酒呑みの正しい生活

5打席連続敬遠

先日最終回の放送を終えた下剋上球児。

その最終回、三重県予選の決勝戦の最中に南雲監督が放ったひと言。
俺は姑息な手段を使ってでも勝ちたくなった。

そして行ったプレーが一塁三塁からのトリックプレー。
まぁ、このプレーに関しては触らないでおくとして。

南雲監督のひと言で、実は日本中を騒がせたある試合を思い出しました。


1992年8月16日、甲子園2回戦で星稜高校と明徳義塾が対戦。

この日、星稜高校の松井秀喜選手は5打席連続の敬遠をされて、日本中の話題をさらって行きましたね。
そんな手段を用いて勝利を掴んだ明徳ナインには、甲子園の観客のみならず日本中のマスコミと野球解説者が猛バッシング。
それが高校生のやる事かっ!
正々堂々と勝負しろっ!

いやいやいや。
高校生だからこその戦い方なんです。
そして正々堂々と勝負しています。

この試合をテレビで観戦していた自分は、最終回に松井が敬遠された時には鳥肌が立ったのを覚えています。
実はそれだけ凄い事を明徳バッテリーはしていたのですが、日本中の野球関係者が誰一人としてこの凄さに気付かなかったのは本当に不思議でした。

星稜の松井が敬遠される事は予想していたのですが、この試合で最初に明徳の投手河野の凄さに気付いたのは5回の星稜の攻撃。
この日3打席目の松井を迎えた状況は、1対3の2点ビハインドで一死1塁。
本来であれば、二死にしてでも走者を二塁に送るか、ダブルプレー覚悟で勝負をさせるか攻撃側が悩む場面です。

ところが明徳バッテリー、事もあろうか松井をあっさり敬遠。
星稜からすれば棚からぼた餅のような状況を提供されます。
ところが星稜5番の月岩はあっさりと凡退。
6番の福角のタイムリーで1点差に詰め寄りますが、この試合で星稜が取った最後の得点になりました。

そして伝説となった打席を迎えます。
最終回、二死三塁で松井を迎えた明徳バッテリー。
いくら何でもここは勝負するだろうと思っていました。

ところが明徳バッテリーはここでもあっさりと松井を敬遠。
伝説の5打席連続敬遠が行われたんです。

僕は河野が松井と勝負しても、松井は簡単に打てなかったと思います。
その理由はこの後に書きますが、この試合河野はただの1球も投球ミスをしていませんでしたし、捕手の青木も星稜の打者の全データが頭に入っていたと思います。

最終回は1点差で明徳がリード。
二死ながら星稜は同点のチャンス。
ワンヒット、もしくはエラー、パスボールでも同点となるシチュエーションです。

野球のセオリーから言えば、守備側は同点は仕方が無い、ただし絶対に逆転の走者は出したくない筈。
それをあっさりと松井を敬遠、しかもノーマークで二塁への盗塁まで許しているんです。

今にして思えば、あの松井の盗塁も捕手が投げれば松井を刺せたかも知れないですね。
けれども捕手の青木は二塁にボールを送りませんでした。
このバッテリーは心のどこかで松井にすまないと思っていたのかも知れません。

でも、松井を敬遠した時から、こうなる事はバッテリーは解っていた筈です。
たった1球のコントロールミスで、今度は同点どころか逆転を許して試合が終わる事を。
そして、それは自分達の高校野球が終わる事を意味します。

結果は5番の月岩をサードゴロに打ち取ってゲームセット。
この時の甲子園の罵声たるや聞くに絶えられないものがありました。

全てを計算した上で冷静に試合を進めた明徳義塾。
対する松井の後ろで明徳対策が出来ていなかった星稜。
勝負の明暗はここで別れたと思います。

あの罵声の中で最後まで投げぬいた河野、青木のバッテリー。
恐ろしいほどのメンタルと、それを裏付ける技術の持ち主でした。

もしも自分がプロ野球の監督だったなら、間違いなく河野をその年のドラフト1位に指名したと思います。



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