抜いてくれ
身に覚えあるから痛いご忠告
痛いとこ突かれて友に感謝する
「結」
結論を急がせている咳払い
古傷は出雲の神が知っている
結束のシュプレヒコール初夏の汗
「すまん」
逆切れにすまんが無難いつもの手
すまんではすまんと言われまたすまん
すまんなあから始まるは頼み事
「近詠」
職人の寡黙に秘めた志
お花見にお花見できるありがたさ
辛いのは人の淋しさ見えたとき

5月26日(日)
「そのまま」
ふる里の我が家そのまま夢の中
そのままでいいよにあぐら五十年
寝言さえなけりゃそのまま無事な朝
「利用」
踏み台になってやるぞと背を丸め
口説くのに利用していた花言葉
利用価値あるうちだけの醒めた恋
「面」
よう言うわ甘いマスクできついこと
善い人のお面はずして楽に生き
面食いと言った割にはあのお連れ
「勝気」
母が臥し嫁の勝気が顔を出し
勝気な娘やっぱ仕留めた玉の輿
ライバルに勝気みせずに油断させ

「連想吟」

   

針山に嫁と姑のもめん針

痛かろう心の針を抜いてやる

まわり見て最後の芋に箸を刺す
「近詠」
道化師の目は物悲し俺を射る
逆縁とぽつり洩らしたひと哀し
亡き夫と笑みを交わしたティータイム

6月23日(日)
「踊る」
指揮棒の先で踊っている音符
盆踊り父母楽しげに向う岸
てにをはが踊り出します句会前
「ほろにがい」
ほろにがい恋大人への第一歩
ほろにがい酒酌み交わす左遷先
ほろにがいくらいが丁度別れ時
「苦手」
避けるほど苦手な人とよく出会う
苦手なら人の倍やれ父の檄
ガキ大将今も苦手な女の子
「主」
淋しげな風鈴主なき書斎
窓開ける臭いの主のすまし顔
主役にはなれぬ人生息長い

「連想吟」

  

藤棚のつるに届くかもみじの手

神棚へ幸吹き入れる青嵐

歓心を買うため競う恋敵
「近詠」
再婚もいいよと逝った妻哀し
振り向いて欲しくて母の背を追う
ポイントであいづちを打つ聞き上手

7月28日(日)
「しずく」
雨垂れはかなわぬ恋のセレナーデ
しずくにも意地があります石穿つ
一滴じゃ効かなかったか惚れ薬
「三度目」
三度目のどじょうすくいに一人立ち
バツ三に仲人腕のみせどころ
三度目のつぎ酒にヒレも音を上げる
「石」
群れを出る石の届かぬところまで
躓いてまたお前かと石を蹴る
石を蹴り拗ねてたお前今いずこ
「真面目」
生真面目でいい人なのに嫁来ない
騙されてみよう今度は真面目そう
生真面目に返す会釈は隠れみの

「連想吟」  

  

子燕がやっと覚えた宙返り

朝顔のつるが指さす白い雲

釣り糸がリール飛び出し広い空
「近詠」
淋しげな風鈴主なき書斎
唯生きて唯生きていて欲しいだけ
余命聞きかける言葉が見当たらず

8月25日(日)
「後悔」
奔放に育てすぎたかまた離婚
ノウハウを教え母屋を乗っ取られ
本心を聞けばよかった嫁ぐ前
「含む」
たっぷりと墨を含ませ「不退転」
主人のは含めないでね勘定に
含め煮は母の作とは言い出せず
「欲」
欲得を抜いてつき合う定年後
よく言えばきりがないから添い遂げる
無私無欲なってみせます来世こそ
「軽い」
添い寝して軽い寝息に安堵する
ペン先も浮き浮き軽く一人旅
いちげんの軽口じっと聞く女将

「連想吟」  

 

飛びつく子母の温もり欲しくって

輪の中に入っておいで淋しい子

六文銭リュックに下げて旅に出る

「近詠」
風を読み静かに待っている好機
輪の中へ人の優しさ恋しくて
逆縁に泣き暮らす友生きてくれ

9月22日(日)(吹田市市民川柳大会 2句提出)
「やわらかい」
何かあるやわらかすぎるこの空気
やわらかい笑みが姑のしたたかさ

「連想吟」

  

真っ直ぐに落ちる涙に嘘はない

クリップで留めておきたい今日の幸

「憎い」
猪口二つ少し離してまだ憎い
淋しがり憎まれ口をたたく奴
「群れ」
群れを出るつぶて届かぬところまで
がんばれよ群れに遅れて飛ぶ一羽
「無」
無理をせず静かに風を聴いている
説教を正座して聞く子の無心
「暇」
暇なとき行けば大事にされる客
暇なとき爪を研ぎます牝の豹

