徒然なるままに〜孤独な初老のダメ男日記

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

映画「きっと、うまくいく」を観て

2020-07-19 14:28:49 | 映画

この作品は、インドの映画(2009年)であり、インドの社会構造になっている学歴偏重の競争社会への風刺を描いたコメディーである。

人生、これから!という中学生、高校生、大学生などの若い世代の人達向けの映画であり、私のような年寄りは、若い頃を思い出しながら観ると面白いだろう。映画自体はシンプルな作りなので、物足りないという方もおられると思うが・・・。

この映画で、インドでは相当の格差社会が存在し、一流大学へ進学後、エンジニアになり、一流企業へ就職することが、若い人たちへのプレッシャーとも言える目標になっているようだと感じた。この映画でも、家族の期待を一身に背負い、一流大学へ進学するが、挫折し自殺までする人が、病死よりも多いと伝えている。

あらすじは、このようなインド社会の状況の中、一流大学に進学した男性3人組の話で、この中のランチョーという人物は、学内トップの成績であるが、成績がトップであること、一流企業に就職することを目標にしているのではなかった。ランチョーは学問自体に情熱を持っていたのであった。情熱があれば、いずれ苦境に立たされても乗り越えられるし、成功への可能性も高まるというのである。ランチョーの言う「成功」というのは、高い年収を稼ぐことではなく、人生を心豊かに過ごすことを言っている。

本当はエンジニアではなく、カメラマン志望の友人には、カメラマンになることを勧めるのである。そうしなければ、一生を後悔することになるというアドバイスをするのだ。そして、ランチョーの真逆の考えで、周囲の学生をどんな手段を講じてでも蹴落とし、トップの成績を取り、一流企業に就職したいというチャトゥルという学生がいる。(成績はランチョーの次の2番)この学生がランチョーのいたずらで、全学生の前で恥をかかされるのである。このシーンも笑えるシーンである。このシーンの後にチャトゥルは怒り、10年後にどっちが成功しているか勝負しようと、ランチョーとその友人二人に言う。

そして、卒業後、忽然と消息を絶ち音信不通になってしまったランチョーを、10年後に、チャトゥルとランチョーの友人二人が捜しに行くというのが、この映画のメインになっている。「10年後のランチョーは、どうなっているのだろうか・・・?」、10年後のチャトゥルは、プール付きの豪邸に住んで、いわゆる「勝ち組」になっている。ランチョーが卒業して10年経ってどのようになっているのか?興味のある方は是非映画を見て頂きたい。

私の高校、大学時代は「バブル時代」であった。バブル経済は、株式・不動産を中心に実体経済を伴わない状態で、資産価格が一時的に高騰したものである。資産価格の高騰自体は悪いことではないが、日本経済の状態を正しく反映したものではなかった。ドル安によって、アメリカの貿易赤字を改善させる狙いのもとに、1985年「プラザ合意」(日米英独仏の5カ国の会議)がなされた。プラザ合意後、日本は円高不況になる。その為、日銀は低金利政策をとり、その結果、金が市場に流出し、資金の運用が決まらない状態になってしまう。その結果、その資金が株式市場に流れ、資産価格の上昇が始まったのである。それに伴っての好景気になっていくのである。

この時代のせいにするつもりはないが、私は高校時代の進路指導で、先生からは「君は何に情熱を費やし生きていくのか?」等と聞かれたことはなかった。有名な大学に進学するように勧められた。有名な大学に進学すれば、有名な企業に就職できる。そうすれば、その後の生活は安泰だとアドバイスしてくれた。私は先生からのアドバイスを正しいものと思い込んでいた。何の疑問も持たなかった。当時の会社は、年功序列・終身雇用といった「家族的経営」が尊ばれていた時代で、今のようなリストラ・早期退職など考えられない時代であったからだ。

私は、大学に合格する為、丸暗記の勉強に一年も費やした。四年生になると、色んな企業から電話が鳴りっぱなしだった。就職売り手市場であった。私は全て断り、大学院に進んで財政学を専攻した。財政学の勉強に情熱があったのではない。修士論文の要約を国税庁に提出すれば、もれなく税理士試験のうちの税法3科目が試験免除になるからである。そして、大学院修了時にバブルが崩壊したのである。

その後の就職活動は、全て失敗に終わり、バイトでも良いから雇って欲しいと懇願したがそれも叶わなかった。そうしているうちに、大学の就職課の紹介で、自宅から1時間程にある会計事務所に勤務することになった。しかし、全く興味も無く、実務経験も無く、さらに重要な情熱も無く、すぐに辞めることに決めた。友人たちは、そこまで努力したのに勿体ないと言うが、情熱のないものの挫折と諦めは早いものである。勿体ないよりも、愚かだったと思うしかない。

そんな自分の過去を振り返りながら、この映画を観ると、ランチョーのように物事をしっかり考えられる能力があればよかった、と後悔する。勿論、私はこの映画に出てくるような優秀な人物ではないが、その時の時代背景や風潮に付和雷同的に流されず、しっかりとした自分の考えを持つことの大切さを感じた。

高校時代に、絵を描くのが好きだから美術大学に行きたいと言う友人がいたが、芸術関係の大学に行くなんて、人生のトーナメントに不戦敗するようなものだと思っていたが、彼は今頃、若い頃からの堆積された絵の情熱をもとに、豊かな人生を歩んでいるのだと思う。実力とは、一朝一夕に身につくものではない。若い時代は、自由な時間が多いが、その時間をどう使うかが、その後の人生を大きく左右するものだと、今は痛感している。



コメントを投稿