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a green hand

「老年の価値」より ヘルマン・ヘッセ

私はこの本を60歳になった記念に選んだ。
しかし実感するまでに相当数の年月を経なければならなかった。

50歳からが楽しすぎた。

ヘッセも言っているが、50歳から80歳の間にたくさんの素晴らしいことを経験できる。
それ以前の何十年間に経験したと同じくらいたくさんのことを経験できる。

興奮と闘いの時代であった青春時代が美しいのと同じように、老いること、成熟することも、その美しさと幸せをもっていると老年の価値として述べている。


ヘッセは1962年、85歳の誕生日からひと月後の夜、愛してやまなかったモーツァルトのピアノソナタをラジオで聴いて床につき、翌朝に永遠の眠りについたという。

もっとも詩人らしく美しい最期だ。
人は生きてきたように最期を迎えるという。

「老年の価値」には老いについての深い洞察が散りばめられている。


見出し画像のアナベル
花束のように大きい。

98歳の母が「なんだって最後まできれいに咲いてるない」と、廊下を歩きながら呟く。
今月初めに、4歳下の妹との別れがあった。

母の人生も親しい人との別れが多くなり、辛そうである。
母の身に自分を置き換えてみても想像するだに辛いものがある。

そんな風に思うのは悪いことなのかもしれない。

母が最期に、いい人生だったと思えることが我々の願いであり希望でもある。
そのためにも生きなければw



今回もヘルマン・ヘッセの詩を一緒に味わって頂きたく「老年の価値」より抜粋した。


こんなに多くの道を

こんなに多くの道を君は歩いてきた
半世紀にもわたって
それでもきみは今もなお変わらずに
新たな道への憧れを感じている

もちろんぼくらはよく疲れを感じて
これでもう充分だろうと思う
ぼくらをこんなに長く支えてきた大地も
朽ちてもろくなっているようだ

けれどぼくらの中に愛が目覚めている限り
そしてぼくらの心臓を一層高く鼓動させ
感謝の気持を呼び起こす限り
大地はぼくらを支えてくれるだろう

そしてぼくらの青春の日々には
重く苦しかった幾多のことも
ぼくら老人には年ごとに容易になり
耐えられることを学んできた

だから君の道を進み行け
そして常に信頼せよ
きみの夕べの道は明るく晴れわたり
愛の光に満ちていると

                                  訳者 岡田朝雄





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