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黒の国のエディア➊

2024-07-05 00:21:00 | 短編小説


黒と白の世界、魔法の国「クロ」。
この国の隅にある小さな村、カサバ村で、無口な10歳の魔女エディア・クロックは姉のシヴィーとともに暮らしていた。
エディアは、8年前の「第六次魔族大戦」で両親を亡くし、それ以来、姉シヴィーが母親代わりだった。

シヴィーは17歳。
村の男たちのマドンナであり、おっとりとした性格で常に笑顔を絶やさない。
その容姿端麗さと優しさから、村人たちからも慕われている。
一方、エディアは無口で感情をあまり表に出さないが、心の奥底には姉への深い愛情と村の人々への優しさがあふれていた。

ある日、エディアは村の市場に出かけるシヴィーに付き添っていた。
市場には様々なものが売られているが、そのすべてが黒と白のコントラストで彩られている。
エディアは無表情で周囲を見渡しながら、姉の後ろをついていった。

市場の中央にある大きな木の下で、村の老人、グレゴールがいつものように座っていた。
彼はエディアを見ると、にこやかに手招きした。

「エディア、こちらにおいで。今日は新しい魔法を教えてあげよう」

エディアは無言でグレゴールの前に座り、その目をじっと見つめた。
グレゴールは笑みを浮かべ、エディアに向かって言った。

「今日教える魔法は、心の温かさを伝える魔法だ。君の心の中にある愛情を、周りの人たちに伝えることができるんだ。」

エディアはゆっくりと頷き、グレゴールの言葉を胸に刻みつけた。
その夜、エディアはシヴィーと一緒に夕食をとっていた。
シヴィーはエディアに向かって微笑みかけ、言った。

「エディア、今日は市場で何か楽しいことがあったの?」

エディアは少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。

「……グレゴールおじいさんが、新しい魔法を教えてくれた」

シヴィーは驚いた表情を浮かべた。
エディアが自分から話すのは珍しいことだった。

「どんな魔法だったの?」

「……心の温かさを伝える魔法」

その言葉を聞いたシヴィーは、エディアを優しく抱きしめた。エディアは一瞬戸惑ったが、姉の温もりを感じると、自分の心も温かくなっていくのを感じた。

翌日、エディアはカサバ村の広場に立ち、両手を広げて魔法の杖を掲げた。

村の人々が興味津々で見守る中、エディアはグレゴールから教わった魔法の呪文を唱えた。

「スパークル」

その瞬間、エディアの周りに小さな光の粒が舞い上がり、村人たちの心に温かい感情が伝わっていく。
村の人々は次々と笑顔になり、エディアの心の温かさを感じ取った。

エディアは無表情のままだったが、その心の中には深い満足感と喜びが広がっていた。
シヴィーもまた、妹の成長を感じ、誇らしげに見守っていた。

こうして、カサバ村ではエディアの魔法によって、人々の心がますます温かくなっていった。
エディアとシヴィーの姉妹の絆も一層深まり、村全体が一つの家族のような温かさに包まれていった。

エディアの無口な日常は続くが、その心の中にはいつも姉や村の人々への愛情があふれていた。
そして、その愛情を魔法を通じて伝えることで、カサバ村はさらにハートフルな場所となっていくのだった。


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