goo blog サービス終了のお知らせ 

のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

即戦力

2008年05月28日 12時39分55秒 | Weblog
会いたいのに会えない縁があるかと思えば、会いたくないのに会う縁もある。

仏教で、「愛別離苦」「怨憎会苦」という。うまく言ったものだ。


A施設に行ったとき、「忠太伝説が脈々と息づいている」と言われた。

伝説ですよ、伝説!

少なからず、虚栄心を刺激された。だが、この伝説が生まれたとき、多くの人が辞職

の道を選んでいたなんて、想像もつかなかった。


また、僕がB施設を解雇され、就職口を探した先で、僕に敗れてB施設を去った人が

待っていようとは夢にも思わなかった。

「忠太さん、よりによって、ここに来るなよ!」と言われた。

「知らんがな」と応えたっけ。


A施設とB施設、同じ施設でありながら、人情の濃さがまったく異なった。

どうしてこういうことが起こったのか。


思うに、それは、利用者との関わり方の形が異なるからではないだろうか。

A施設は、10名ほどの利用者を一括りにして担当者が一人で面倒を見る形だった。

B施設の方は、1名の利用者を3、4名のスタッフで集団指導をする形だった。

バイトとして採用されていた僕は、どっちにしろ補助だ。形の上からすると、明らか

にB施設のほうが楽そうに見える。しかし、実際に働いてみて、A施設のほうが、楽

だったし、収穫も大きかった。何故なんだろう。


それは、日本の福祉制度の貧困を抜きにしては論じ得ない。つまり、バイトという、

家畜のごとき労働者抜きでは成り立たない、貧しい福祉の現状が生み出すトリックの

ようなものだ。いずれの施設にあっても福祉の実情は変わらない、ということが問題

を解く鍵だろう。


”指導”といっても、建前の問題だと言えばいいのだろうか。たとえば、A施設だと、

10名ほどの利用者を一括りにして纏め上げている職員がいるはずだ。しかし、現実

にはよく抜ける。書類作成等に時間をそがれるわけだ。

で、誰が面倒を見ているかと言うと補助者であるはずのバイトなのだ。


・・・即戦力・・・


耳がタコになるほど、この言葉、よく聞いたよ。

同じことは、B施設にも当てはまる。集団指導体制とは言うけれど、実際に面倒を見

るのはバイトだ、しかも一人で。この施設、”監視”というようなお目出度いことをして

くれたが、原則としては、一人で利用者の相手をするわけだ。


ペテンみたいなもんだな。

A施設で、僕が3,40名の利用者の面倒を見た、と言い切っていい日が何日もあっ

た。当然、色んな知的障害者の種々相を知っているわけだ。

あばら骨を体の片側にしか持たない利用者もいた。そんな人の介護も僕はしていたの

だ。一歩間違えれば殺してしまうことになる、とても緊張を強いられる仕事だ。

それをやり抜いたとなれば、当然、自信を持ってしまう。

B施設の人は、そういう態度を生意気と判断したのかもしれない。しかし、この施設

の人もよく考えてみるべきだ。はっきり言わせてもらうけど、”集団指導体制”なんて、

言葉が存在するだけだった。

僕が指導者集団に成り代わって、一人で2、3人かの利用者の面倒を見ていた。

しかし、それでは飽き足らず、他の者のテリトリーに踏み込んだ。世話する利用者の

範囲を拡大しが、その分、A施設で得た処遇のノウハウを生かした。


B施設は、フロンティアを気取っている。しかし、先走るあまり、大切なものを置き

去りにしてしまっているのではないかと思う。

B施設は、重度の中でも重度な障害者を集めていた。しかし、彼らの中にもある社会

性を見落としていたのではないだろうか。


僕がA施設で働いていたとき、集団のダイナミズムを最大限に活用した。具体的に言

うと、処遇困難な人がいたとしたら他の利用者と一緒に、その困難な人に関わったと

いうことだ。知的障害の人は、みんな僕の仲間だった。


僕がB施設において任された枠を超えて、他の利用者に関わろうとしたとき、テリト

リー意識の強い担当者(職員とは決まっていない)と衝突する可能性が大きかった。

その具体的な対立関係は、僕が解雇された際、元同僚が言った「壁土も食べれるそう

だよ」という冷たい言葉によく現れていると思う。


フロンティア精神は、それ自体としては、結構なことだ。しかし、B施設において、

その精神は、ただの面子に転落していたと思う。


もし、利用者が利用者にかかわるパワーを引き出すことをも、介助者の能力と認める

だけの余裕があったら、この人たちも、知的障害者達の光を見たことだろう!


A施設で、僕の後を追うように辞職して行った人たちって、少なくとも、こうした知

的障害者の人たちが持つ光を見たに違いない。僕は、そもそも女性にそんなに愛され

るような面構えをしていないんだよな。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
よく見えて来ました (kayo)
2008-05-28 21:33:44
ふむ、生々しくその時の様子が見えますね
それにしても忠太さんの知力・体力、全開の奮闘ぶりは、それは伝説になりますよ!
私は自分の母親の寝たきりの全介助をするだけでも、ふぅ~ふぅ~言っていたのに、仕事とは言え一人でそんなにたくさんの人を介護したなんて!
本当に凄いです。

介護・福祉の分野をビジネスチャンスなどと思ってまったくの異業種から参入して来るじゃないですか
そう言うのって疑問なんですけど・・?
返信する
kayoさんへ (忠太)
2008-05-28 23:09:57
でしょ!

10人近い女性が後を追って辞める・・・

誰の話?って、自分でも思いますわ。それなり

に納得のできる理由があったということです

ね。

ところで、お母さんの全介助よくやられました

ね。A施設では、日中だけのことだし、本文で

種明かししたように、施設利用者の皆さんの手

を借りていました。

なお、ビジネスチャンスになるか、という点に

ついてですけど、難しいと思います。

補助金頼みになる気がします。となると、必要

経費しか支給されないでしょうしね。
返信する

コメントを投稿