安部政権は『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』

私たち動物細胞の中には約2,000個のミトコンドリアが住んでいます。ミトコンドリアは１ミクロンほどの細菌と同じ大きさで、酸素を利用して細胞にエネルギーを提供しています。人間の体は約６０兆個の細胞からできていますが、私たちが健康で暮らしていけるのはミトコンドリアのお陰でそれらの細胞が正しく機能しているからです。

国家という細胞に暮らす国民はミトコンドリアの立場とよく似ています。国民には納税する義務があり、国家には国民の生命と財産を守る義務があるように、細胞とミトコンドリアとの間にも互恵的関係が成立しています。ミトコンドリアはＡＴＰという細胞内エネルギー通貨を生みだして細胞の活動を支える代わりに、細胞はミトコンドリアが安心して暮らせる環境を提供しています。

近年、医学の進歩とともに、よくない生活習慣がミトコンドリアの活力を低下させ、これが病気と深く関わっていることがわかってきました。細胞の中のしくみはとても民主的です。ミトコンドリアは細胞が傍若無人な振る舞いをしないように見張り、必要な場合にはアポトーシスという細胞を死に至らしめる権利を有しています。このアポト―シスという細胞死の形態は細胞の自殺とも呼ばれています。老朽化し、役に立たない細胞が他の細胞に迷惑をかけないしくみです。ガン細胞が自然に消滅するのもミトコンドリアが発するアポトーシスのお陰です。ミトコンドリアは自らの細胞が悪性化したことを認識し、自殺させます。よくない生活習慣によって、こういった民主的なしくみが崩れた時に人は病気になるのです。わが国では多くの人が高血圧、糖尿病、心臓病、ガンといった病気を抱えています。その原因の大部分はミトコンドリアの声を無視した私たちの生活習慣にあるのです。

わが国は成熟した社会が患った生活習慣病とも言える数々の政治的、経済的問題に直面しています。そんな中、安部政権は国民が政策の評価に戸惑っている段階での総選挙を決めました。近い将来、国民の手によってアポトーシスの審判が下されることを恐れたのでしょう。悪性化が露見する前に手を打って生き延びようとするガン細胞特有の狡猾な政治姿勢が透けて見えます。来年は国民の生命や財産を脅かす法案の成立や政策の実施が目白押しです。私たちは総選挙によって時の政権に対してアポトーシスを発する権利を有しています。安部総理が長期政権を目指したいならば、ミトコンドリアの声に真摯に耳を傾け、原発再稼働、特定秘密保護、集団的自衛権、消費税増税などの重要課題に取り組んでいかなければなりません。

このブログは風詠社出版の拙著『長生きしたければミトコンドリアの声を聞け』の一部を抜粋、編集したものです。小著では少子高齢化社会を生き抜く真のサクセスフル・エイジングとは何かをテーマに、健康長寿を目指す「人」と「社会」に向けてミトコンドリアの立場と視点からメッセージを送っています。私たちはミトコンドリアの声に真摯に耳を傾け、幸福な少子高齢社会への道を歩んでいかなければなりません。それこそが、ミトコンドリアがリードした生命進化の頂点に君臨する人類の責務であると思うのです。