10月20日(日)
「今」
病んだ今病んだあなたの気持知る
家出した我が娘今ではいいママに
仲直りする気今夜は猪口二つ
「ねじれる」
ネクタイの捻れないのに直す妻
ねじれたら首締まるかな赤い糸
ねじくれた言い草やはり俺に似て
「流れ」
流れ弾前から来ると思い込み
二次会へ流れ初めて聞く本音
結論は流れにまかせ眠る振り
「意外」
視聴率上がる意外な結末に
愛妻家なんでお前がかけ落ちを
おしゃべりで意外に近い目的地

「連想吟」 

  

俺のだけ最初に落ちる竹トンボ

人生はびっくり箱の連続だ

あれからは帰ってこないブーメラン

「近詠」
散るを知り競う紅葉の艶やかさ
散り際によぎる華やかすぎた日日
あなたには淋しい人が何故分かる

11月23日(土)
「ピンシューズ」
ピンシューズ見付け車両を変える朝
ピンシューズ落としためがね粉々に
ピンシューズ痴漢退治の武器いなり
「掴む」
掴んだ手離さないでね辛いとき
掴まえてと君の背中に書いてある
温い手が淋しいハート鷲掴み
「一夜」
一泊もしないで帰る里帰り
一夜でも添い寝したいと手術前
一夜でも帰っておいであの世から
「茶」
一人だとこんなのびのびティータイム
年の暮れ茶飲み友達減る便り
御茶うけに買ったおかきが酒のあて
「近詠」
母を待つ外階段に秋の風
温もりの仲間が悲しみを癒す
いい顔になったな辛さ乗り越えて

12月23日(月)
「無」
無色ですあなたの色に染まります
無理すれば弱いところにしわ寄せが
無駄話聞くのも介護嫁のぐち
「終わる」
大病に命の終わることを知り
終わる恋と知りつつ逢いにいそいそと
エンディングノートを書けと医者が言い
「仏」
大仏もマスク欲しいとすす払い
仏顔やっぱり嘘はつけんなあ
寒月に酌み交わそうぜ仏さん
「そろそろ」
日没が近いそろそろ旅支度
独り旅そろそろかもねいい出合い
そろそろ穏やかに生きてみようかな
「近詠」
枯葉散る人の命の散るごとく
生きているものみな愛し大病後
誰にでも優しくできる人らしい

コメント

2014年(お題入り。ボツ句含む)(連想吟カットあり)

2018年01月20日 | 吹田川柳会

2014年
1月26日(日)
「開ける」
ばあちゃんの日課パソコン開けること
無防備に開けた心に矢がささる
ノックして開けてよ娘おかんむり
「柱」
古民家の柱のキズは三世代
午前二時柱時計と俺ひとり
いい出会いきっとあるよと茶柱が
「手酌」
気の合わぬ奴より気楽手酌酒
下戸なのに覚えた手酌左遷先
一見は女将が相手俺手酌
「向かう」
向かうとこ敵なし孫の立ち回り
向かい風負けはしません二人なら
向かい風待っていました奴凧

「連想吟」 

 

さなぎたち春の入口探してる

父恋し鬼の捨子が鳴いている

母屋から出たみの虫に冬の風

「近詠」
面影を求めて止まぬ冬銀河
幸せに暮らしているなその笑顔
寒い朝いつもの人に出会わない

 

2月23日(日)

「主」

主役にはなれなかったがいぶし銀

飼い主に似たのか尻尾振らぬ犬

ご主人がしがみついてる薬指

「絵」

七色の絵筆が走る雨上がり

だまし絵に隠れた君を追いかける

絵にドラマ感じて前を動けない

「本気」

いややねんなんぼ本気と言われても

片手間に始めた筈がいま本気

初心な娘の本気に慌て後退り

「散歩」

梅見頃一句土産に朝散歩

じいちゃんは散歩の筈が交番に

お散歩に行けと言ってる妻の目が

「連想吟」

 

枯れ木にもやがて吹くだろ春の風

一人ではないぞ手を振る友がいる

背伸びして春はまだかと冬木立

「近詠」

老木も新芽ふくらむ春隣り

心こめ優しい言葉そっと置く

睦まじくみせておきたい妻の見栄

 

3月23日(日)

「若い」

若過ぎて気付かなかった深い傷

馴れ初めを聞かれ若い日甦る

若い日のときめき眠れない夜も

「道具」

蔵の中出番まだかと古道具

ダイエット道具揃えてやせた気に

道具立ていい顔なのに華がない

「料理」

カウンセラー俺の心を料理する

料理人ひいたお膳を覗き込む

特技欄料理育児と書く男

「合う」

身の丈に合わせて生きて悔いはない

振り返るのはまだ早い七合目

もうやめた人に合わせる生き方は

「連想吟」

 

春告げる釘煮をあてについ二合

えさのない釣糸垂らしのどかなり

春の風土筆の頭そっと撫で

「近詠」

のどかなり日がな一日孫の守り

馴れ初めは青い芽の頃春うらら

哀しみへ涙も出ない陽が沈む 

 

