マイマイのひとりごと

自作小説と、日記的なモノ。

【自作小説】教室長マヤの日常~第8話 淫欲の虜~

2012-12-24 23:27:41 | 自作小説
「なんで泣いてんだよ……あんなによがってた癖に。ほら、こっち向け」
 部長が荒々しい動作でマヤを抱き起こした。
 床に尻をつけたまま、焦点の合わない目でぼんやりと顔を上げる。
 膣から流れ落ちた生温かい液体が床を汚す。
男たちの残滓。
凌辱の痕跡。

 放心したマヤの耳に唇をつけるようにして、部長が笑いを含んだ声を注ぎ込む。
「おまえさえ、あいつらの言うことを聞いてくれたら……俺はさっさとこんな会社辞めて独立できるんだ……社長には黙ってろよ? しゃべったら許さないぞ……」
「どうして、わたしが黙っているなんて思えるんですか?」
 自分でも驚くほど強気な声が出た。
 精一杯の反抗。
それも涙と精液にまみれた姿では、部長の眉ひとつ動かすことができない。
「おまえに選ぶ権利なんか、あると思うのか?」
 量感のある乳肉に部長の指が食い込む。
 噛みちぎられそうなほど強く耳を齧られた。
「いやあっ!」
「いいか、よく聞けよ」
 部長の片方の手がマヤの頭を床に押し付け、もう一方の手が足の間をまさぐり始める。

「あ……もう、やめて……ください……」
「聞け、と言ってるんだ。黙れ」
 マヤの濡れた淫唇を指でなぞりながら、部長が淡々とした口調で続ける。
 指は割れ目を押し広げ、おとなしくなったはずの肉芽を擦りあげていく。
「んっ……やあっ……!」
 
「あのな、さっきの奴らにおまえを差し出したぐらいじゃ、俺の独立資金には少しばかり足りないんだよ」
「えっ……あ、あぁっ……」
「ふん、またぐちょぐちょに濡れてきやがった……まあいい。それでな、おまえにもうひとつ頼みがある」
 あの男たちのおもちゃにされることのほかに、まだ何かをやれと言うのか。
 何と身勝手なことを。
 あらゆる罵倒をぶつけてやりたいのに、マヤの口からは喘ぎ声しか出てこない。
 膣襞のひとつひとつを確かめるかのような動きに、腰が頼りなく震える。
 じゅぶじゅぶと音を立てて指があの部分を掻きまわす。
 その奥に、痺れるような電流を感じる。
絶頂に通じる快感が全身を駆け巡っていく。
そうされながら胸の先端を乱暴に捩じられて、マヤは声を枯らして許しを乞う。
「お願いですから……これ以上、いじめないで……もう、気が狂いそう……!」
「なるほどな……社長やあいつらがおまえを気に入るのもわかる……吸い付くような肌にこの胸と尻、おまけに感度も抜群だ……」
 部長の声に興奮が交じり始め、陰部に猛った肉棒を押し付けられたのと同時に、勃起したクリトリスを指の腹で潰された。
「くうぅっ……! やめ、やめて……」
「こんなことされて嫌じゃないのか。おまえのここ、いまどうなってるかわかるか? こんな真っ赤になって……物欲しそうにひくひくしてるぞ」
「いやっ、聞きたくない……!」

 暴力的な男根に貫かれる、その瞬間に備えて身構えたのに、それはつるつると膣口を撫でるだけで入ってこようとしない。
 さんざん弄られて昂ぶった体を、生殺しにされているような気分だ。
 やるのなら……犯すのなら、はやく……。
 背後に立つ部長にむかって、足を広げ、尻を突き出した。

 尻肉を、ちぎれそうなほど強く両手で握られる。
「あぅ……」
犯されたいと思うことなんて、あるはずがないのに。
 心は吐き気を催すほど部長を拒絶し、体は涎を垂らして男を求める。
「なんだ、もう入れて欲しくてしょうがないって感じだな。よし、俺の頼みを聞いてくれるんなら可愛がってやる。それでどうだ?」
 頼み……その内容は予想もつかない。
 蔑むような、馬鹿にしたような口調にも腹が立つ。
 マヤは返事をせず、両手で床に敷かれた絨毯に爪を立てて、自身の欲求を堪えた。
 それでも性器がひくついているのはどうしようもないし、口からは甘えたような吐息が漏れてしまう。

「おまえに頼みたいのは、社長室の金庫のことだ」
 太ももを膝から股にむかって撫であげられる。
 指の動きに沿って鳥肌が立つ。
「んっ……し、社長室の……?」
「知っているだろう。あそこには表に出せない金がある」
 何本かの指が陰毛をかきわけ、割れ目の奥に沈み込む。
 さっきよりもずっと深く。
 マヤは一方的に与えられる感覚に、ただ溺れるしかない。
「知っ……てる……っ……! あぁっ……」
 会社の裏金。
 いつだったか社長がマヤを抱きながら、自慢げに話したことがある。
『正直者は馬鹿を見るだけだ、こうして上手に税務署の目をくぐりぬけるやつが賢い』と。
『こうして貯めた金で、俺はいつか天下を取ってやる』と。
 社長室の一番奥、柱の一部に見える場所の下半分の板を外すと、そこには確かにものものしい金庫がある。
 でも、どうせそれほどの金がたまっているわけは無い。
 中年男の戯言だと聞き流していた。

