日暮しトンボは日々MUSOUする

生ぬるいほどに気持ちが緩み薄れゆく想い







「湯が冷めるほどに」  (再掲載)



食事のあと、お茶をすすりながらテレビをボ〜ッと眺めていると、

洗い物が終わってテーブルについた彼女が言った。

「ねぇ…わたし働こうと思うんだけど」

「え? あ、いいんじゃない」と、飲みかけ湯呑みを口から離して答える僕。

「いいの?働きに出ても?」

「いいよ、別に仕事するなとは言ってないから。やりたい仕事があるならやりなよ」

「別にやりたい仕事があるわけじゃないんだけど…    なんとなく
  このままでいいのかなって…」

「わかるよ、その気持ち。だから反対しないよ」

「そしたら家のこととか、やってもらうことが多くなるかもよ」

「全然構わないよ、一人暮らし長かったから炊事とか掃除とか苦にならないし」

「ひょっとしたら残業とかで遅くなるかもよ」

「そりゃぁ残業くらいはあるでしょ」

「男ばっかりの職場かもよ」

「そーゆう職場もあるかもね」

「心配じゃないの?」

「何が?」

「だって、職場で知り合った人と恋に落ちちゃうってこともあるじゃない」

「そりゃ〜あるかもね。現に君と僕もそうだったから」

「もし職場の上司に強引に口説かれちゃったらど〜する?」

「どうするも何も…断りゃいいじゃん。
  君にその気がないのなら別に問題ないんじゃない?」

「あのね〜、その気が無くても惹かれ合っちゃうのが恋ってもんでしょうに!」

「え、なに、キミ浮気したいの?」

「そんなわけないでしょ! 例えばの話でしょうに」

「なんで君は浮気する前提で仕事探してんの?」

「あのね、専業主婦のような単調な毎日を送っていると、不意に訪れた
  別世界の誘惑に、気持ち揺れちゃうこともあるでしょって言ってんの」

「・・・・・・不倫に憧れてる?」

「だからそんなんじゃないって言ってんでしょ! 
  あなたは私を失うかもしれないっていう危機感はわかないの!?」

「そりゃぁ、君のこと信用してるから」

「信用していることと、関心がないのとは違うんだからねっ!」

「ちょ、ちょっと待って、さっきからなんで怒ってんの? 意味がわかんないんだけど…」
 
「だからね、あなたは私を自由にしすぎなのよ
  私に関心がなくなったのかなって、不安になるでしょうに! このバカッ!」


「よし! わかった。 とりあえず落ち着け。 この話長くなりそうだから、

 その前に、お湯沸かしてくれない、 お茶が冷めちゃったから 」















「なまぬるい愛」  (再掲載)


人を好きになると全てを把握したがる 余すことなく手に入れたがる

僕は束縛も支配もしたくない いくら好きでも他人の人生なのだ

理想は押し付けるものじゃないし 投影するものでもない

ただ 常に存在の大事さを感じていたい


などと 重さを排除した理想の形だと勘違いをしていたら

それであなたの愛情をどこで感じたらいいの?

と言われた

独占したいという気持ちも 体を欲しがる欲も

嫉妬で醜い態度を見せてしまうのも重要だったんだね

信用することは その反面距離感で出てしまうらしい

愛に縛られることが愛情の大きさを表し

信用よりも小さなヤキモチを焼くことが重要ならば

僕の愛情は明らかに生温い









名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

最近の「恋愛について (詩とか短編とか)」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事