4月27日(日)

「ついで」

ついででもいいから来てと閑古鳥

ついでにのひと言眠れない夜に

ついでにと言ったひと言命取り

「気」

気になるな含み笑いをする女房

深情気がつきすぎて疎まれる

欠席の君が気になる患者会

「粗品」

 助かるわのしに名前のない粗品

粗品にもにじみ出ているお人柄

粗品とは書きたくないわこの値段

「迷う」

終楽章迷わずタクト振り続け

迷うことあらへん金のある方や

夜桜のぼんぼり消えて迷い道

「近詠」

春恨む見せたかったなこの桜

花吹雪来る筈のない君を待つ

通り抜け喧噪の中春ひとり

 

5月25日(日)

「気持」

手品師は人の気持の裏をかく

抱きまくら夜な夜な辛い気持聞く

誰しもが不思議な気持既視感に

「目移り」
目移りはしたが女房はお前だけ
バイキング隣の皿が気にかかる
目移りをしたら幸せ逃げて行く
「多」
なぐさめに多くの言葉逆効果
日日感謝多くの人に支えられ
辛いこと胸にため込み休火山
「通り」
リストラに定石通り生きたのに
肩の手は許してあげる通り抜け
裏木戸が知らせる風の通り道

「連想吟」

 


家出したテントウ虫に草の宿
朝露を踏んでお百度あと三日
風雪に耐えた昭和の街路灯

「近詠」
独りではないぞ手を振る友がいる
握る手に頬摺りされて帰れない
クラス会今年も一人二人抜け

6月29日(日)

「破る」

朗報に破顔一笑さあ宴

恋文は母が破いていたらしい

門限を破らせたのは恋心

「海辺」

ひと晩でもろくも消えた砂の城

潮騒に遠い日の恋よみがえる

残照にごくろうさまと手を合わす

「偉い」

同窓会五十年間道化役

斬られ役えらいと気付く子も偉い

間際までしっかり保つ自尊心

「体」

手術跡ちと多すぎる親不幸

理屈より体で学ぶ護身術

霊能者体震わせ別人に

「連想吟」

 

ここがいいあなたの側にそっと咲く

あの二人雨が止んでも雨宿り

ばあちゃんの背中で聞いた七つの子

「近詠」

優しさが辛い別れの時近い

失ってはじめて知った優しさを

病室の窓から遠い雨を見る

 

7月27日(日)

「上手」

嫌なことすぐに忘れる生き上手

自分だけ本音を言わぬ聞き上手

ほめ上手まさか本気じゃないでしょね

「電気」

逆らわぬ電気仕掛けの妻欲しい

独り居のキッチン電気つけたまま

平穏無事幸かみしめて電気消す

「石」

石仏俺と一緒に泣いてくれ

床の間に漬け物石をほめられて

この石は蹴ってほしくてここにいる

「引く」

弓を引く覚悟の妻の午前二時

関白も引き際を知る定年後

辞世の句うまく出来ずに幕引けず

「連想吟」

 

どこにある君の心の導火線

とぐろ巻く蛇を心に飼っている

行かないで指にからんでくる巻き毛

「近詠」

幸せになれば見えないものがある

優しさに気付き素直になる私

余生にも途中下車する好奇心

 

8月24日(日)

「情け」

甲子園九回裏の初打席 

父だからわけは聞かない娘の涙 

人情にもろくて貧乏くじを引く 

「丸い」 

丸文字の恋文きっとミヨちゃんだ

嗚呼俺もあんなに丸くなってみよ

丸い娘が好きダイエットやめたまえ 

「ぶらぶら」 

みな通勤わしゃぶらぶらと図書館へ

百貨店日がなぶらぶら目の保養

ぶらぶらとデパ地下歩き満腹に 

「時」

妻の海凪の時には何かある 

荒海は号泣したい時に行く

逝った後時の流れの速いこと 

「連想吟」

 

風まかせそれもいいだろグライダー 

二度付けは御法度でっせおやじの目

玉串料いかほど出せばご利益が

「近詠」

今を生きる悔いもおそれもない余生

何色で描いてみようか今日の海

周波数変えて天使の声を聞く

 

9月28日(日)市民大会(2句連記→1句選択)

「興味津々」

観たいのは映倫マークないビデオ

少年は訳知りたがる伏せ字箇所

「逆」

理屈とは逆の直観どちらとる

逆縁の友よ生きてよ子の命

「許す」

白状をすれば許すに滑る口

許します私の海は広いから

「身軽」

宴会のはしごも平気選挙前

娘が嫁ぎ身軽な親に娘が帰り

「誘う」

また隣唇を噛む壁の花

またメタボ味覚の秋に誘われて

「連想吟」

 

吹き出しに入りきれないぐち不満

ユウラユラ次の住処へ遊離魂

 

