『紙屋悦子の青春』2006.9.18 鑑賞
“あの時代を生きた若者に捧げるレクイエム”
↑監督自身が述べた、私にとっての『紙屋悦子の青春』
監督:黒木和雄
原作:松田正隆
脚本:黒木和雄/山田英樹
出演:原田知世/永瀬正敏/松岡俊介/本上まなみ/小林薫
岩波ホールで、この映画が公開された当日8/12(土)、NHK ETV特集で、『戦争へのまなざし~黒木和雄の世界』が放送されました。
『父と暮らせば』(よろしければ2005.11.9記事)がとても好きでしたので、今春、黒木和雄監督の訃報を聞いた時は、悲しかったですね。
なので、その黒木監督の遺作『紙屋悦子の青春』はぜひ観に行かねばと思っておりました。
NHK ETV特集も帰省中でしたが、もちろん見ましたよ。
晩年(と言わねばならないのが辛い)、戦争にこだわった映画を撮ることに執着した黒木監督の背景が、取材や証言によって浮き彫りにされていました。
勤労動員をするのは、当時の日本の少年少女にとっては当たり前。
そして、兵器工場を狙ってのグラマン機の空爆もよくあることだったのでしょう。
事実、当時女専に通っていた義母の話でも、空爆の為、姉が負傷し上級生が亡くなったという話を聞きました。
黒木監督も逃げている途中、被爆した友人を見捨てて逃げた……
という例えようのない悔悟の情を戦後ずっと背負ってきたのでした。
身近な友人・知人・親戚が死に、自分だけが生き残る。
戦争中に青春を過ごした今の年配者は、こういう体験を少なからず経験しているんでしょうね。
写真でしか見た事がない私の母の元夫(※)は海軍所属の職業軍人でしたが、骨さえ帰ってこなかったそうです。
「太平洋上にて死亡」と書いた紙切れ一枚が箱に入って帰ってきたとか…。
※私の父の兄です。戦争未亡人になった夫人が、夫の兄弟と一緒になるという話はよくあることでした。当時は今以上に「家」制度ですから。
で、映画の話。
この映画は『父と暮せば』同様、戯曲が原作となっています。
劇作家 松田正隆が1992年冬、作品創作に行きづまりを感じ、もっと自分自身に身近な題材を取り上げようと、両親のことを書きました。
そうです。紙屋悦子さんは今もご健在の松田さんのお母様なのですね。
紙屋家は鹿児島にありました。映画全編に優しい鹿児島弁があふれています。
始まりは、病院屋上での老夫婦の回想の会話。
そして、舞台は紙屋家に移ります。映画の中の場面は殆ど、この紙屋家。
『父と暮せば』と同様、セットで作られた家屋内での場面が全て。会話でストーリーが進んでいき、長回しが多いのも同様です。
終戦間近の紙屋家は、両親を空襲で亡くしたばかりの悦子(原田知世)と、兄(小林薫)と、悦子の親友でもある兄嫁(本上まなみ)がつましく暮しておりました。
ある日、悦子に縁談が持ち上がります。
お相手は、悦子が密かに思いを寄せる、兄の後輩、明石少尉(松岡俊介)ではありませんでした。
明石少尉の親友、永与少尉(永瀬正敏)は以前、紙屋家を訪れた時に悦子に一目惚れをしていたのです。
明石少尉には、一つの思いがありました。それは映画の中では開けられることのない手紙に書いてあったのでしょうか…。
岩波ホールは、私と同世代、或いはそれ以上のご年配の方々でほぼ満員でした。
地味な、戦争が背景となっている映画を見るのは、やはりこういう世代なんですね。
しかし、予想に反して意外だったのは、笑える映画だった事です。
観客である私たちは、そこかしこで声をあげて笑いましたよ^^
台詞が、よく出来た落ち着いた掛け合い漫才のよう。
兄と兄嫁と悦子の食事シーン。
明石少尉と永与少尉と悦子のお見合いシーン。
役者さん方、皆さん巧い!