「あそこには、億単位の金が眠っているらしい」
 粘液が流れ落ちるその部分に、部長が息を吹きかける。
 熱く濡れそぼったそこは、ひんやりとした空気に震えた。
 直後、柔らかな舌が尻の穴に差し込まれ、抗えない快楽にマヤが呻く。
「うぅ……こんな、もう……いつまでこんなこと……」
 部長はわかりきったことを聞くな、とでもいうふうにため息をついた。
「おまえが言うことを聞くまでだ。あの金庫の中には、社長が経営する別事業で誤魔化しながら手に入れた金も入っている。ろくでもない高利貸しもやってるんだぞ、あのクソオヤジ……」
 女芯に唇を当てがわれ、ちゅうちゅうと吸われる。
 屹立した陰核も舌でこねまわされて、マヤは膝に力が入らなくなり、絨毯の上に横倒しになった。
 両足の痙攣が止まらない。
「も……だめ……」
「上も下も、両方の口から涎を垂れ流して……良い格好だ。それでな、おまえには、あの社長室の金庫から金を盗み出して来て欲しい」
「えっ……!?」
 淫裂の奥を舌で探りながら、部長がマヤの乳房をたぐりよせる。
 尖りきった先端を爪の先で弾かれ、弱く強く圧迫されると、何でもいいからとにかく満足させてほしいという思いだけが募った。
 子宮の奥が、男のそれを求めてせつなく収縮する。

「来週の月曜も、おまえは社長室で例のごとく、この体を献上するんだろう。たっぷりサービスしてやれ。そうしながら、金庫の暗証番号を聞き出してこい」
「そ、そんなの、無理よ……」
「いや、アレの真っ最中、社長はいつもぶっ飛んでるだろ? せいぜい可愛く媚びて、寝物語にでも教えてもらえ。なんなら、そのぶん教室のほうは別のスタッフを手配しといてやる。夜までみっちり社長を咥えこんで、判断力を失わせろ」
「む、無理だって……ああああああっ!」
 剥き出しになったクリトリスを吸われ、こりこりと噛まれた。
 痛みにも似た愉悦が、淫肉を震わせる。

「できるさ……断るなら、この先おまえに仕事上の協力は一切しない。おまえの悪行をあることないこと捏造して社長に耳打ちしてやる。クビになるのも時間の問題だ」
 職を失うことはできない。
 内情はどうあれ、塾という堅い仕事に就けたことは母も喜んでくれていた。
 もしも辞めることができるとしたら、それは後々の心配をせずともやっていけるほどの、大金を手に入れたときだけだ。
「なあ、やってくれるだろ……? ここも欲しがっているぞ、素直になれ……」
 再び、部長の熱しきった肉塊が膣の入り口に押し付けられた。
 欲しい。
 あらゆる理屈を跳ねのけて、淫欲のみが脳内を浸蝕していく。
「わかったわ……やる、やるから……はやく……」
 何を言っているの、そんなことできるわけないのに。
 わずかに残った理性が、マヤの返事を打ち消そうとする。
 でも、それは長く続かず、強烈な欲望の狭間に飲み込まれてしまう。
「おまえならそう言うと思ったよ。それにしても、いやらしい体だな……」
 どうしてこんな男にまで、わたしは感じてしまうんだろう。
 節操のない自分の体を恨みながら、マヤは部長を受け入れた。

 重量感のある肉棒が、膣壁をぐりぐりと刺激しながら侵入してくる。
 蕩けるような圧迫感。
 じわじわ押し広げられる淫肉が、愛蜜を滴らせながら男根に絡みつく。
「すげえな……好きでもない男に犯されるのが、そんなに気持ちいいのか? ん?」
 嬲るような言葉さえも、いまは子宮を疼かせる。
 腰を力強くつかまれ、いきり立った肉根に真っ直ぐ奥まで貫かれた。
「ああああああああっ!! いっ……いっちゃうぅ……」
「まだ、挿入しただけなのになぁ……こんなことされたら死んじまうか?」
 部長が腰を引き、また秘部にずぶりと男根を突き立てる。
 やめて、と叫んでも、その動きは激しくなるばかりだった。
 度重なる絶頂感と満たされた膣の充足感に、マヤはその身を任せる。
「裏切ろうなんて考えるなよ……おまえはこんな生き方しかできない女なんだよ……」
 部長の声が徐々に遠のいていく。
打ち付けられる肉の音と淫部の粘着音だけが、いつまでも耳の奥に残った。


