◆東京マラソン(3日・東京都庁前~東京駅前=42・195キロ)
今井正人(トヨタ自動車九州)が2時間10分30秒で日本選手2番手の6位に入り、9月15日に開催される東京五輪代表選考会「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得した。
【写真】雨ニモマケズ力走する今井
苦戦しながらも日本選手3番手まで浮上した直後の38キロ手前。視界に妻の麻美さんや3人の子どもたちの姿が映ると、今井は強く胸をたたいて声援に応じた。
「弱い自分に負けたくない。『男だろ』と。前も見えている中、ここで諦めてたまるかと。こういう天候は見せ場」
懸命に足を運び、40キロ手前で日本選手2番手の藤川に追いついた。最後に藤川を振り切り、2時間10分30秒でゴール。スタート時の気温5・7度、雨も降る悪天候の中で粘り抜き、東京五輪への道を切り開くMGC出場権をつかんだ。「(悪条件で)最後の最後まで何が起こるか分からない、という気持ちの部分が結果につながった」と笑った。
「男だろ」は、6歳の長男・秀馬くんからもらった激励の言葉だった。子どもたちがつくるのを手伝った給水ボトルの一つに、秀馬くんは「がんばるのがおとこだ」と書いてくれた。25キロすぎから脚に異変を感じて集団から後れはじめ、もっとも苦しい30キロ地点の給水所に置いたこのボトルもつかみ損ねた。そこから持ち直した結果に「今までは離れた後、弱い自分に勝てないこともあった。だけど、前だけを見て走れたことは大きい」と実感を込めた。
順大時代に箱根駅伝の5区で活躍した「元祖・山の神」。15年の東京マラソンで2時間7分39秒の好記録をマークし、同年の世界選手権代表を決めた。しかし、選手権本番は病気で欠場。16年のリオデジャネイロ五輪出場も逃した後は「もやもやした」時期が続いたという。
昨年のびわ湖毎日の後、森下広一監督の勧めで約半年の休養期間を設けた。練習量を抑えて家族との時間を優先するだけでなく、故郷の福島に帰る機会もあった。高校時代に通った整骨院などお世話になった人たちを訪ねてリフレッシュ。「離れることで、走る気持ちが湧いてきた」という思いを約1年ぶりの42・195キロにぶつけた。
3月3日は、昨年4月に生まれた長女・美緒ちゃんにとって初めてのひなまつり。5キロ地点の給水ボトルには「美緒の初節句だよ」と記されていた。日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)が棄権するなど過酷なレースで結果を残し、子どもたちに格好いい「おやじの背中」を見せた34歳。選手としての存在感も、まだまだ健在だ。
西日本スポーツ
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