セイコー・ブライツ。
仕事柄縁があるアンティーク時計は、古い故にコンディションが悪いのは当たり前。そもそも精密機械なんですから数年毎のメンテナンスは必須。大抵の人はそれをしませんから、時差があったり防水機能が失われているのが普通です。修理をするにもお金が掛かるからそのまま手放すわけで、手にする時計の殆どが要メンテナンス。
機械式時計の場合は物理的に狂いが生じやすいのでしょうがないんですよね。それでも手巻きなら良い方で、自動巻は可成りの確率でアウト。一見キレイだったりデザインが気に入って持とうかなと思うと時間が狂ったり風防がすぐ曇ったり。本来手が掛からないオートマチックでそれじゃあ普段使いには出来ません。
写真はキネティックという自動巻クォーツの時計です。クォーツ時計は電池で水晶発振する機構ですから正確さがウリなんですよね。日本のSEIKOが世界で初めて量産に成功して爆発的にヒット。それは機械式時計の大国だったスイスのメーカーがこぞって追従し、挙げ句機械式時計の製造とそれに対するユーザーからの信用失墜を招き経営危機に陥らせた程でした。
まあ今日ではそれがあったから余計に機械式時計の良さが見直され、空前の機械式時計ブームを招いてもおりますけど。とまれそんな歴史があったので、クォーツ時計は日本より海外で人気があるんです。メーカーは嗜好の違いを把握しているから、海外向けのブランドまで用意してるくらいですし。
で、このキネティックなんですが、普通のクォーツと違って電気は振動によって作るんです。構造的にも使い勝手も機械式の自動巻と似てるんですね。また作られた電気は充電池にストックされるんですが、一定時間振動が無いと針が止まって放電を抑えるんです。でもその止まってる間も時刻の計測はされていて、再び手にはめて動かした時に経過した後の現時刻を指し示すんです。これがオートリレー機構で、『眠る時計』の異名を持つんですね。
それを知っていたので、ここ数日は状態の把握を楽しんでおりました。クォーツですから期待した事なんですが、嬉しいことに殆ど狂いがありません。勿論充電池なので車のバッテリー宜しく何時かは電池替えが必要ではあります。実際オートリレー機構は働かなかったんですが、原因はその辺にあるかなと予測しています。
省エネに関心が高まる中、太陽の光で動くシチズンのエコドライブは正にそれらをイメージし易く、伝え聞いてる所でも時計業界久々のヒットかと思うんですけど、セイコーのキネティックは一般の知名度はもうひとつみたいですね。でもこの機構はセイコーがクォーツを発表した時には構想があって、その為の特許も当時取っていたそうです。
「骨董」というカテゴリーに上げるには些か若いアイテムですが、この時計にはちょっとした見所が散見出来て嗜好性が感じられ、久々に楽しいおもちゃを手に入れた気分です。こういう縁でもない無い限り私が手にする機会はないですからね。
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