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a green hand

繋がる楽しみ

ここ数日、実に温かく気持ちの良い日が続いている。
強い霜の降りた後の縮れた紫陽花の葉を眺め、縁側(と呼ぶところはないが気持ちは縁側)に椅子を移動して水分の抜け落ちて風にカラカラ鳴る花水木の葉の音を聞きながら膝のポカポカ感を味わっている。

空は雲ひとかけらもない青。
時々小さな黄蝶が庭を横切り、ブンブン唸りながら翔ぶ虫が開け放った戸の数センチほど奥の空気に触れ、すぐに間違いだったように出て行く。

庭に残る色といえば、ピンクのバラ数本。

秋になり、ようやく元気を得たメアリーローズ、強さでは引けを取らないマリアテレジア、セントセシリアは今にも本来の色を失くしそうな雰囲気で咲いている。


1冊の本が気になった。
辰巳芳子との対談「食といのち」で福岡伸一の「動的平衡」の言葉に再び出会い、「あったなー、フェルメールの福岡さん」書棚から取り出した。

「センス オブ ワンダーを探して」阿川佐和子との対談である。
福岡さんは生物学者であり、私と本との出会いはこれが最初。

「福岡伸一って知ってる?フェルメールが大好きな人」高校の恩師であるK先生がその頃、腸内フローラに凝っていた頃のことだ。
腸内フローラも福岡伸一も知らなかった。

フェルメールが好きな人というから親近感が湧いた。
この本を書店で手に取るきっかけとなったのがタイトルの「センス オブ ワンダーを探して」である。

レイチェルカーソンの絶筆となったセンス・オブ・ワンダーは私の愛読書というか、私には、幼児教育のお手本のようなものであり、表紙に生命のささやきに耳を澄ますと書かれた小さな文字はすんなりと私の手に収まってしまった。

第2刷発行が2012年8月であるからその頃かそれ以降のことである。
阿川佐和子と福岡伸一の対談で話題となった二人が経験したバージニア・リー・バートンの絵本「せいめいのれきし」や「小さいおうち」について触れてある部分で、単純に知ってる知ってると喜び、センス・オブ・ワンダーでは、驚異的な境地でどうしてこんな分野を2人が話題に?と読み進めた記憶が戻ってきた。

福岡伸一=生物学者で、せいめいのれきしだったりセンスオブワンダーなのだと今更ながら明確になった未熟者。
私には、生物学者より、フェルメール好きの印象の方が勝る出会いだったわけだ。

何周かしてこの生物学者に出会った今回、ようやく動的平衡の生物学者の福岡伸一にたどり着いた。
福岡さんにしてもだいぶ待ちくたびれた様にして待っていてくれた。

読まない本も本棚で待っていてくれるという最近聞いたばかりの言葉にしみじみする。

本文の前に目次をしっかり読み、次に、はじめに書かれた福岡伸一の「子どもだけにみえるもの」
さいごに書かれている阿川佐和子の「大人のセンス・オブ・ワンダー」を味わった。

そして阿川佐和子文でウルっときた部分に出会ったので忘れないように記しておこうと思う。

性格も興味の方向も、天と地ほどの違いがあるにもかかわらず、姉と弟は一緒にいると安心する。なぜだろう。それはきっと二人とも、子ども時代に味わった喜びや驚きや恐怖や可笑しみや涙の感覚が、似ていることを知っているからだ。そしてそれらの感覚を、いつまでも忘れたくないからだ。今回の対談で弟は、またもやたくさんの大切なことを姉に教えてくれた。「相手が誰であろうとも、それが自分よりはるかに若い子どもでも、王さまでも大臣でも、あるいは犬でも花でもマウスでも、椅子でもボールでも、敬意を払って同等に、会話のできる大人でありたい」
ハカセはそんなことちっとも口にしてはいなかったけれど、きっと心の中で叫んでいらしたのだと思う。その言葉にならない教えを私は忘れない……たぶん。
だってこれが、大人になって初めて出合った私の大切な「センス・オブ・ワンダー」なのだから。(抜粋)

最初から3行までを読んでいた時の自分の感覚、繋がる人との関係の真髄を見た気がした。


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