安心して見ていられますし、笑えます。
嫌味ない上質のユーモア。
すっぱい芋。甘いオハギ。美味しい静岡のお茶。ロマンチックな詩人の中也。
↑のキーワードに注目。笑いどころですよ~^^
地味な日本映画ですが、味わい深い。
落ち着いた俳優さんが、淡々としつつもしっかりとした演技を見せてくれる上質のお芝居。
黒木和雄監督の遺作。ぜひ機会があれば、ご覧になってください。
劇場で購入した映画のパンフレットは、巻末にシナリオが全て収録されていました。びっくり!定価700円。

紙屋悦子の青春 - goo 映画
“あの時代を生きた若者に捧げるレクイエム”
↑監督自身が述べた、私にとっての『紙屋悦子の青春』
監督:黒木和雄
原作:松田正隆
脚本:黒木和雄/山田英樹
出演:原田知世/永瀬正敏/松岡俊介/本上まなみ/小林薫
岩波ホールで、この映画が公開された当日8/12(土)、NHK ETV特集で、『戦争へのまなざし~黒木和雄の世界』が放送されました。
『父と暮らせば』(よろしければ2005.11.9記事)がとても好きでしたので、今春、黒木和雄監督の訃報を聞いた時は、悲しかったですね。
なので、その黒木監督の遺作『紙屋悦子の青春』はぜひ観に行かねばと思っておりました。
NHK ETV特集も帰省中でしたが、もちろん見ましたよ。
晩年(と言わねばならないのが辛い)、戦争にこだわった映画を撮ることに執着した黒木監督の背景が、取材や証言によって浮き彫りにされていました。
勤労動員をするのは、当時の日本の少年少女にとっては当たり前。
そして、兵器工場を狙ってのグラマン機の空爆もよくあることだったのでしょう。
事実、当時女専に通っていた義母の話でも、空爆の為、姉が負傷し上級生が亡くなったという話を聞きました。
黒木監督も逃げている途中、被爆した友人を見捨てて逃げた……
という例えようのない悔悟の情を戦後ずっと背負ってきたのでした。
身近な友人・知人・親戚が死に、自分だけが生き残る。
戦争中に青春を過ごした今の年配者は、こういう体験を少なからず経験しているんでしょうね。
写真でしか見た事がない私の母の元夫(※)は海軍所属の職業軍人でしたが、骨さえ帰ってこなかったそうです。
「太平洋上にて死亡」と書いた紙切れ一枚が箱に入って帰ってきたとか…。
※私の父の兄です。戦争未亡人になった夫人が、夫の兄弟と一緒になるという話はよくあることでした。当時は今以上に「家」制度ですから。
で、映画の話。
この映画は『父と暮せば』同様、戯曲が原作となっています。
劇作家 松田正隆が1992年冬、作品創作に行きづまりを感じ、もっと自分自身に身近な題材を取り上げようと、両親のことを書きました。
そうです。紙屋悦子さんは今もご健在の松田さんのお母様なのですね。
紙屋家は鹿児島にありました。映画全編に優しい鹿児島弁があふれています。
始まりは、病院屋上での老夫婦の回想の会話。
そして、舞台は紙屋家に移ります。映画の中の場面は殆ど、この紙屋家。
『父と暮せば』と同様、セットで作られた家屋内での場面が全て。会話でストーリーが進んでいき、長回しが多いのも同様です。
終戦間近の紙屋家は、両親を空襲で亡くしたばかりの悦子(原田知世)と、兄(小林薫)と、悦子の親友でもある兄嫁(本上まなみ)がつましく暮しておりました。
ある日、悦子に縁談が持ち上がります。
お相手は、悦子が密かに思いを寄せる、兄の後輩、明石少尉(松岡俊介)ではありませんでした。
明石少尉の親友、永与少尉(永瀬正敏)は以前、紙屋家を訪れた時に悦子に一目惚れをしていたのです。
明石少尉には、一つの思いがありました。それは映画の中では開けられることのない手紙に書いてあったのでしょうか…。
岩波ホールは、私と同世代、或いはそれ以上のご年配の方々でほぼ満員でした。
地味な、戦争が背景となっている映画を見るのは、やはりこういう世代なんですね。
しかし、予想に反して意外だったのは、笑える映画だった事です。
観客である私たちは、そこかしこで声をあげて笑いましたよ^^
台詞が、よく出来た落ち着いた掛け合い漫才のよう。
兄と兄嫁と悦子の食事シーン。
明石少尉と永与少尉と悦子のお見合いシーン。
役者さん方、皆さん巧い!
安心して見ていられますし、笑えます。
嫌味ない上質のユーモア。
すっぱい芋。甘いオハギ。美味しい静岡のお茶。ロマンチックな詩人の中也。
↑のキーワードに注目。笑いどころですよ~^^
地味な日本映画ですが、味わい深い。
落ち着いた俳優さんが、淡々としつつもしっかりとした演技を見せてくれる上質のお芝居。
黒木和雄監督の遺作。ぜひ機会があれば、ご覧になってください。
劇場で購入した映画のパンフレットは、巻末にシナリオが全て収録されていました。びっくり!定価700円。


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