10月26日(日)
「駅」
思い出の駅に乱舞の秋の蝶
駅ナカへ出かけ淋しさ置いてくる
遠い日の汽笛を聞きに無人駅
「注ぐ」
注ぐ酒に名残り惜しさが溢れ出る
優しさを注いであげましょ二合まで
酌み交わすあては何にもないけれど
「目移り」
目移りをして羅針盤狂いだす
をそんなに並べられてもな
目移りをすれば幸せ逃げていく
「モデル」
メタボでもモデルになれるマタニティー
モデルチェンジしても売れないあの気性
立志伝中の人だがいま破産
「連想吟」


寄る辺ない蔓故郷がみつからず
一本の白髪仇のように抜く
歌よりもバク転させるオーディション
「近詠」
背なを追うおいとけぼりがこわくって
幸せはこんなところに落ちていた
あの世では役に立つのか羅針盤

 

11月23日(日)

「あかん」

自分史に書いたらあかん女あり

診察券出してもあかんコンビニで

じいちゃんがおごらなあかん年金日

「背な」

友達が欲しいと背なに書いてある

背な向ける優しい言葉聞きたくて

背なに手を添えられ嗚咽堰を切る

「凡そ」

酔いなのか凡そしゃべらん人なのに

呼び方でわかる凡その夫婦仲

三杯目凡そ遠慮を知らぬ腹

「分」

七三に分けられませんバーコード

分別を失くしまさかの逃避行

親戚がやけに増えたな遺産分け

「近詠」

嬉し泣ききっと隠していた辛さ

不幸にも手加減あっていいのでは

気がつけば置いとけぼりの隠れんぼ

 

12月28日(日)

「違う」

立つ位置を変えれば違う風が吹く

飛んでみる違う世界が見たくって

海の色違って見えた別れの日

「回る」

回り道して悔しさを捨ててくる

心棒のおかげここまで回る独楽

回リ出すいい思い出は夢の中

「嘘」

嘘のない顔に戻った終電車

自分史にちょっぴり嘘を織り交ぜる

いつもより大きな声に嘘がある

「太鼓」

あの頃は父の太鼓に踊りの輪

口下手ではつとまりません太鼓持ち

和太鼓に若さぶつけて汗が飛ぶ

「連想吟」

 

二番手を走り長生きしています

小さい足支えきれないあのおいど

いい風が吹くまで首は出しません

「近詠」

病癒え第九を歌うよろこびよ

老いてなお第九に挑む心意気

歌い終え歓喜の涙頬伝う

 

コメント

2015年(お題入り。ボツ句含む)(連想吟カットあり)

2018年01月17日 | 吹田川柳会

2015                     

1月18日(日)

「値切る」

外人まで大阪弁で値切りよる

あきんどは値切り値切られいっちょまえ

値切りには応じぬプロの自尊心

「礼儀」

別れたら知らない振りが礼儀です

親切に感謝の気持飴一つ

欠礼のハガキは哀し友が逝く

「語る」

青春を語る詩集の涙あと

酌み交わし語りあかそう明日のこと

逆境をさらりと語る人になり

「新」

逆境の向こうにきっと新天地

新しい出会いありそう余生にも

新しい住所天国一丁目

「連想吟」

おーい春出番を待っている新芽   

逆風に負けぬ凧糸妻の手に

ありがたい心に平和蓮の花

「近詠」

人の世の儚さ思う風花に

生きるため捨ててきたもの今愛し

木守りの話相手は案山子だけ

 

2月15日(日)

「急ぐ」

結論を急ぐ裏には何かある

何急ぐどうせ行きつく先同じ

筆圧の弱さ帰省を急がせる

「志」

若い日の大志下宿に置いたまま

志ハードル下げて楽に生き

ライバルに闘志を燃やし今がある

「無口」

生れつき無口なんだと石を蹴る

あの世では無口な人と暮らしたい

辛いときかばってくれた無口な子

「ごめん」

ごめんねと素直に言えた夢の中

ごめんねと置手紙する参観日

淋しさに気付かずごめん近すぎて

「連想吟」

籠破りはばたきました大空へ

つけひげをはずし素顔に戻ります

ぼうふらも見つめ合ったら恋をする

「近詠」

あるがまま受け容れたとき楽になり

病室にピエロを脱いだ僕が居る

病み上がりそろそろバトンタッチかな

 

 

3月14日(土)

「残る」

がんばれよ津波に耐えて残る松

答えない背中に残るわだかまり

残り火をじっと見ている影ひとつ

「踊る」

糸が切れマリオネットが踊れない

亭主留守踊り出したい気分です

五線譜を飛び出し踊る楽譜たち

「多」

やりたいこと多すぎてまだ死ねません

口数が多いなきっと隠し事

苦労した人ほど多く語らない

「似合う」

お似合いと仲人だけがほめ言葉

お似合いの夫婦に見せる妻の見栄

アデランスより似合ってるベレー帽

「連想吟」

ほころびを直してくれた赤い糸

がんばれよ群れからはぐれ飛ぶ一羽

グライダー自由きままに風まかせ

「近詠」

新しい夫婦茶碗がさりげなく

丸呑みを出来ない人と棲んでいる

余命知り確執溶けた三姉妹

        

