
いやぁ~、最近は何でもかんでも「3D立体視」が話題になることが多くなってきましたね。
映画、テレビ、写真、そしてゲーム。色んな映像業界が、3D映像一直線!って感じです。将来的な市場規模なども見据えていたり、テレビでも本格的に裸眼3Dも目指し始めているようですしね。
しかし、こんな状況もいつまで保てるものでしょうか?私はいろいろと疑問に感じます。
●3D映画はもうじき衰退するのでは?
私はこれまで「カールじいさんの空飛ぶ家」と「トイ・ストーリー3」で3D立体視の映画を見てきました。
残念ながら「アバター」を見ることはできませんでしたし、それを見ていないのに3D映画に対して云々言うのは如何なものか?と思われそうですが…「アバター」を見たことのある友人などの意見も踏まえたうえで、今回はお話します。
今の3D映画を見ていると、今後、3D映画はわりと早い段階で衰退していくのではないか?なんて思っています。
最近見た「トイ・ストーリー3」は3D立体視が活かされているとは思えないどころか、むしろ3Dになったことで見えにくい場面がありました。また、「カールじいさんの空飛ぶ家」は、現住所である京都で3D版を見た後、実家(広島)に帰った時に家族と共に2D版を見にいったのです。すると、個人的には2D版のほうが印象は良かったです。3Dでないぶん目が疲れにくいのは当然ですが、2Dのほうがむしろカラフルな彩色が際立っていました。
あと、「トイ・ストーリー3」の予告版でもあらゆる3D最新映画のプロモーションが流れましたが、どれ1つとっても3D立体視の必要性や魅力をあまり感じませんでした。むしろ「カールじいさんの空飛ぶ家」の時に見た「アバター」のプロモーション映像が、3D立体視としては一番クオリティは高かったようには思いました。そして事実、友人は「「アバター」だけは凄かった」と言ってましたし。(あくまで3D立体視の部分において、ですが)
こういうのを見ていると、3D立体視であることを活かせている映画は、ほんのごく一握りです。殆どの3D映画は「流行に乗っているだけ」です。
しかもそのくせ、少し目は疲れやすくなりますし、見えづらい場面は出てくるし、2D版より利用料金は高くなる(少なくとも私が主に通っている「TOHOシネマズ」は400円ほど高いです)しで、ユーザーにとってのメリットが思いのほか少ないです。
今はまだ「ブーム」ということもあり通用していますが、今のままだと時間が経つにつれて、3D映画の存在に飽きてくる人がどんどん増えていくと、私はほぼ確信しています。
衰退を阻止するには…それこそ「アバター」並のクオリティをもつ映画をズラリと並べるくらいしか思いつかないですね。ただ、それができれば、大画面&大音量が醍醐味である映画は、思った以上に活きては来ると思うんですね。3D映画という概念自体が悪いわけではなく、相性はいいハズですからね。
とはいえ、どの映画も「アバター」ほどお金をかけられるハズもないですし、クオリティが上がろうとも3D映画に対しての懸念される点はそんなに変わらないので、結果的にはちょっと寿命が延びるくらいだと思ったりするわけです。
●3Dテレビを本当に売れると思っているメーカーはどれくらいいるのか?
今年あたりから、3D立体視に対応したテレビも実際に販売され始め、店頭では実際に見れる状態になっているところも非常に多いです。通る人がだいたい、メガネを覗いて3D立体視を楽しみます。
私が3Dテレビに抱いている疑問としては、3D映画と同じく目が疲れるとか見えにくい場面が出てくるとかいう部分もあるんですが、それ以上に…はたして3D立体視が「日常化」できるものなのか?という点があります。
テレビは、徐々に衰退していると言われているとはいえ、大体の家庭には存在する認知度の高いメディアです。そのような存在が「普通に3D立体視」になったとして…それこそ、どれくらいの人が「得をした」と感じられるのでしょうか?だって、いわゆる普通のテレビもこれからずっと販売され続けるわけですから、番組を作る側としては3D立体視専用の番組なんて作るハズもないですし、結局需要があるのは3D立体視のDVDやゲームといった娯楽部分になってくるように思うわけです。
もちろん、今はまだまだ始まったばかりで、これから価格が下がったりメガネが不要になったりしていけば、多少は普及するのかもしれませんが…現時点では、どんなに頑張って「良さそうな未来像」を予想しても、3Dテレビがそんなに売れるとは思いません。
正直なところ…メーカー側も、そう思っているんじゃないでしょうかね?今は「とりあえず出しとけ!」的な感じで、そこから徐々に価格を下げつつ、3D立体視のあらゆる面での性能を向上させていく…といったところでしょう。メーカーとしては、何としても成果を出さないといけないですから、それこそ今は3D立体視に必死なのかもしれません。それがいつか実ればいいんですけどね…。
ちなみに。
ちょっと余談になってしまいますが、最近何かと話題の「クアトロン」という、光の三原色に黄色をプラスして「四原色」で表現しているとか言っているテレビを、家電量販店に見に行ってみたわけです。友人が、随分と絶賛していたので。
見比べてみると、確かに彩色はよりハッキリしているようには見えた気がします。明るくなったようにも見えますかね。普通のテレビがぼやけて見えるくらいです。ただ、大きなテレビだとハッキリ分かりますが、小さいテレビだとそこまで違いは分かりません。
あと、色々調べてみましたが、これはあくまで「光の三原色+黄色」によってより鮮明に見せようという仕組みであって、「光の三原色の概念を崩すもの」ということではないようです。CMとか見ていると、いかにも「光の四原色というのがあるんです!」ってアピールしているように見えてしまいますが、騙されないように。
●3D立体視のゲームには、まだ可能性がある?
