Innovation(イノベーション)

2012-01-12 20:43:44 | 医療用語(看護、医学)
  保健医療の専門用語ではないが、innovationを取り上げる。4、5年前ぐらいから国際看護でよく使われるようになった言葉である。もともとは経済・経営学の言葉で、以前の訳は「技術革新」だった。ICNの大会やINRなどで出てくるときは、「革新」という訳を使っていた。必ずしも新しい技術やスキルのことだけではなく「これまでにない全く新しい考え方」を指している。今は、そのままカタカナで「イノベーション」を使う場合が多い。

 そしてinnovationと一緒によく出てくるのがentrepreneur(アントレプレナー)である。「起業家」になるのだが、看護の世界では、事業を起こすという意味に限らず、イノベーションの遂行者として使われている。

 
 ウィキによると、イノベーションは、必ずしも新技術の発明ということではなく、既存のものの中に新たな視点や考え方、活用方法を造り、新たに社会的に意義のある価値を創造する行為であり、社会に変化をもたらすものである。このような定義は、20世紀の初めに経済学者のシュンペーターが初めて使った。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

 現在は、イノベーションというと、ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』(ダイヤモンド社)がよく出てくる。この本は分かりやすく面白い。

 
 看護に話を戻す。看護でイノベーションを使うとき、新しい技術というより、時代のニーズをいち早く分析し、これまでの看護の知識や技術に新たな価値を見出して、果敢に一般の人々に健康と福祉の増進を図り、よりよい社会に進めていくという意味で使われている。その意味では、プライマリ・ヘルスケアが注目されている。

 昨年のICN大会のときに、東日本大震災後の日本看護協会の災害支援ナースについてはイノベーションであるといわれた。確かに、阪神大震災を教訓に優れたボランティアナースのシステムを作り上げている。災害看護の講習会を開催して受講を修了した応募者のみ登録し、3人1組で短期間に順次派遣するとともに、現地コーディネーターがニーズをリアルタイムで本部に報告して派遣ナースの構成については、ニーズに即したスキルの組み合わせにした。以前紹介したボランティアナースの海外の論文で、希望者は多いが必要なスキルについての認識が不足していることが上がっていたが、日本の場合は災害が起こる前に、訓練も登録も終わっていて、スキルとモチベーションを含め即応能力が非常に高い。既存の知識とスキルに手を加えて新しいものにして、新たな価値を生み出し、社会に大きな影響を与えている。明らかに、イノベーションである。

 ちなみに、国際看護でイノベーターとして筆頭に挙がってくるのは、フローレンス・ナイチンゲールである。これまでのブログでも何回か取り上げたが、クリミア戦争で自身が組織したナース団によってナースのイメージを一気に専門職業人に変えてしまい、誰もしたことのない統計を使って陸軍病院の死亡率を激減させ、救貧院改革で平等な医療を求め、政策提言活動を果敢に行い社会を変えた正真正銘のイノベーターである。
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