ここで「ジョゼ虎」のストーリーを自己流の解釈で短くまとめてみる。
短編を更に短編にしたので、わかりやすくはなってると思います。(汗
ジョゼは父方の祖母と一緒に生活保護で暮らしている。 ジョゼの母親は、ジョゼが赤ん坊の
頃に家庭を捨てて出て行ったので、母親との思い出は殆ど無い。 父親は優しかったが、
その後再婚した義理の母親は、ジョゼが大人の女になるにつれて煩わしくなり施設に入れた。
その後におばあちゃんに引き取られて、二人きりの生活が始まった。 おばあちゃんも
優しかったが、ジョゼが障害者ということを恥じており、近所に知られたく無い思いから
世間から隔離した。 車椅子で外に出るのも人通りの少ない夜とかが多かった。 学校は
就学免除で一度も行った事がない。 それでも本を読むのが好きなジョゼは、定期的にやってくる移動図書館で無料で本を借りて読みふけっていた。 なので世間のことは知らないが、
活字で得た変な知識だけはよく知っていた。 友達もいない、近所付き合いもないジョゼに
とって唯一外(世間)との繋がりは恒夫だけなのだ。 物語はほぼ、恒夫とジョゼが中心で
話が進む。 いつもジョゼにボロクソ言われても、恒夫はジョゼのためにセッセと世話を焼く。
市役所の福祉課に掛けあって、障害者用に家の中に手すりをつけたり、バリアフリーに
しもらったり、時には恒夫が自ら工作して、拾ってきた掃除機のキャスター部分を改良して
家の中でも移動できるように台車をつくてあげたりしても、ジョゼの態度はいつもと変わら
ない。 恒夫に、もっとああしろ、こうしろとか、やり直しを要求したり、いちいちケチを
つけるのだ。 それでも恒夫はジョゼを怒ったりはしない。 ジョゼは、成長期から
身体の発達が止まり、中学生くらいにしか見えなかったので、恒夫はジョゼを年下の少女だと
思っていた。 後に自分より年上だとわかった時から、ジョゼの言う事をハイハイと聞いて
いる風にしている。 ジョゼのわがままや威張る態度は、実は寂しさの裏返しだと恒夫は
思っているみたいだ。 恒夫も大学生なので、学生には学生の生活もある。 バイトや友達
付き合いとかで、毎日この家に来ることはできない。 就活で忙しくて何ヶ月か顔を出せ
ない時期が続いた。 やっと就職も決まり、久々にジョゼに会いに家を訪ねたら、見知らぬ
住人に変わっていた。 話を聞くと、一緒に住んでいたおばあさんが亡くなって、娘さんは
引っ越して行ったとかで… ジョゼが一人で暮らしている。 そう思うと恒夫はやたら心配に
なって、教えてもらった住所を急いで訪ねた。 その路地裏の奥にあるアパートの中から出て
きた久しぶりに見るジョゼは、顔も体も痩せ細って、栄養失調みたいだった。
その姿を見て恒夫は心を痛める。 「ばあちゃん亡くなったんやて? すまんなオレ色々忙し
くて来られんかった」 いつものように「いったい今まで何してんや、この薄情モン!」とか
罵られると思ったら意外と平常で、それでいて悲しそうでもなかった。 家の中に入ると、
前の家にあった箪笥や鏡台といった家具らしきものは無くなっており、代りにダンボールで作った収納に家財道具が収まっていた。 どうやら引っ越し費用の足しに殆ど売ったらしい。 痩せて尖った顎や、ツヤを失ってパサパサになった黒髪を見て恒夫は「大丈夫か? ちゃんと食べてるか? 顔しなびとるやないか」そう言われてプライドの高いジョゼは、哀れみをかけられたと思い激怒した。 「ゴハンくらいちゃんと食べてるわ、アタイのことバカにしとんのか! もう帰れ!」と怒鳴る。 いつものジョゼに戻ったなと思い、とりあえずひと安心したので帰ろうと、玄関で靴を履こうとした時に恒夫の背中に杖が飛んできた。 振り返ると、ジョゼの大きな瞳に大粒の涙がたまっていた。 「早よ帰れ、2度と来たらあかん!」 恒夫は思わずジョゼのそばへ寄ると、ジョゼは子供のように恒夫の胸にすがりついた。 大粒の涙をボロボロこぼしながら「帰らんといて、もう30分でいいからここにおって」今まで抑えていた不安や寂しさが一気に溢れ出た。 そういえばこの部屋にはテレビもラジオも無い。 この何もな部屋で過ごす夜はさぞかし淋しかっただろうな。 そう思うと恒夫はジョゼがたまらなく愛おしくなり、
小ぶりで形のいいジョゼの唇に自分の唇を重ねた。 二人の舌が絡み合う。 そして喘ぎながらジョゼの口から女が零れた。 「恒夫さん、 アタイのこと好きにしてええよ、何してもかまへんから…」 あのジョゼが恒夫のことを恒夫さんと呼んだ。 そして「好きにしていい」というこの言葉。 この殺し文句は最強だ。 この状況でジョゼが言うと波動砲並みの破壊力がある。
私は読みながら鳥肌がたった。
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