日暮しトンボは日々MUSOUする

宵に咲く桜のもとで







「春に告げるキモチ」 (再掲載)


あの日    何ヶ月ぶりに彼女に呼び出された

約束の場所に向かう途中 桜色のアーチの下をいくつもくぐった

季節が変わった事を感じながら 花見の人々の中に彼女の姿を捉えた

距離を置いた恋人同士のぎこちない挨拶はなく

普通に ごく普通に 二人の会話は距離を縮めた

そして彼女は 日常会話の中に別れ話を織り込んだ

いつ別れ話に切り変わったのか分からないくらいスムーズだった

そうか…     気持ちの整理がついたんだね

だからこんな天気のいい日を選んだのも納得がいく

私と違う景色を見る事を選んだ君の新たな門出の日

一応の区切りを得たこの瞬間から 私ではない誰かの元へ

君の心は飛んでいく


こんなにも青空と桜が満開の日に酷いなぁ… と仰ぎながら 

頭上の桜ではなく足元に咲く桜に目を落とした

この桜の花びらは 人々の頭や肩にそっと舞い落ちることはないんだな…

ガラにもない事をつぶやく心は やはりダメージは隠しきれない


私は沿道の出店で少し高い缶ビールを買い

歩きながら軽く酔いを回す

こんな時のために あらかじめ用意していた慰めの言葉は

足元の芝桜を見ていたら もうどうでも良くなった 




この日から 私は芝桜が好きになった






ー1年後ー



「宵闇桜」 (再掲載)

陽が落ちるちょっと前 桜並木の道を歩いてきた

いつからだったろうか 僕の中の君が消えたのは

いつまでも覚えているつもりだったのに

気がついたらいなくなっていた 

ちょっと残念な気もするが ごく自然な流れで過ぎ去ってくれた

家に帰り 玄関のドアを閉めると 

上着の肩に乗っていた桜の花びらが ひらりと舞う

薄暗くなった部屋のカーテンを閉めて 部屋の電気をつける

もう心の中はスッカラカンだ 君の面影は一つも残っちゃいない

強引に取っ払いたくなかったから 理想的な幕引きができてよかった

さっき肩からこぼれた花びらを手のひらに乗せ

これも宵闇桜のおかげかな…と 冷蔵庫から発泡酒を取り出し 

プシュッと栓を開ける音が いつになく心地よく感じた

こんな晩はツマミなんかいらない このまま酔いつぶれよう









ー5年後ー


青臭い勝利宣言(再掲載)


何年ぶりかで別れた彼女と、街で偶然再会する。

あることを確かめるために、わざと上の名前で呼んでみる。

否定しないところをみると、苗字が変わっていないということだ。

彼女が僕の近況(恋愛事情)を聞いてきたので、

もうすぐ結婚するかもしれない恋人がいることを報告した。

それを聞いた彼女は「いいなぁ〜幸せそうで…」と、とても羨ましそうに言ってくれた。

君だってそういう人いるんでしょ? と聞くと、「もうそんな人いないよ〜」と

頭の片隅に何かを思い出しながら苦笑いする彼女。 

僕は少しだけ優越感に浸りながら、心の中で小さくガッツポーズをする。  

ほ〜ら   別れて後悔してるだろう…   と、思いあがる。

「私の分まで彼女を大事にしてあげてね」 と言わせた時には完全勝利を感じた。

僕は彼女から、まだ残ってるかもしれない僕への思いをを引き出そうと、

その後の彼女の人生を聞いてみた。



彼女の話を要約すると、今現在の彼女は子育てをしながら、

兼ねてからやりたかった仕事をしているとのこと。

子供の父親とは別々の道を歩むことになったが、後悔はしてないという。

仕事と子育ての両立は大変だけど今が一番幸せと語る彼女。

そして「子供を保育園に迎えにいく時間だから またね」と言って

小さく手を振って遠ざかる。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そっか

子持ちのバツイチだったのか…  

僕と別れた後に結婚して、子供も産んで、やりがいのある仕事を見つけ、そして離婚。

それでも今の僕には、彼女が充実してる人生を送ってるように見えた。   

まだ青臭い恋愛のあたりをうろちょろしてる僕は、

自分よりさらに先を行く経験をしてる彼女に、

自分とは比べ物にならないほどの距離を感じた。



最後に逆転負けした気分になったが、いいかげん勝ち負けにこだわる恋愛を

卒業しなければいけないと、この時僕は素直にそう思えた。









あ、これ無理にリアクションしなくていいです。 人に読ませるというよりか、己の作品記録の整理みたいなものですから。   時期が過ぎる前に載せておかないと。。。
それにしても寒い。 もう春なのに今朝はやけに寒い。   あ、この詩のせいか。

若気が威勢よく至ってるなぁ〜〜。。。。






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