お気楽ナチュラリスト

都内に住んでも心はナチュラリスト。
週末は山と川で遊びたい。

開高健ゆかりの地を訪ねる釣り旅

2021年09月20日 | 釣り

関越自動車道・小出インターを下りて奥只見シルバーラインの細く長いトンネルを抜けると低く垂れこめた雲と霧雨の中にエメラルド色の水を満々とたたえた湖が見えてくる。
銀山湖だ。
ルアーフィッシング黎明期に開高健が大イワナと遊んだ地だ。
今シーズンの総仕上げとして、shinichiさんとここにやってきた。


shinichiさんとは1週間前にオンライン会議を行い、二万五千分の一地図を眺めながらあーだこーだと作戦を練った。
「サクラマスの遡上物をねらう!」
「開高健が釣ったイワナより大きいのを釣る!」
と夢が膨らむ会議だったが、希望が絶望に変わることをまだ知る由もなかった。


入渓点を探しながら車を流すが、先行者もいたりして、どこから始めるかなかなか決まらない。
とりあえず、インレットで魚のライズを見つけたので、そこからスタート。

一発目で掛かったらどうしよう?なんて甘い期待でにやにやしているが、これが全くの無反応。
仕方なく、上流を目指して釣り上がっていく。


対岸近くの流れ中に立つ枯木の向こうの流れが緩く、木々のカバーもあり、いかにも魚がついていそうだ。
一投目でいいところにルアーを送り込めた。
1回、2回、3回トゥイッチしたところで、ガツッと当たった。
アッと思った瞬間、ビューンと下流に走られ木立に絡まれラインブレイク。

一瞬のことだった。
魚の姿すら見ることができなかった。
ルアーも持って行かれた。


shinichiさんも苦労していた。
まったく魚の姿が見えない。
一度だけかなり大きいイワナが瀬をまたいでルアーを追ってきたが、それきりだった。


別の支流にも行ってみたが、ここでも魚が見えない。
shinichiさんが一度だけチェイスを確認したのみ。
私は全くいいところなしで玉砕。



獲物は、沢ガニだけだった。
失意の納竿。



この日の宿は、民宿樹湖里さんにお世話になった。
陽気なご主人と元気なおかみさんに迎えてもらった。



夕食はイワナの塩焼きや数々の山菜料理。
山の幸をこれでもかというほど味わった。



部屋でshinichiさんと改めて作戦会議。
明日入る場所をあれこれ模索する。
地図を見ていると、どこでも釣れそうな気がするのだが、それは気のせいなのである。



二日目は朝から快晴。
登山客は暗いうちに出発してしまったようで、朝食の席には我ら二人だけ。
新潟の美味しいごはんをおかわりして、大満足。



荒沢岳の清水をペットボトルに詰めて出発だ。
今日こそはなんとしても一匹釣りたい。



結論から言ってしまうと、この日もボウズであった。
イワナがうじゃうじゃいてもおかしくないような渓相なのだが、まったくの無反応。



もうすっかり心が折れてしまい、地図に載っている小径をたどって下山しようとしたが、これがなかなか見つからない。
ところどころ踏み跡があったり、枝沢を越えるところにロープがあったりするのだが、すぐに藪に阻まれてしまう。

おまけに急斜面を藪漕ぎしているときに、枝にロッドケースを持って行かれ、谷底にケースを落としてしまった。
これ以上進むのは無理と判断し、元に戻って谷通しに退渓することにした。


岩は登るよりも下る方が何倍も難しい。
慎重に岩をへつりながら、クライムダウンできないところは、釜に飛び込んで泳いだ。
日差しがあって、水もそれほど冷たくなかったのが幸いだ。

落としたロッドケースは、落ち込みに引っかかっている倒木の下でぷかぷか浮いていたのをshinichiさんが見つけた。
釜に飛び込み、泳いで無事回収できた。
もうはるか下流に流されたであろうと半分あきらめていた。
思いがけず再会できて、shinichiさんに感謝である。


二日間かけて、私がイワナの姿を目にしたのは、民宿の塩焼きとトンネルのレリーフだけだった。
パラダイスは、そんな簡単に見つからないことを思い知った。



銀山湖を後にする前に開高健の文学碑に立ちよった。
「河は眠らない」
今回は眠っていたようだが…。
それとも眠っていたのは我々か。



この文学碑は北ノ岐川にかかる石抱橋のすぐ脇に立っている。
この石抱橋から上流は永年禁漁区なのだ。
銀山湖とその自然に魅了された開高健は、イワナの保護のため尽力されたそうだ。



もう一つおまけといってはなんだが、話のネタとして「開高めし」を食べに行った。
開高めしは、開高健が長期逗留していた村杉小屋でふるまわれた料理とのこと。
いわゆる山菜チャーハンだが、開高健はとても気に入って、「これは商品になるぞ」と言ったとか。
今では魚沼名物になっている。

小出インターの近くにあるレストラン「モンブラン」さんでいただいた。
写真だと伝わりづらいが、普通盛りでご飯500gもある。
大盛りどころか山盛り。
なんとか食べきることができたが、注文するときはお腹の様子と相談するべし。
ちなみに半盛りメニューもあり、shinichiさんはそちらをいただいた。


シーズン総仕上げにと思って遠征したが、有終の美どころか手厳しい返り討ちにあってしまった。
どうしよう、このままでは終われなくなってしまった。

あと1回行けるかどうか。
ボウズでシーズン終了だけはご免こうむりたい。
追い込まれてきたぞ。

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2 コメント

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懐かしいです! (高崎)
2021-09-24 21:21:35
奥只見でしたか?
懐かしくてうずいてしまいます
釣れなくても、こんな大自然の中に身を置けるだけで幸せというものですよね~!
民宿を貸し切ってのんびりできただけで何年分の命の洗濯ができたことでしょう?
さぁ次は有終の美で、、、でもシーズンの終焉は来シーズンへの宿題を残すのが由緒正しき釣り師の終わり方かも、、、

僕は20代の頃、仲間4人で恋の岐川を途中まで遡行したことがありました。
岩魚は釣れたもののテンバの適地が見つからずに流れの前でタープを張って一晩中雨の恐怖におののいておりやした。
2回目は銀山平のキャンプ場に幕を張って、前を流れる小さな沢で7寸程度の岩魚が爆釣でした。
食堂で60~70センチの大岩魚の魚拓を何枚も眺めながら頂いた岩魚の刺身とお蕎麦の美味しかったこと。

店主に聞いたら大岩魚は銀山湖をトローリングするか、ボートで渡った沢で釣れるとのことでしたが
あれから30年以上もたった今はどうなのでしょうかね~?
papachanさんの写真をみたらまた訪ねたくなってしまいました。
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お返事 (papachan)
2021-09-26 15:36:03
>高崎さん
こんにちは!
たくさんコメントをいただきありがとうございます。
奥只見は、高崎さんの想いでの地だったのですね。
銀山湖は、いまでも大イワナがいるようですが、渓のイワナがだんだん魚影が薄くなっているのではないでしょうか。かなり奥まで突っ込んでいかないと、大釣りはできないみたいです。
思いつきで踏み込んで釣れるほど甘くはなかったです。
まあ、シーズン終盤は釣りという名の温泉慰安旅行になってしまうことが多いので、その点ではよい旅でした。
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