安部首相は止む終えない場合に限り、集団的自衛権が行使できるように憲法9条の解釈を変更すべきだと述べました。武力行使を回避するための政治的努力を棚上げし、「止む終えない」という言葉で国民の生命を危険に曝してもいいのでしょうか。わが国を滅亡の危機に陥れた太平洋戦争も自衛のために止む終えず始めた戦争でした。日露戦争で獲得した利権を守ろうとしたわが国は、東南アジアを植民地支配する欧米と利害が対立しました。理不尽な経済制裁によって行き場を失ったわが国は、アジアを開放するという大義名分の下、戦争に活路を見出そうとしました。東京裁判で判事を務めたインド人パルは、わが国に戦争を決断させた有名なハル・ノ―トを引き合いに出し、「こんな通牒を受け取ったら、モナコ王国やルクセンブルグ大公国でさえも合衆国に対し鉾をとって立ち上がったであろう」と述べ、「真珠湾攻撃は止む終えずついにその運命の措置をとるにいたった」と結論し、わが国を弁護しました。このパル判決は一部の歴史家にとって太平洋戦争が自衛のための戦争であったことを正当化する拠り所になっています。しかし、真に国民の生命と財産を守るのであれば、国家に止む終えないという理由で戦争を始めさせてはならないのです。武力行使が止む終えない状況においてさえ、戦争に踏み出させないように国家を縛る憲法が必要なのです。武力以外の解決策は必ず見つかるはずです。国際紛争を武力で解決することを禁じた憲法9条を貫き通すことこそが最善の安全保障であり、わが国が国際社会で果たす役割です。