これはまだ中の人の母が元気で認知症もなく、普通に出かけたりしていた2015年ごろのお話です。
「ちょっと出かけてくるから」
母がそう言って、外出する準備を始めた休日の昼下がり。
「どこ行くの?」
私がそう聞くと、近所のスーパーに行くという。
買い物ならば、ほんの少し前に私が車で連れて行って、済ましてきたばかりであるのだけれども、買い物に行くわけではないらしい。
なんでもそのスーパーの中にある休憩所で、友達と会う約束をしているそうで、そこでコーヒを飲んだり、買ってきたドーナッツを食べながら話をするのだそうである。
そんな語らいの場に、6〜7人の老人が常に集まってくるのだという。
おやつやら漬け物やら、大根などを交換し、着なくなった衣類の交換もしているらしい。
スーパーにとってはいい迷惑だろう。
「80歳のお姉さん(母は70なので)は良く男の人に声をかけて、投げキッスとかしているの。だから他の店で出入り禁止になって、いまの店に流れてきたのよ。男好き見たいなんだけど、ちょっと痴呆が入っているから本気で声をかけているのを見たりするとちょっと怖いわね。着る物も派手だし、化粧も凄く濃いの。私と仲のいい人は、未亡人なのね。一人暮らしだから暇みたいで、最初はその人と二人だけだったんだけど、いつの間にか増えたの。その人は糖尿だから自分じゃ食べられないからって私にいつもお菓子を買ってきてくれるんだけど、私もいつも買ってもらってばかりじゃ悪いと思って珍味なんかを買っていくと、出すんじゃないよ、しまいなさいってちっとも受け取ってくれないのよ。糖尿だからというのもあるんだろうけど」
なかなか濃いメンバーであると思う。
しかし、まだまだ上がいる。
「もとヤクザだったっていうお爺さんがいるんだけど、アル中なのね。だけど本人はまったく飲まないっていうんだけど、いちど現れるなり酔っぱらっていて、他のお爺さんをいきなり持っていた杖で殴り始めたりしたの。金貸しをしているらしいんだけど、アレは悪い男だわ。殴られていたお爺さんは実は段持ちなのね。空手とか柔道とか。だから手を出すと傷害罪になるからって、いっさい手を出していなかったけどね」
私は心の中で避けろよと思ったが、それは言わなかった。
何が面白いのか解らないが、不良中学生が夜中のコンビニの前に集まるようなものかと思った。
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