4月26日(日)

「朝」

ときめきは登校の朝クラス替え

何色で生きよう今朝も白紙です

朝までに乾いておくれ涙あと

「障子」

やわらかい雨降る午後の春障子

障子越し母の寝息に安堵する

夫婦仲障子替えてもすきま風

「過ぎる」

不用意に羽伸ばし過ぎ的にされ

飲み過ぎも供養のうちと友の通夜

言い過ぎを悔い天井とにらめっこ

「またかいな」

またかいな仲裁役はもうごめん

またかいな返事をしたら独り言

がんよがんなんでもいっぺん俺やねん

「連想吟」

孫むすめ緩めすぎたか躾糸

終活はどちらの山に樹木葬

尺取虫小枝の上でヨガをする

「近詠」

花が降るあなたとの日日いとおしい

寄り添って声にならない声を聴く

ありがとねここまでついてきてくれて

 

5月31日(日)

「思う」

思うまま生きて悔いなしこの老後

思う人来なくて募る恋心

思う目は出なくてこれでよしとする

「着る」

ママ友は回して着せる子供服

衣替えよくぞここまで着ないもの

着るものにこだわり今日は自己主張

「一度」

人生に乾杯一度きりだもん

免許証一度も乗らずゴールドに

同窓会年に一度が二度になり

「横」

横丁に幼な馴染みの顔浮かぶ

横に振る首で諭してくれた父

初デート横の空席うらめしい

「近詠」

日に一度笑えばよしとする病後

淋しさに気付かず悪いこと言うた

傷つけぬ言葉を選ぶ別れ際

 

6月21日(日)

「情け」

そして今情けの深さ知ることに

見ない振りするのが情け石を蹴る

情けない手塩にかけた子は背き

「ねだる」

困ったな心全部をねだられて

ねだることしない長女が婿ねだる

ねだり方ひとつでゆるむ頬財布

「向く」

気の向くまま生きると決めた通夜の席

差し向かい湯豆腐つつき仲直り

群れ逃れ足の向くまま隠れ家に

「音」

靴音は家に心は他所に置く

靴音に未練を残す石畳

足音を忍ばせ見舞う消灯後

「近詠」

難破船海に抱かれ夢を見る

青春を辿りたくなり鈍行に

周波数合えば多くを語らない

 

7月26日(日)

「安い」

朝刊のチラシ自転車走らせる

安酒で語りあかした友が逝き

仲裁の安請け合いにとばっちり

「凄い」

墜落の間際に遺書をメモるひと

寂聴は九十二でも恋せよと

あの世まで抱いていきます秘め事は

「独り」

独りではないこの辛さ患者会

見舞客帰り病室また独り

横顔に独りの風が吹く日暮

「夏」

あの夏の海に青春浮いたまま

いま何処に二人の夏の熱気球

二次性徴眩し頼もし孫の夏

「連想吟」

耳掻きのこよりが踊る膝枕

回り道自分を見つめ直すとき

足縺れチャールストンに見えません

「近詠」

病んでまた耐えられるかと試される

句箋には病院食のお粥あと

おしゃべりはしなくていいよつらいとき

 

8月23日(日)

「作る」

すっぴんの方がいいのに作りすぎ

あと少しいい思い出を作りましょ

若作り競っていますシニア会

「ゆんべ」

まだ若いゆんべ「火花」を読破せり

痛いのはゆんべ貴方が放った矢

妻の顔語るゆんべの俺の酒

「泳ぐ」

息つぎを覚えてやっとひとり立ち

海図なき海に泳いでいる余生

まだあるぞ宇宙遊泳する元気

「味」

とりあえず味があるねとほめておく

歓迎の酒苦かった左遷先

新しい風が我が家に嫁の味

「連想吟」

放浪記でんぐり返しもう一度

迂回路と信じて走り行き止まり

消えないで線香花火命の火

「近詠」

キッチンに妻のハミングねぎ刻む

プライドを捨てれば楽になる老後

淋しそう声をかけよかかけまいか

 

9月27(日)吹田市民川柳大会

「追う」

時間との追いかけっこはもうしない

GPS徘徊の爺追いかける

「連想吟」

一人っ子緩みがちです躾糸

しなやかに終楽章のタクト振る

「狼」

群れを出る狼恐れない孤独

月夜には狼になり吠えてやる

「狙う」

受け狙いしてる子きっと淋しがり

狙い目は三割引の六時半

「耐える」

パワハラに耐えられなくて狼煙上げ

薄給に耐えてやりくり妻の知恵

「大人」

ひと言も責めないあなた大人です

聞き役に徹し黙って酒を注ぐ

 

