お気楽ナチュラリスト

都内に住んでも心はナチュラリスト。
週末は山と川で遊びたい。

極上の睡眠を求めて

2022年07月05日 | 登山
齢のせいか、体力低下のせいか、はたまた人生を達観してきたせいか、最近ピークにこだわらない山旅が増えつつある。
特にテント泊ともなると、その傾向は顕著だ。
「せっかくそこまで行ったのなら、なんであの山に行かないの?」と奇異の目にさらされることは承知の上である。

出発前夜にそそくさとパッキング。
装備リストなんて作ってないが、いつも持っていくものは決まっているので、自動的に体が動く。


今回の山行は、栂池から白馬乗鞍岳を越えて、白馬大池でテント泊。
ついでに、小蓮華山に行っても行かなくてもいいか、というゆるい計画。
結論を先に言ってしまうと、小蓮華山には行かなかった。(笑)


自宅から栂池高原までは、ざっと280kmくらい。
250kmを超えるドライブになると、ちょっと気合がいる。
夜中の2時半に自宅を出て、栂池の駐車場には7時00分に到着。
駐車場は、一日500円なので、二日分の1000円を支払った。



駐車場のすぐ脇がゴンドラ駅。
ここからゴンドラ+ロープウェイという文明の利器をフル活用して、標高1829mまでアプローチする。
チケット代は往復で3380円。
事前情報では、チケットは登山届を提出しないと購入できないシステムだと聞いていたのだが、そんなことは全くなく、券売機であっさり買えた。





ゴンドラからは残雪を抱いた白馬連峰が見目麗しい。
鉄塔26番~27番の間がシャッターチャンスですぞ。



ゴンドラ山頂駅からロープウェイ駅まで歩いて2~3分程度。
そこから20分間隔で運行されているロープウェイに乗る。
乗車時間は5分間。





ロープウェイ終点駅から舗装された道を5分くらい登ると、大きな山小屋が見えてきた。
栂池山荘、栂池ヒュッテ、そして栂池自然園ビジターセンターだ。
きれいなトイレもあるので、ここで身支度を整える。
水も汲める。







9時スタート。
登山道はビジターセンターの脇から入っていく。
すでに夏の太陽がギラギラしている。
歩き始めて1分で汗が出てきた。



予想はしていたが、最初はクマザサがうっそうと茂り、崩れかかった木の階段をまたぎ、少々じめっとして池のようなニオイのする登山道をえっちらおっちら登っていく。
石もゴロゴロしているので、歩きにくい。
少し開けたところから眼下を眺めると、まだ栂池山荘が見えている。
大して登っていないことを知り、精神が削られる。



滝のように肉汁をほとばしらせ、久々のテント泊装備で吐きそうになる。
途中で何か所か雪田を横切るのが、ちょっとしたオアシスだ。
帽子の中に雪を詰め込み、クールダウンさせる。
雪がなかったら、間違いなく熱中症レベルに達していたと思う。





やや傾斜が緩んできたところで、高層湿地が現れた。
天狗原の一角に差し掛かったようだ。



やがて木道が現れ、天狗原が近いことを悟る。
高山植物の可憐な花たちに目をやる余裕も出てきた。
目の前がパッと開けると、天狗原だ。
正面の雪渓を登っている人の姿が見える。



ここで10分ほど休憩。
パックドリンクで水分と塩分を補給した。
もう疲れ果てていて、ここにテントを張って寝たい衝動に駆られる。


天狗原は、思っていたより何倍も素晴らしいところだった。
凛と咲く高山植物たちと夏空を映しこむ池塘。
水芭蕉もジャストタイミングだった。





木道の分岐を左へ進むと雪渓の末端に出る。
ここでチェーンアイゼンを装着した。
周りの登山者を見ていると、12本爪アイゼン+ピッケル+ヘルメットの完全装備だ。
中には、アイゼン無し+ストック無し+半ズボンという強者(?)もいた。
軽アイゼンのハイカーは、下山に不安を感じ、引き返してしまった。



まあまあな斜度の雪渓である。
少なくとも白馬大雪渓よりは、きつい斜面だ。
フィックスロープも張られていた。



フラットフッティングがしっかりできれば、チェーンアイゼンで問題なく行ける雪渓だった。

雪渓上部でノーアイゼンの若いカップルが写真撮影をしていたところ、女性の方がスリップしてしまい、そのまま50~60mくらい滑落し灌木で止まった。
ケガはなさそうだったが、スマホを落としたと騒いでいた。
インスタ映えもほどほどにしておいた方がいい。


雪渓が終わってひと登りすると、広大なハイマツの台地に飛び出す。
遠くに白馬乗鞍岳の山頂を示す大ケルンが見えた。
ここからはもうニヤケるだけの道である。
顔の周りをぶんぶん飛び回るメマトイは少々やっかいなものの、そんな鬱陶しさよりロケーションの素晴らしさが勝っている。



12時5分、白馬乗鞍岳山頂(2469m)到着。
コースタイムより少し時間がかかった。
まあ、休憩しながらのんびり来たから当然のこと。



ザックを下ろして大休止。
ゼリー飲料を飲み、手持ちの水分はほぼ無くなった。
こんなに暑いのなら、もっと水を持ってくればよかった。


ここから白馬大池まではハイマツの登山道をゆるゆると下っていくだけだ。
頂上台地の末端まで来ると、流氷のような氷が浮かぶ白馬大池が見えた。
感動的な美しさだ。
このルートは、変化に富んでいて本当に楽しい。





12時30分、白馬大池山荘に到着した。
まずは、水場にかぶりつき、乾ききったノドを潤す。
ここの水は、白馬大池の水を消毒したものとのことだが、塩素臭さは全く無い。
普通に美味しいアルプスの水であった。





