昔々、ある村に「出し入れする小指」という不思議な名前の若者が住んでいました。
彼は両親と共に暮らし、穏やかな日々を送っていましたが、ある日突然、父親が勤め先を解雇されてしまいました。
家計は逼迫し、若者は家族を支えるため、村を去り新たなる道を模索することになりました。
### 旅立ちの決意
若者は出し入れする小指を握りしめ、村を後にしました。
しばらく歩くと、森の奥深くに小さな家がありました。
その家に住む老人が若者を見つけ、声を掛けてきました。
「君は困っている姿から、家族を助けるために旅に出たのだろう」と言いました。
若者はその老人に導かれ、家の中で本物の小指を見つけました。
「この小指は、使う度に幸せが訪れる力を持っている」と言われました。
### 小指の力
若者はそれを信じ、小指を握った瞬間、不思議な力が宿るのを感じました。
最初の町では、小指の力を借りて飲食店で働き、人々に笑顔を届けました。
続いて訪れた村では、小指を使って音楽を奏で、心温まる演奏を披露しました。どこへ行くにも、小指は彼の優秀さを引き立たせ、人々を魅了する存在となっていました。
### 困難の訪れ
しかし、ある日突然、村に恐ろしい災厄が訪れました。
急激な台風が襲来し、家屋や畑が壊滅的な被害を受けました。
村人たちは絶望し、これ以上どうしたらいいのか分からない状況に立ち至りました。
若者も、小指の力ではどうすることもできない無力さを痛感しました。
### 再生への一歩
そんな中、若者は気づきました。
小指の力は人々の心を豊かにし、笑顔を差し出すことにあるのだと。
彼は小指を握りしめると、再び行動を起こしました。
村の復興に協力し、仲間たちと力を合わせて荒廃した場所を再建し始めたのです。
そして、人々が希望を取り戻す手助けをすることが、小指の真の力だと知ったのです。
### 希望の種
数ヵ月後、村は元の活気を取り戻し始めました。
若者と仲間たちの尽力により、新たな家屋や畑が生まれ、再び笑顔が溢れるようになりました。
人々は若者を称え、「出し入れする小指」の名は、希望の象徴として語り継がれるようになりました。
### 絆を大切にする
「出し入れする小指」という寓話は、困難に直面した時に自分自身の持つ力を信じ、人々との絆を大切にすることの大切さを教えてくれます。
小指の力は、他者の幸せや未来を創るために使われるべきであり、自分だけの幸せだけを求めることではないことを示唆しています。
押利鰤子からの寓話「出し入れする小指」でした。
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