10月31日(土)

「浮く」

浮かぬ顔しないと決めた大病後

日向ぼこ頬笑み浮かべまどろむ児

浮いていた がんばりすぎていたのかな

「迷う」

生きている証じゃないか迷う事

暮れるまで蝶を追いかけ迷い道

ここに来て迷いたくない秋の暮

「だるい」

だるそうな振りで回りの愛試す

義理で見る発表会はだるいなあ

だるそうな振りしておんぶねだる孫

「多」

引き出しが多くて飽きが来ない人

籠ること多くなったら脳に苔

優しさに多くの言葉要りません

「連想吟」

今日もまた淋しがり屋の雲ひとつ

石舞台いにしえびとの舞を見る

いい石になろうお尻に合うように

「近詠」

孫のように抱けばよかった我が子らを

一言も責めない君に惚れ直す

秋風に居住まい正し遺言書

 

11月23日(月)

「下手」

下手な絵も味があるねとほめておく

付き合いが下手で毎日図書館へ

下手な嘘言いたくないな里帰り

「覗く」

心まで覗かせません冬薔薇(そうび)

日記帳覗けば歩き出す閻魔

クラス会八重歯が覗きああ君か

「本音」

道化師は本音を家に置いてくる

いい空気本音話せる患者会

ただいまと玄関開けてから本音

「神」

胸に手を当てれば神の叱る声

三歳児神が弾かせるピアノの手

ドラマなら救いの神がここに出る

「近詠」

晩秋にアルバム眺めブランデー

病癒え本音で生きることに決め

哀しみは友の訃報に冬隣

 

12月20日(日)

「思う」

優しさが欲しいと思う告知の日

修業だと思えば腹も立ちません

紙よりもスマホに思い綴ります

「不満」

健康になればなったで出る不満

冬牡丹蕾のままじゃ不満です

抱きしめてあげようおいでふくれっ面

「終る」

よそゆきの顔見当らぬ終電車

恋終わる郵便受けに合鍵が

ときめいた恋もあくびが終り告げ

「糸」

義理の糸切って自分を取り戻す

底知れぬ闇に救いの赤い糸

じいばあが緩めて困る躾糸

「連想吟」

見えるかなオレに触覚あるんだぜ

木守りは優しい風を待っている

手旗では淋しい心送れません

「近詠」

赤い糸切ってはつなぎ除夜の鐘

老いて行く新たなる道白い雪

自分さえ捨てれば見えてくる何か

 

コメント

2016年(お題抜き。抜けた句のみ。)

2018年01月12日 | 吹田川柳会
2016年
1月17日(日)
頼むから日に一回は出て行って
頼むから俺より先に逝かないで
休み明けどこか大人の顔になる
豆腐屋に朝日が差して街動く
辛ければいつでもおいで僕の胸
辛いとき優しい言葉胸に沁み
胸の内明かさず発車始発駅
野ねずみも寝ぐら恋しと鳴いている
春風を震えながらも待つ羊
「近詠」
子には子の暮らしがあると老い二人
温もりが恋し冷え込む明け方は
優しさに多くの言葉いりません
 
2月28日(日)
洗い物ほったらかして女子会へ
傷口を洗い流して次の恋
優しさのシャワー心を洗います
信頼は五分仲人の太鼓判
立つ位置を変えて始めて知る辛さ
逆境で始めて知った人の情
あの人の一発芸は去年だけ
裏芸で芥川賞畏れ入る
飼い主が詫びる空っぽ金魚鉢
「近詠」
それぞれの孤独が眠る四人部屋
団欒の灯り恋しいひとり旅
死に際に必ず言うよありがとう
 
3月27日(日)
クラス替え目で追いかける淡い恋
柏手の様子でわかる願い事
抜けませんずばり心にささった矢
ずばり一言眠れぬ夜をあなたにも
目が語るわかっていますその辛さ
語れども孫反抗期無視黙秘
病癒え新芽見つけて夜が明ける
優しさの芽を育てますほめ言葉
釣り糸よ自由欲しけりゃ飛んでゆけ
「近詠」
アルバムに涙する歳春の夜
悲しくてアイミスユーも言えません
辛いのはあなただけではありません
 
4月29日(金)
健康に友と年金これでいい
ビギナーズラックに欲が目をさます
胃を切れば食欲制御修行なり
ずぼらだが着信履歴消してある
ずぼらだが愚痴だけマメに聞く男
別嬪に似合わないのは横の奴
深海に安産祈る竜の駒
初めてのピアスに乙女涙する
「近詠」
優しさにわかるお互い病み上がり
ねぎらいは介護疲れの友にこそ
あなたとはいつも素顔で接したい
 