いちクリエーターとしても色々考えているわけですが、個人的には、ゲームの世界ではまだ3D立体視の価値を引き出せる可能性はあると思っています。
3D立体視のゲームについては以前から「ニンテンドー3DS」について何度も言っている通り、結果的に「空間が把握しやすくなって、3Dのゲームが遊びやすくなるんです」とアピールして、それを有言実行できれば、結果的に活かせる可能性はあると思っています。
いわゆる3D映画のように、映像による"直接的な魅力"(大迫力!とか)しかアピールできないと、3D映画と同じ道をたどることになるでしょう。しかし、ゲームというのは映画と違って「自分で操作して遊ぶことができる」わけです。そこに対しての"間接的な魅力"を引き出すことができれば、映像自体に慣れてしまったとしても、その魅力は引き続き活きてくるわけです。それこそ、これまで発売してきた様々な3Dゲームをリメイクしていくだけでも、わりと強いのかもしれません。
ハードメーカーはもちろんなんですが、その他のメーカーがどれだけそれに気づき、「目先のブーム」に捉(とら)われないか?が大事になってくるでしょう。とはいえ、先行き厳しいメーカーからすれば今の3Dブームは「チャンス!」と思っているところもあるでしょうし、そんなに遠くの将来のことを考えている場合じゃない!というメーカーも多いでしょうから、それこそ「ニンテンドー3DS」も、少なくとも最初はそういう3D映像の"直接的な魅力"をガンガン推し出すタイトルが多くなってしまうでしょうけどね。
●意外と、3D立体視の写真は活躍するかも?
大概の人は「3D映画と同じで、3D立体視が撮影できるデジカメとかもたいして普及しないんじゃないの?」と思っているかもしれません。
しかし写真や動画は、映画やテレビとは違います。何が違うかというと、「自分が自由に残せるものである」ということです。
映画やテレビの番組は、どこまでいっても所詮は他人が作ったものですし、利益を上げるための存在にならないといけないため、ユーザー自身が100%望むような形になっている映画・番組は、極わずかです。
しかし、撮影したものは違います。自分や身近な人それぞれが、思うままに写真や動画を残せるのです。もちろん、対応したデジカメなどを購入する必要はありますが、メーカー側からすればそういう仕組みさえ搭載してしまえば済む話で、後は購入した人が自由に利用できるわけです。
そして何より、撮影したものというのは何かしらの「思い出」というのが残るものです。自分が赤ちゃんだった頃の写真。小学生だった頃の写真。運動会を撮影した動画。はたまた、つい先日適当に撮った写真でもいいです。そういうのを、撮影して10年や20年経ってから見たりすると、誰でもやっぱり「懐かしさ」を感じられることでしょう。むしろ先日の写真であっても、多少はそう感じられるものです。
で。ここで、3D立体視が活きてくるわけです。写真や動画が3D立体視になることで、いってしまえばより現実に近い空間で「その瞬間」を残せることになるわけですから、その写真や動画から得られる情報が多くなり、結果的にに「懐かしさ」をより鮮明に感じられるようになると、私は思っているわけです。私はもう無理ですが、赤ちゃんの頃の写真が、普通の写真で残されている場合と3D立体視で残されている場合では…何だかんだで、3D立体視で残されているほうが、見たときにより嬉しく感じられるんじゃないだろうか?と思うわけです。
「ニンテンドー3DS」には3D立体視の写真が撮れるシステムが内蔵されていますし、3D立体視の写真や動画が撮影できるデジタルカメラも、すでに発売されています。
現時点で、3D立体視の写真・動画がどれくらいのクオリティで撮影できるものなのか?にもよってきますが、本当にちゃんとした3D立体視で残せるということであれば…今では良くも悪くもひねりのない写真という媒体が、意外にも3D立体視によって再燃する可能性があるのではないかと思っています。まあ、あとは価格が下がれば…ってところでしょうけど。
●共通の課題、そしてまとめ
3D立体視を扱うメディア全体に、まず言えることは…可能な限り「違和感のない空間」を表現できるようになる必要があります。
3D立体視というのは、結局どこまでいっても「人間の目をごまかす」ことで見えているので、目に対しての負担を軽減するのは限りがあるでしょう。そうなってくると、結果的にいかに自然に見せられるかが、目への負担の軽減にもつながるでしょうし、同時により魅力を上げるものにもなるでしょう。
