こんな夢を見た。
私は二度目の高校生活を送っていた。
二十年以上前に卒業した母校に返り咲いたわけなのだけれど、二十年以上経ったところで生来の性格が変わると言うわけでもなく、私は教室の自分の机に突っ伏しながら一人で音楽をスマホで聞いている。
高校生活も残りわずかだと言うのに、この先は何も決まっていない。
大学に進学する頭も金も無ければ、就職も45歳となると厳しいのだ。
人生に漠然とした不安を感じながらも、先のことは考えても仕方がないので、全てを先送りにする事にする。
どうにもならない事は考えたところでどうにもならない。
どうにかなる事は何もしなくてもどうにかなるのだ。
放課後になり、所属しているラグビー部の練習に出る。
既に引退している身ではあるが、部員が足りないのと、自分の将来が何も決まっていないので時間潰しだ。
グラウンドには積雪1メートルの雪が積もっているのでひたすらストレッチと基礎練習である。
45歳の老体に鞭打ち、血圧と血糖値の高さを抑える為のダイエットでもある。
「押利くん、サボっちゃダメよ」
息切れを起こし、地べたに這いつくばっている私ににこやかに言ったのは、マネジャーの桃子だった。
彼女も二度目の高校生活を送る、あの菊池桃子である。
歳は私より年上の筈だが、彼女は16歳の姿を保っている。
どこの誰だろうと、その笑顔に恋をせずにいられようか。
部活の練習も終わり、学校を出る。
校門の前にバス停があるのだが、他のバス停を探すと近い所でも数キロ先と言う辺境であるために、生徒達で溢れいる。
これはバスが来た所で乗れるのか?と言う有様に呆然としていると、桃子さんが僕の防寒着の裾を取り、隣のバス停まで歩こうと言う。
日が暮れて暗くなり、国道の街灯の明かりが照らすだけの雪道を二人で歩く。
彼女は高校卒業後の進路について夢と希望に溢れた笑顔で語っていた。
「押利くんはどうするの?」
私は何も答えられなくて、そんな私を見た彼女は少し悲しそうな顔をした。
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