Physician vs. Doctor

2011-06-02 21:31:55 | 医療用語(看護、医学)
  physician と doctor の意味はどちらも「医師」だ。欧米の看護の論文では、「医師」を意味する場合、doctor ではなく、physician を使うことがほとんどだ。doctor は、PhD やMD など、博士号取得者に対して使う。看護にもたくさん、doctor はいる。この言葉の選択傾向は、ICNにおいては明らかだ(INR誌のコラムや論文、ICN大会など)。だが、ICNとは別の専門領域の看護の学会でも、最近は、海外の看護の研究者、教育者、実践家はともに、「医師」には physician を使い、文章の中で、途中、言葉変えて表現する場合、ナースのことも、医師のことも、同等に、healthcaare provider や healthcare professional を使っている。
 「医師」を指すとき、GP(general practitioner:一般医、開業医のこと)か、specialist(専門医)かを区別して使うこともあるが、doctor を使っていることは、ほとんどない。

 2006年に、通訳者として随行した、日本看護連盟(日本看護協会の政治団体)のアメリカ看護団体視察の中に、The Center for Nursing Advocacy があった。「一般の人々の中にナースへの理解を高める」ために、メディアでの看護やナースの採り上げ方での問題を指摘し改善する活動をしている団体だ。もともとは、ジョンズ・ホプキンス大学大学院の看護学の学生2人で始めたらしい。少しずつ大きくなり、スザンヌ・ゴードンやダイアナ・メイソンも理事として関わっており、メイソンのPolicy and Plitics in Nuring and Health Careにも、1つセクションが設けられて、活動が説明されている。このセンターのホームページに、看護の視点から、doctor ではなく、physicianを使う理由が説明されている。http://www.nursingadvocacy.org/faq/nf/physician_vs_doctor.html

 何が書いてあるか、ポイントだけ要約すると、「医師」の意味で doctor を使うと、看護など他の医療職の分野で博士号を取得できるのにもかかわらず、医療の中では医師のみが博士号を持つと考えられ、その考えが社会の中で固定的なものになる。(看護にはケアリングとともにサイエンティフィックな面もあり、)これからの時代、看護がいろいろな勉強ができる興味深い分野とし認識されなければ、男女幅広く、看護の学生が増えていかなくなる、ということだ。

 この考え方をベースに、the Center for Nursing Advocacyでは、看護やナースに対して社会が長きに渡って固定して持っているイメージ(女性の仕事、医師の補佐業務など)を改善しようと、テレビ番組、コマーシャル、広告など、メディアでの不適切な描写に対して、指摘し、改善させるまで、追跡している。
 (残念ながら、このセンターは、少し前に閉じる決定をしたようだ。ホームページだけはしばらくそのままにしておくとのこと)。

 センターの名前を訳すと「看護のアドボカシーのセンター」になる。人々が必要とする質の高いケアを提供していくには、看護のアドボケイト(権利擁護)、つまり、社会において、看護が重視され、看護とナースへの配慮を増やしていく努力がナースに必要である。そのためには、ナースと看護に関係性を持つものを表現する言葉については、看護をアドボケイトしているものかをよく考えて選んでいく必要がある。
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