俺、俳人っつっても許されなかったよ(筆・觜川おん)

君、変わってるね ②

 皆美容院って行くじゃない?行かない?行くでしょ?今は俺、決まった所に通っているんだけど、行き付けってやつ?へっ。んで、その前は何処に行っていたのっていう話なんだけれども、転転としてたんだよね。ジュクハラとかギロッポン、ブヤシーとか、タンダゴ等々、タンダゴって何やねん。とにかく様々な美容院の様々な姉ちゃんに髪、お願いしていたんだけど、俺、美容院に行くと、或る癖が発動しちゃうって云うか、それは何かと言うと、シャンプー、あるでしょ。あのマッサージ・チェアーみたいな大仰な椅子に坐らされて、背凭れイズバック。何や顔面に四角形の紙きれ乗せられて不謹慎ながらに云うと「わしゃ、死人か」みたいなやっつ。ほいではじめてシャンプーが可能になるらしいのだけど、あれおもろない?シュール過ぎない?あっ、シュールってのはシュールレアリスムの事ね。その余りの異様さ奇異さに、そのような状態に自分が陥った時、はっきりいって小生は耐えられなかったね。気が付いたら、拙者はうっきっきっ若しくはうっひゃっひゃなどと阿呆の如く莫迦の如く、それは又雌をまえに発情しきった猿の如く笑ってたってモンさ。モンキーさ。もう止まらなかった。

 そのように猿化した挙げ句、話にならんわと俺はいつも髪を切れずに店を出る。そんな具合なので、結果何時も帰宅してから自身で自身の髪を切る羽目に為り、その日一日は笑いが止まらない状態であるからして手が震え、ハサミーが震え、そういう訳で俺はいつも珍妙な髪形をして居る。そうそう、何故そんな小生が今行き付けている美容院に行き付けているのかと云うと、そちらの美容師がこれ優秀で、毎度俺がシャンプーのタイミングで破滅する事を存じ上げておられるので、俺をあの大仰な椅子に坐らせて、背凭れをバック、顔面に例の紙片を乗せると迅速に更には無言で出入り口迄移動、ドアーを開いて待っていて呉れるからで、是れによって俺は笑い始めてから最短時間最短距離で店を出る事が出来、面映ゆい思いをせずに済むからで、毎度店を出る際ドアー付近でそのような敏腕な姉ちゃんに謂われる事が在って。「君、変わってるね」

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