5月22日(日)
大あくび自慢話に水をさす
ジョークだと油断ハートを盗まれる
もう懲りた猫なで声の頼み事
油断して心開けば鋭い矢
いい人を演じる役は今日休む
履物を揃える癖が気に入られ
蛍火に映える手と手がそっと触れ
「近詠」
軒先に巣立ちのできぬつばめ這う
寛容という名の海に溺れてる
外は雨夜更かしライン癖になる
 
6月26日(日)
駆け足が語る試験の出来具合
具合よく相合傘に通り雨
古民家の母の遺品を捨てきれぬ
ママ友は回し合いする子の古着
添え木なくぐんぐん伸びる蔓の意地
「近詠」
あと少し旅の終りに何吠える
深酔いの友の無念に気付く今
病名は違うけれども寄り添える
 
7月24日(日)
しっかりと生きてみせますその日まで
達筆で読めぬ老舗のお品書き
名人の筆の運びにある遊び
ふるさとの駅去り難い母残し
文庫本忘れた駅はダムの下
遠い日の祖父の声聞く糸電話
「近詠」
ひまわりはあんなに素直お日様に
風鈴はどんな風にも涼しげに
優しさを素直に受けて真ん丸に
 
8月28日(日)
人の輪へ逃げても消えぬ淋しさは
都会から逃げて来ましたいろり端
逃げるよに帰る仲人破談告げ
似た人を見つけて胸がまた騒ぐ
騒ぐのも供養故人は祭好き
青春の挫折は平気夢がある
失恋は平気男はたんといる
間取りより校区が大事転居先
名優は間の取り方に味がある
「近詠」
生き様が顔の皺じゃと顎撫でる
空気かも知れぬが無いと困る伴侶
あなたさえ居れば耐えれる虚しさに
 
9月25日(日)市民川柳大会
ねんねこに幸せそうな子の寝息
褒められてまあるくなった天邪鬼
寂聴の頭の中は恋ばかり
ことばを失くしただ揺れていたピアス
 

10月30日(日)

大病かやたら優しくなるお前

曲がるまで義母の視線が追いかける

うずくまり蟻に飽きずに日向ぼこ

飽きないで見つめ風邪引く冬銀河

花も雪も払えば袂清くなる

「近詠」

まだ旅の途中と思う古稀の秋

夫婦という劇もそろそろ終幕へ

好物を並べてあるな妻は留守

 

11月27日(日)

負ける気の孫との将棋つい本気

今がある負けた悔しさバネにして

味方から飛んできた矢は致命傷

正論を吐けば増えます敵味方

淋しさに触れたら深入りの予感

優しさに触れて淋しい衣脱ぐ

優しさに触れて淋しい旅終える

見えすいたお世辞も後で愛と知る

少年に祭りの後の淋しさが

淋しさに一人佇む宴後

旅に出てみたくなるよな鰯雲

石けりを止めて見ていた雁の群

「近詠」

現世は幻想なのか紅葉舞う

落葉散る御苑に箒追いつかず

さよならと逝けば自由になるあなた

 

12月18日(日)

この短気古稀になっても直らない

母も子もうたた寝してる読み聞かせ

ここにきて縺れた糸がほどけない

今聞いた三つの言葉ひとつ出ぬ

練ってきた祝辞を先に述べられる

微笑みに油断心を盗まれる

「連想吟」

打ち水は俺を狙って飛んで来る

「近詠」

晩秋にそっと寄り添う影二つ

傷つけていたことを知り悔いる秋

気がつく子苦労した子にちがいない

 

 
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2017年(お題抜き。抜けた句のみ)

2018年01月12日 | 吹田川柳会

2017

122日(日)

故郷をみんなで歌い元気出る

こわいなあ心が顔に出るなんて

母の膳雑煮の餅は小さく切り

胃を切った夫に小さい雑煮餅

団らんに揺れる餅花外は雪

和太鼓に眩しい若さ汗が飛ぶ

世が世なら男かしずく美の化身

寄り添ってよくぞ古稀まで共白髪

このままのペアでダンスを続けましょ

「近詠」

老梅も生きる歓び新芽出す

息白くおはよう交わすランドセル

優しさは傷の痛みを知ればこそ

 

226日(日)

引くことを覚えて伸びる勝気な子

いい朝だ父母の遺影が笑ってる

幸せなときは拝まぬほとけさん

我を捨てて生きれば不思議友が増え

覚えあり不思議な予感恋かしら

首すくめ春風を待つ土筆たち

縦に振る首は無いらしがんこ爺

ネックレスはずして次の恋を待つ

「近詠」

紅梅に空気も温み外歩き

孫ら来てこんなに狭い家と知る

いいとこでいつも終わって目が覚める

 

326日(日)

2センチの段差に油断足を折る

好きな子の前で無口になるゴンタ

次の世は無口な人と暮らしたい

相部屋に終夜いびきのカルテット

雨宿り背中合わせに恋芽生え

千鳥足隣の家のベルを押す

とじぶたも湯気と一緒に踊ってる

「近詠」

優しさに素直になれるやっと春

やせ我慢優しくされてついほろり

なんもかも胸にしまえと叱る酒

 

