日暮しトンボは日々MUSOUする

慰め合うために出会った恋の行方






「 拾った石ころのような恋 」  (再掲載)


「正直に言うとね… 最初あなたのこと、特に好きというわけじゃなかったの」

付き合って1年目のデートで、彼女はこう告白した。

彼女は会社の同僚で、あの頃は別の課の男性に心を寄せていたね。

僕は僕で社内で可愛いと評判の受付の女の子が好きだった。

しかし、お互いの恋は成就せず、君も僕もこっぴどいフラれ方をした。

フラれた者同士、何となく一緒に飲みにいくことが多くなった。

別に誰でも良かった。 お互い特別な存在じゃない。

どこにでも転がっている石ころのような存在の僕と彼女だから、

いつ捨てても良い…捨てられても良い、そんな割り切った関係だった。

忘れるために僕らは抱き合い、それは愛し合うというよりか、

お互いの身体を借りて、スキマを埋めるための行為だった。

「わたし…  あなたに謝らなければいけないの」

重い口を開いて彼女は語り始めた。

「私たちの関係って、愛でつながっているものじゃないでしょう

 お互いの傷が癒えたら終わるものだと思っていたから、

 別れても惜しくないあなたを選んだの。 ごめんね

だけどね…
 
 ベッドの中でわたしの背中をギュッと強く抱きしめてくれた時は

 何だか "元気を出せっ" って、言っているように思えて…

 ああ…この人も淋しさを必死で我慢してるんだな…と思った。

 あなたはいつも優しくて、自分よりわたしの気持ちを優先してくれて

 今まで男の人にこんなに優しくされたことがなかったから

 いつの間にかわたしは この人を失いたくない…って強く思ってた。


あの… 迷惑かもしれないけど、   あなたのこと本気で好きになっても良いかなぁ…」




「君が僕のことを優しいと感じたのは、それは多分、他の人に見せるはずだった優しさを

 君にあげただけだよ。 最初はそんな関係だったからね」 


僕といる時の君はいつでも楽しそうで、無理してはしゃぐ君の気持ちが痛いほど

わかるから、君をギュッと抱きしめたんだ。 

そしたら君も子供のように僕の胸に強くしがみついてきた。

その時思った。  僕はこの人を守ってやりたい…  って。


「実はね…  僕はもうとっくに本気だったよ、君を愛してるから別れる気なんて
 サラサラない んだ」


「ホントっ!?」



「キミはそこらに転がっている石ころなんかじゃない
 今じゃ僕にとってはキラキラに輝く宝石なんだ」

そんな歯の浮くようなセリフが頭に浮かんだが、口に出すのをやめた。


花束を渡すより恥ずかしいから、今の僕にはまだ似合わないと思った。



想いを込めた渾身の台詞は、本当に宝石のついた指輪を渡す時にとっておこう













「 忘れ去られた面影の中に生きる 」  (再掲載)



あの頃は無我夢中で気がつかなかったけど

たぶん 本気で好きだったわけじゃない

たまたま近くにいて あなたにとっても僕にとっても

最高の相手だとお互いに思いこもうとしていた

このくらいの相手が自分にはふさわしい

夢を見ても届かない相手より 手を伸ばせば届く距離を選んだことを 

僕も君も心の奥底に隠し通そうとした

思い込みで出来上がった薄い愛は 5ヶ月持たなかった

キラキラ輝いていたものが色あせ 粗が見えてくる

妥協しても欲しかった 即席の相手は

何年後かにはきっと顔も忘れているだろう

それ以来 無理やり作る特別な夜の思い出に

あまり意味がなくなった

それはきっと 相手も同じことを感じているだろう



そんな恋の仕方はもう2度としないように

賑わう前の海岸を独りで歩くのはこれで最後にしよう 










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