特に、昨今の3D映画や3Dテレビを見ると、まだまだ「速い動き」に対しての表現力が弱いようです。どうしてもチラつくというか、あの瞬間だけ明らかに目への負担が大きくなっていると感じられますからね。
悪い例があるんですが…「今週の写真」シリーズで先日、名古屋城を紹介しましたよね?実はあの天守閣の中で、現在復元中の本丸御殿という建造物の完成図を、3D立体視で見られるシアターがあったんです。(もちろん3Dメガネ着用)
映像は5分間くらいで、ただ完成図を外や内からぐるりと見て回るだけなんですが…たった5分なのに少し気持ち悪くなりました。3Dのゲームをプレイしても全く酔わないこの私が、です。
だから、3D立体視にはやっぱり根本的な完成度もまずは重要になってくると思いました。きっと「ニンテンドー3DS」でも開発するメーカーによって、すごく綺麗に見えるものもあれば、すぐに気持ち悪くなるものもあるかもしれません。…まあ、あえて3D立体視のホラーゲームを気持ち悪くなるように作って、体感!とか言ってしまうのも面白いかも。冗談ですけど(笑)
そして、これはもっと大事なことですが…やっぱりただ「3D立体視を推し出す」だけでは、おそらくあと数年で過ぎ去るであろうブームと共に、そのメディアでの3D立体視も衰退していくことになるでしょう。大事なのは、その一歩奥にある「実質的な価値」を見い出せるか?です。
ゲームであれば、3Dゲームのプレイが簡単になるかも?というのがそれにあたります。写真であれば、より懐かしさを感じられるというのがそれにあたります。テレビも映画も、それを見つけないことには…このままゆっくりと、衰退の道をたどりそうな気がします。
…まあ、何だって時間が経てば衰退はするんですけど(笑)
3D立体視の世界は、これからどういう道をたどっていくのでしょうか?
3割ほどの期待と、7割ほどの不安が混じりあっている心境です。
最近書いた他の「議論」記事:
ニンテンドー3DSについて思うこと(2010/06/30)
Wiiで売れるゲームって何だろう?(2010/06/10)
さらに他の「議論」記事も見てみる
すいません愚痴ってしまいました.
なるほど…
研究で3Dをやっていますが,中々いい意見だと思います^^
たしかに,今はブーム感が強いですよね.アバターはともかく,他のはクオリティが微妙なものが多く,また個人差もありますが,不快感もあり,厳しい気がいたします.
テレビについてもその通りだと思います.
そもそも高すぎる.
今や安いものなら40型で7万円ほどで買えるのに,それが30型で30万ほどというのはいくらなんでも買う人は少ないと思います.
現状の市場を見るに,それでも買いたいと言うほどの魅力のあるものもないですし…ね.
そして,ゲームが可能性あるのでは?というのも分かる気がします.
3DSもそうですし,それ以外に関しても,特にFPSやレーシング等の迫力がもし完全に実現できるのであれば,もう普通のゲームには戻れないでしょう(笑)
グランツーリスモ5が3Dに対応している,という噂ですし,気になるのは間違いないです^^
研究していることですし,出来るなら今後,廃れずに,細々とでもいいので生き残って欲しいです♪
あ、もう全然構いませんよ。私でよければガンガン愚痴ってください(笑)
現時点で将来が一番厳しそうなのは、やはりテレビですね。その次に映画でしょうか?とにかく、3D立体視の一歩奥にある価値観を見い出せていないので、慣れてしまったら終わりという感じです。
逆に、ゲームとか、写真とか(それこそプリクラとか)には可能性を感じるわけです。特にデジカメは、何だかんだで「思い出を残すもの」ですから、3D立体視になることが活きてくるのではないかと思います。あとは、価格が下がって激しい動きに強くなれば…というところですかね?
>>研究していることですし,出来るなら今後,廃れずに,細々とでもいいので生き残って欲しいです♪
これはXbox360のラジオコンテンツ「インサイドXbox」で見たんですが、3D立体視のゲームは30年前から存在したらしいのです。それだけ、人は早くから3D立体視に注目していて、しかしそれを活かせたメディアはこれまでいなかった。「バーチャルボーイ」がそうだったようにです。
技術力が上がってきたこともあってか、今になって一斉にあらゆる企業が3D3Dと言う様になってきましたが、それでもまだまだクリアすべき課題は山積みです。今後、「完璧な3D立体視」が実現できるまで、3D立体視の存在は残り続けるのではないでしょうか?と、私は思います。