HITO-OMOI(ひとおもい)

ひとを、ひととき、ひとへに想ふ短歌がメインのブログです。作歌歴約二十年、かつては相聞(恋歌)、現在は専ら雜詠です。

4368首目・・・明治のベストセラー小説を読む⑥(樋口一葉の『一葉全集』)

2021-09-22 00:00:00 | 日記

「樋口一葉」

生年明治5年(1872年)、没年明治29年(1896年)、没年齢24歳
『一葉全集』(作品集)
明治30年(1897年)、没後


明治以降の小説家で薄幸・夭折といえば、まず名が挙がる樋口一葉。「貧困」と「悲恋」を書いた作家。実質的な「職業女流作家第一号」。没後に出版された『一葉全集』(画像)が、ベストセラーに。


評論を幾つか読むと一葉には、「奇跡の十四か月」があるとのこと。『大つごもり』が書かれた明治27年12月以降を指すようだ。この間の作物は、小説が10、随筆が1。(もとより作家生活も短かい一葉だから、小説は全部で22本きり。)

「奇跡」を具に感じるには、凡作時代も知るべきだろうし、一葉は日記が素晴らしいとの評論も多くある。だがま、奇跡の小説に限定して読むことにする。


『大つごもり』と『十三夜』が大関級(?)、『たけくらべ』と『にごりえ』が横綱級(?)と考えて、概ね間違いではないだろう。

『大つごもり』は、家族の幸せのために自己犠牲を強いられる女性の境遇が書かれていて息苦しくなるほどだが、結末にほっとする。でも、『十三夜』のお関と録之助の邂逅の仕方と余韻ある別れかたは格別で、東の大関は、『十三夜』だ。


どうも以前から「廓」を扱った作物は苦手である。しかし、『にごりえ』は歌舞伎の世話物の世界。陰影のくっきりした完成度の高い作物だ。かたや、『たけくらべ』は色んな読みがあろうが、一級の「青春小説」だと思う。常套句だけど、甘酸っぱくもあり、ほろ苦くもある。一葉が時間をかけて書いた作物であることに頷く。東の横綱は、『たけくらべ』だ。


残りの六作のうちでは、『わかれ道』(明治29年1月)が味わい深かった。吉三の悲しさとお京の哀しみをさらりと書いているのがいい。また、『ゆく雲』(明治28年5月)は、約束する、とぎれる、あきらめる、忘れるという縫と桂治の関係を手紙で表していて巧みだ。


(文語で作歌しているので、)文語体はともかくとして、句読点が少ないため、文意をとるのにちと難渋した。



「他人には明かさざれども及ばざるこころの丈ぞかくも悔しき(新作)」
~樋口一葉『たけくらべ』より~

不尽


苦労ついでに、明治の文豪として、読み残している幸田露伴にトライしてみよう。



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