tea bowl blues

益子の陶芸家、太田幸博
のやきものとbluesのある日

ツーやん(成井恒雄)作品 マイコレクション(8)

2021-04-09 11:32:25 | Weblog

白泥文皿(制作年不明)

最後に、とても思い出深い一枚。

黄土を掛けた上に、白泥で文様をつけた中皿です。

ツーやんは、みんなで集まって話す事が好きで、毎週のように夜、

誰かの家に一品料理を持ち寄っては、いろんな話をしました。

私の住んでいた一軒家のアパートでも度々、宴会がありました。

ある時、ツーやんはこの皿に、奥さんのみさ子さんの料理を盛ってやってきました。

重いと定評があった成井系の器の中で、とても薄作りでロクロの挽き具合などは、

修行中、何度も練習していたお手本のような皿でした。

「俺が昔、作った皿なんだよ。返さなくていいよ。」と言って

そのまま私の家に置いて帰りました.

昔っていつ頃なのか。私が弟子入りした1982年当時、ツーやんは43歳だったので

たぶん30代頃の作品なのかと思います。

文様は、刷毛目で使う使い古しの帚の先をバラした筆で、自分の3室の登り窯を

描いたんじゃないかと思います。

今では素朴な皿ですが、当時の民芸ブームでは味わいのあるもので、

販売を意識して、ある程度の枚数を制作したのでしょう。

私は、1985年に独立しますが、初窯でこの皿をお手本にした板皿を焼きました。

板皿はツーやんは、あまり制作しませんでしたが、成井窯一番弟子の先輩、

能登美登利さんに作り方を教わり制作しました。

先輩の能登さんと、若くして亡くなった矢口参平さんは、とても後輩の面倒見がよく、

独立まで、いろいろアドバイスをいただきました。

自分は、後輩に同じ様な事が出来た記憶が無いので、まだ恩返し出来ず申し訳なく思っています。

1985年の秋の陶器市で、益子陶芸村に初出店した時、一番最初にこの皿が売れました。

買ってくれたのは、佐野の恩田さんという方で、皿を全部購入してもらい

とてもうれしかったです。

恩田さんは、その後、「陶器 藪」というギャラリーを開き

そこで個展をやらせていただいたり、ずいぶん長い間お世話になりました。

私に陶芸家として、これからやっていく自信を与えてくれた思い出深い皿です。

 

 



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