422日(土)

わるさしてかまって欲しい淋しんぼ

わるさして確かめてみる母の愛

勝ち負けの態度でわかる人の品

気になるな医者の態度が優しすぎ

鏡だけ似合うと言わぬ試着室

横顔が淋しそうです花吹雪

お下がりに末っ子拗ねて横を向く

ゴールイン優しい風に背な押され

「近詠

子等も花笑いさざめき春を行く

けなげにと桜を愛でる友と行く

雨風に花吹雪舞い春が逝く

 

528日(日)
若い日の辛さ人への優しさに
若い日の挫折が彼を寛容に
発車ベル聞いて階段二段跳び
青空に吹く風光る退院日
吹く風と戯れたくて手を拡げ
人形の目が淋しそう捨てられぬ
口惜しさで伸び代をみる名コーチ
出し惜しみしてはいけない愛と金
えさのない釣糸垂れる二人連れ
「近詠」
今ならば試煉と言えるあの辛さ
大病を支えた妻が客席に
黄昏にさよならなんて辛すぎる

 

625日(日)

爺独り相槌を打つ古時計

古本にセピア色した涙あと

土砂降りの外階段に母を待つ

この夜景待っていました雨上がり

リハビリでここまで回る五十肩

「近詠」

ごめんねともっと素直になぜ言えぬ

肩の手の温もりに泣くそんな日も

わるさして死んじゃう前に仲直り

 

723日(日)

悪行を妻の無言に裁かれる

自分への裁きは尽きぬ蟻地獄

AIに大岡裁きできるかな

ありがとねよくぞ気ままな義母の世話

家中を孫の気ままが振り回す

ふるさとに甘い思い出さくらんぼ

優しさが好きと言われて骨抜きに

甘いもの断って快復祈る妻

命ある限り女でいたい紅

麻酔さめ命確かめ手を合わす

しがらみを断ち切りやっと自由の身

「近詠」

大病に命の限りあるを知り

先に逝く残されるのは耐えられぬ

 

思い出の品妻に内緒の引き出しに

 

827日(日)

辛酸を共にした古稀いい余生
からい点つけた教師にいま感謝
辛口の説教にある深い愛
溺れても悔いはしません深情け
幸せを婆の目尻のしわに見る
親離れ行列抜けたカラスの子
ベランダにめっきり減ったほたる族
「近詠」
味噌汁がうまいと言える病癒え
鱧鮪冷酒一合それでいい
母の笑み肘掛け椅子の届いた日

 

9月24日(日)

首輪捨て自分探しの旅に出る

晩年にやりたい事が多すぎる

競わずに各停で行く我が余生

慣れぬ手に包丁握る妻の留守

クレームにマニュアル通り受けこたえ

 

1029()

山里にひっそりと咲き誰を待つ
うちのポチロボット犬に恋心
淋しさのわかるロボットありますか
味のある人だと言われついおごる
食材のもち味生かす名コック
こおろぎの喉をうるおす朝の露
「近詠」
老いるとは愉快あれこれ見えてくる
百点はないと言われて楽に生き
胃カメラの結果に安堵妻の笑み

 

11月26日(日)

遠い目は心の中を旅してる

世界地図描いて泣きべそ孫の朝

反対をされた恋ほど燃えあがる
する事と正反対の主義主張
古民家に学ぶ昔の人の知恵
星座から学んだ神話キャンプの夜
文楽の仕草に学ぶ人の情
アルバムの写真ここだけはがれてる
自分史に書けないことが二つ三つ
「近詠」
棹させば意外に深い河と知る
赦し合う友になれたなやっと今
思い出は余生楽しく生きる糧

12月24日(日)
AI の弱点愛を知らぬこと
かんにんな弱音吐きたい時もある
そんなとこ攻めたらあかん弱いから
つながれた犬に目の毒猫の恋
喪中ハガキ賀状を出した後に来る
診察券二枚増えたか年の暮
受け狙い真剣すぎて客は引く
失恋の時が狙い目声かける
焼香に姉の遺影が笑ってる
「近詠」
姉は逝く哀しいまでに冴える空
年の瀬に姉との別れ来ようとは
中陰の姉と聞きます除夜の鐘

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ひかるの好きな都都逸(森繁)ハガキ版写真版1枚

2018年01月12日 | 好きな都都逸(森繁)

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NHKぼやき川柳(2011年6月~2014年1月まで)ハガキ写真版

2018年01月12日 | NHKぼやき川柳(2011年から2014年)

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季刊誌「樹樹」入選句(2011年~2015年)ハガキ写真版

2018年01月12日 | 樹樹入選句

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自己紹介にかえて ハガキ写真版3枚

2018年01月12日 | 自己紹介にかえて ハガキ3枚

自己紹介にかえて

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