落ち着いたところで、テントの受付へ。
コロナ禍により、ほとんどのテント場は要予約となっており、ここもそうであった。
6月中旬ごろにインターネットで予約したが、その時点で7月の週末はほぼ埋まっていた。
ちなみに、料金は1泊あたりテント1張1000円+1人2000円で、計3000円だ。
世の中なんでも値上げの大波がやってきているが、テントもしかり。
1泊3000円では、もはやテント泊はリーズナブルと言えなくなってきた。
1泊500円の時代が懐かしい。


テント指定地は、山荘の目の前。
これ以上ないというくらいフラットなテント場だ。
みんな行儀よく一列に並んで張っているので、私もその隙間にお邪魔した。





テントを張り終えて、昼飯代わりの行動食をモリモリ食べていたら、猛烈に眠くなってきた。
当初の予定では、このあと小蓮華山をピストンしてくる予定だったが、明朝行くことにして、昼寝を決め込んだ。
自分にしては珍しくぐっすり眠りこんでしまい、起きたら16時を過ぎていた。
白馬大池は最高の昼寝スポットである。


のそのそとテントから這い出すと、テントの数が増えていた。
数えたら36張あった。
予約は最大50張らしいので、まだ余裕はありそうだ。



池の近くをぶらぶらしたり、ぼーっと水面を眺めたり、花の写真を撮ったりしていたら、あっという間に17時。



周りのテントは夕食をつくり始めているので、それを見ていたらおなかが空いてきた。
今日の夕飯のメニューは、ドライカレーにレトルトカレー。
白飯のアルファ米を切らしていたことに出発前夜に気づいたため、こんなバカみたいなメニューになってしまった。



ぽつぽつと雨が落ちてきたので、テント内に移動。
雨といえば、昨年の権現岳の強烈な雷雨を思い出す。
今回は、断続的にぽつぽつと落ちてきただけで、雷が鳴らなかったのは幸いだった。

カレーは、いつどこで食べても旨い。
試しにドライカレーにカレーをつけて食べたら、カレーライスになった。あたりまえか。


雨上がりの雲の切れ間から、日没の幻想的な瞬間に遭遇した。
ああ、今日はいい一日だった。
昼寝もたっぷりできたし。



それにしても猛烈に眠い。
あまり眠らない自分にしては、こんなことは珍しい。
テント場の夜景を撮影する時間まで待てず、シュラフをかぶって爆睡した。



次に目を覚ましたのは明け方の4時。
10時間近く寝ていたことになる。
日頃の睡眠時間が3~4時間の自分。
老化現象でそれ以上眠れないのだ。
このテント場は、自分史上最高の熟睡を提供してくれた。
トイレから戻ってくると、朝日が山の斜面を照らし始めた。



長時間寝ていたにもかかわらず、というか寝すぎためと言った方が適切かもしれないが、ちょっと体がだるくなってしまい、結局、小蓮華山はやめておいた。
周囲のテントを見ても、自分と同じく何処へ行くでもなし、ブラブラとテントライフを楽しんでいる。
ここは極上の睡眠をむさぼりに来る場所だと結論付けた。


今朝の朝飯は、ラーメン。
具を準備するのをすっかり忘れており、素ラーメンになってしまった。
それでも十分うまい。





朝日でテントを乾かしながら、パッキングを進める。
今までいろんなテント場で過ごしてきたが、ここは文句なし上位ランクイン。
7時15分、再訪を誓って下山開始。





朝日を全身に浴び、メマトイの猛攻に耐えながら、白馬乗鞍岳まで30分かけて登り返す。



雪渓の下りは、雪がくさっていたのでやや足元が不安定だったものの、一歩一歩しっかり荷重をかけて爪を利かせれば、チェーンアイゼンでも問題なかった。
もちろん、12本爪とピッケルがあれば、より安心なのは言うまでもない。



天狗原まで戻ってくれば、あとは早い。
眼下に栂池山荘が見えてくれば、ゴールも近い。

一瞬、遠くでゴロゴロと雷鳴があり、ぽつぽつと雨が落ちてきた。
雷雨に巻き込まれたらマズイと思い、膝をかばいながら足早に下った。


9時35分、下山完了。
すでに雨はやんでおり、雷もあれきりどこかへ行ってしまった。
大事に至らなくて何よりだ。
あとは、文明の恩恵にあずかり、空中散歩を満喫して麓へ。
ゴンドラから白馬連峰を振り返ると、稜線は厚い雲に覆われていた。
小蓮華山には行かなくて正解だったかもしれない。



初めての栂池から白馬乗鞍岳、そして白馬大池のコースは、変化に富んだ美観の連続だった。
北アルプス屈指の名ルートと言っていいのではないだろうか。
登山ビギナーや私のような疲れた中年にこそ強くオススメしたい。
また、惰眠をむさぼりに来よう。

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2 コメント

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素晴らしい! (高崎)
2022-07-08 01:32:01
このテンバは白馬大池の畔なのでしようか、確かに素晴らしいロケーションですねえ!
僕がここにいたなら日がな一日ビールを飲りながら本を読んだり昼寝したりでしょうかねえ。
夕飯のカレ-の隣にビールがないけれど忘れちゃいました?
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お返事 (papachan)
2022-07-10 10:15:16
>高崎さん
こんにちは!
お察しのとおり、テント場は白馬大池のほとりにあります。
ちょっと北欧チックなロケーションで、大好きになりました。
この日は相当バテてしまいまして、ビールは控えておきました。
昔、同じような状況でビールを飲んだら、胃が痛くなってしまったことがありまして。
もう少し、体力をつけないとテント泊が年々厳しくなっていきそうです。
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