庭園の紅葉で有名な三重県いなべ市の聖宝寺(しょうぼうじ)に伝わる 「猿の恩返し」 というお話です。
むかしむかし、三重県北部の山中に美しい村がありました。
ある日のこと、旅のお坊さんが枯れ木に腰を下ろして一休みしていると、何処からか
「キィーキィー」 と大きな悲鳴が聞こえてきました。
驚いたお坊さんが、声のする方に行ってみると、そこには罠にかかったお猿さんがいました。
お坊さんはその罠を外し、手当てをしてあげると、お猿さんは 「ありがとう、ありがとう」
と何度も頭を下げて、山の中へと帰って行きました。
お坊さんがまたしばらく歩いていると、今度は泣いている村人がいました。
「何故、泣いておられるのかな」と聞くと「悪い病気が流行し、村人が何人も亡くなりました」と答えました。
そこでお坊さんは、村人の病気が治りますようにと、天に向かって一生懸命お祈りをしました。
すると突然、山の彼方から雲に乗った観音様が現れ 「この先に大きな滝がある。
その傍に寺を建て、観音様を祭るがよい。そうすれば村人の病も治るだろう」 と告げたそうです。
お坊さんは観音様のお告げのとおり、お寺造りに励みました。
暫くすると、お猿さんが仲間を連れて来て、助けてもらった恩返しにと、お寺造りを手伝ってくれました。
やがて山の様子に気付いた村人も集まってきて、皆で立派な観音堂を造り上げました。
それからは、村人たちの病気も治り、平穏な日々が続いたということです。
この観音堂が聖宝寺で、毎年 秋になるとお猿さんの恩返しにより、庭園のもみじがお猿のお尻のように
真っ赤っかになるそうです(⌒∇⌒)。
聖宝寺もみじ
お猿さんを助けたお坊さんのブログ http://www.shoubouji.com/blog/
お坊さんのツイッターアカウント @hakuin52
「さるのおんがえし」 森 早苗/絵 因田 あけみ/文 藤原町民話研究会 いなべ市藤原図書館 蔵