看取り-最後の瞬間

▪️人生最後の瞬間に立ち会うということ

つい数時間前、私はある特別な「人生最後の瞬間」に立ち会いました。

これまで、何度か看取りの場に居合わせる経験をしてきましたが、やはり毎回その瞬間は心に深く刻まれるものです。

今回は、その「最後の瞬間」を見守ることの意味、そして看取りについて少しお話しさせていただければと思います。

 大勢の親族に囲まれながら迎える最後

人は誰しも、いつか自分の最後の時を迎えます。

その時をどのように迎えたいか、考えたことはありますか？

ある人は静かに一人で、ある人は愛する家族に囲まれて穏やかにと願うでしょう。

今回私が立ち会った最後の瞬間は、まさに「大勢の親族に囲まれながら迎える最後」でした。

お孫さんや息子さん、娘さんが集まり、誰もがその場で故人の最期を見守っていたのです。

家族に囲まれたその姿は、悲しみだけでなく、どこか温かいものでした。

親族がそれぞれに寄り添い、笑いながら昔話をしながら食事をし、そして時折涙を浮かべながら見つめていました。

その瞬間、彼女がどれだけ愛され、そして彼女自身が周りにどれだけの愛を与えてきたかが伝わってきました。

「看取り」という行為は、決して暗く、悲しいだけのものではないと感じました。

それは、故人とその家族が繋がる時間であり、思い出や感謝の気持ちを再確認する時間でもあるのです。

▪️呼吸が止まる瞬間――時が止まる感覚

そして、ついにその瞬間が訪れました。

息が浅くなり、呼吸が徐々に途絶えていくその様子を見守る時間は、いつも不思議な感覚を伴います。

あまりにも静かで、まるで時間が止まってしまったかのようです。

呼吸が止まる瞬間、その場にいる全員が息をのみ、空気が変わったことを感じ取ります。

心拍が消え、呼吸が完全に途絶えた時、そこにいる全員がそれを理解します。

これが「人生の最後」なのだと。

あの時、誰もが何も言わず、ただその静寂の中に身を任せていました。

私は何度もこの瞬間に立ち会ってきましたが、毎回同じように胸が締め付けられる思いをします。

それは悲しみというよりも、生命が途絶える瞬間に対する畏怖や尊敬の念に近いかもしれません。

人が生きて、そして亡くなる。その当たり前のことが、あまりにも大きく、そして尊いものであると感じさせられます。

▪️ エンゼルケア――最後のお別れの準備

呼吸が止まり、家族が少しずつその事実を受け入れる中、次に行われるのが「エンゼルケア」です。

　エンゼルケアとは、故人を清め、最後の身だしなみを整えるためのケアのことです。

家族様に着替える服を選定していただき、着替えを行う。

この作業には、ただの医療行為や清潔保持という以上の意味が込められています。

エンゼルケアを行う際、故人の体を清拭し、髪を整え、顔や手足を清めます。

この過程は、故人を敬い、送り出すための重要な儀式のようなものです。

家族にとっては、このケアが完了した後に初めて本当に「お別れ」を実感する瞬間が訪れるのかもしれません。

つい数時間前に行ったエンゼルケアの時も、故人の顔を清めながらその人の人生を感じ取りました。

清拭の最中、家族がそっと手を触れ、「ありがとう」とつぶやく姿が印象的でした。

エンゼルケアは、単なるケアではなく、故人との最後の触れ合い、そして最後の感謝を込めた瞬間でもあるのです。

見送り――最後の別れ

エンゼルケアが終わると、次は見送りの準備です。

ストレッチャーに故人を移乗し、葬儀場に送り出します。

この見送りの儀式は、家族が故人との別れを受け入れるための大切なプロセスです。

悲しみの中にも、感謝の気持ちが込められた温かい時間でもあります。

私はいつも思います。

見送りの場は、故人の人生がどれだけ周囲の人々に影響を与えたかを再確認する瞬間であると。

家族が集まり、涙を流し、笑顔で思い出を語るその時間こそ、故人がどれだけ愛されてきたかの証です。

今回の見送りも、故人を愛する多くの家族や友人が集まっていました。

誰もがその人のことを思い、そして最後の別れを告げました。

その時感じたのは、見送りの時間が単なる別れの儀式ではなく、故人との繋がりを再確認し、心の中にその存在を刻む大切な時間であるということです。

つい数時間前に経験した「看取り」

つい数時間前に、その看取りの瞬間に立ち会ったことで、私は改めて「看取り」という行為が持つ意味について考えさせられました。

人は誰しも、いずれその最後の時を迎えます。

それがいつで、どのような形であるかは分かりませんが、その瞬間に寄り添うことは、私たちが持つ最も大切な役割の一つかもしれません。

看取りに立ち会うということは、単なる「死」を見届けるだけではありません。

それは、故人の人生全てを受け入れ、その人が生きてきた証を尊重することです。

そして、故人との思い出や繋がりを通じて、自分自身がこれからどのように生きていくのかを問いかける時間でもあるのです。

私が看取りの場に立ち会う度に感じることは、「生きること」と「死ぬこと」の境界線がどこか曖昧であるということです。

死は決して終わりではなく、その人の生きてきた痕跡や思い出が、周囲の人々の中に生き続けるということ。

今回の看取りの場でも、家族が故人を愛し、思い出を語り合う姿を見て、彼女がこれからも家族の心の中で生き続けることを強く感じました。

### 看取りと人生の終わり

人生の最後の瞬間にどう向き合うかは、人それぞれです。家族に囲まれて穏やかに迎えることを望む人もいれば、静かに一人でその時を迎えたいという人もいるでしょう。

大切なのは、その瞬間に何を感じ、どう受け入れるかということです。

看取りの場に立ち会うことで、私たちは自分自身の「生き方」についても考えることが求められます。

人生は短く、そしていつか終わりがやってきます。

その時、周りに愛され、大切な人々に見守られながらその瞬間を迎えられるかどうか。

それは、日々の生き方にかかっているのかもしれません。

今回の看取りを通じて、私は改めて人生の最期をどう迎えたいか、そしてその時にどう寄り添いたいかを深く考えることができました。

看取りは単なる別れではなく、人生そのものを受け入れ、愛し、感謝するための大切な時間なのです。

人生最後の瞬間、あなたは誰に囲まれて、どんな思いでその時を迎えたいですか？