 翌日の金曜日も、当たり前のように出勤しなければならない。

 明け方近くになって意識を取り戻したマヤは、自宅に戻って大急ぎで浴室にむかった。
 どろどろになってしまった下着を、迷わず脱衣所のゴミ箱に放り込む。
 熱めのシャワーを全開にして、滝のような湯を浴びる。
 もうもうと立ち込める湯気越しに、浴室の鏡を見た。
 盛り上がった乳房とは対照的に、腹は痩せすぎかと思うほど骨が浮いている。
 白い肌には、昨夜の荒々しいプレイの傷跡。
 ところどころに見える青い痣や、縛られた跡が痛々しい。
 
 香りの強いボディソープを全身に塗りつけ、男たちに汚された体を丁寧に洗う。
 敏感になり過ぎた肌は、もはや自分の手が触れただけでも反応をみせる。
 ぷっくりと丸みを帯びた乳首が、愛らしく桃色に染まっていく。
 少しだけ……。
 鏡を見つめながら、そこを泡まみれの手で撫でると、穏やかな快感に笑みがこぼれた。
 あの男たちにされるような乱暴さとは、対極にある静かな感触。
 こんなふうに可愛がってくれる男はいるだろうか。
 マヤの欲しいものだけを与えてくれる、奉仕者のような男。
「いるわけ、ないよね……」
 自嘲気味に呟く。

 撫でるだけではやはり物足りず、ちょっと力を入れて擦ってみる。
「あ……はぁっ……」
 流しっぱなしにしたシャワーから、熱い湯が落ちてくる。
 興奮した肌の上を、湯の球が転がっていく。
 そのまま下腹部に手を伸ばす。
 わたし、こんなことしてる場合じゃないのに。
 少しでも眠ってから仕事に行かなくちゃいけない……。
 わかっていても、悲しくなるほど体が刺激を求めている。
 黒々とした茂みが隠す、その中に触れる。
 そっと皮を剥き、肉豆を指で優しくつまむ。
 シャワーヘッドを持って、流れ落ちる湯をそこに当てる。
「あぁ……んっ……いい、すごく……いぃ……!」
 鏡の中にはひとり、淫らに悶える女が映る。
卑猥な表情と恥ずかしげもなく喘ぐ様子は、マヤを煽ってあっという間にオーガニズムに導いていく。
「ううぅぅ……!!」
 絶頂の中で部長の要求を思い出す。
 よくもあんな勝手なことを。
 ただ、このままの状況であれば、どう足掻いても部長の言うことを聞くしかなくなる。
 社長を裏切ることに迷いは無いが、その後のことを考えるのが怖い。
 わけのわからない恨みを買い、複数の男たちに調教され、部長に嬲られる日々。

 冗談じゃない。
 どうにかしなくちゃ……。 
 みんなに踏みつけにされ、虐げられているばかりではどうしようもない。
 味方を作らなくては。
 自分に従順な、手足となって動いてくれる味方を……。
 細い指先で淫芯をまさぐりながら、マヤはふたりの男の顔を思い浮かべていた。


 そして金曜日の午後、仕事が始まる。
事務作業を処理し、講師陣に指示を出し、生徒と母親たちの相手をするマヤの姿はきびきびとし、張りがあった。
 ここしばらくそうであったような、ぐったりと疲れた様子は微塵もない。
「どうしたの? ちょっといいことでもあった?」
 鋭い女性の講師たちが、悪戯っぽい目で尋ねてくる。
「あはは、何でもないですよ。週末が近いから、浮かれてるのかも」
 適当に受け答えしながら、マヤは心の中で笑った。

 終わりの無い奴隷生活を、そろそろ卒業することに決めたのよ。
 もちろん、頑張って来た分の報酬をきっちりいただいてからね。
 あれほど親身になって考えてきたつもりの生徒たちのことも、その保護者たちとの関係も、気持ちが決まってしまうと未練の欠片も残らない。
 自分の乾いた心に寒気がするほどだった。
 ……その日が来るまで、誰にも悟られてはいけない。
 マヤにとっての『味方』以外には。


「先生、あの……」
 大学院生のアルバイト講師、久保田が遠慮がちに声をかけてくる。
 時間は午後11時を過ぎ、教室にはほかに誰もいない。
「ああ、久保田くん。今日もお疲れ様。明日の朝も早いんでしょう? 帰らなくていいの?」
 わざと目元の書類に目を落としながら、久保田の様子をうかがう。
 聞かなくても、彼が何を言いたいのかはわかっている。
 
「えっと、僕と一緒に遊びに行ってもいいって言ってくれましたよね? あれ、本気にしてもいいですか?」
 ほら、来た。
 今週、久保田がずっと物言いたげに視線を送っていたのは知っている。
 まだ純粋な心を利用するような真似はしたくないと思って、無視を決め込んでいた。
 でも、今は事情が違う。
 マヤはたっぷりと間をおいて、意味ありげに笑って見せた。
「いいわ。どこに誘ってくれるの?」
 久保田の顔がパッと輝く。
 信じられないほどわかりやすい。
 大きな体を丸めてポケットに手を突っ込み、しわしわになったチケットを差し出してくる。
「これ、映画のチケットなんですけど……2枚、その、友達からもらって……よかったら、明後日の日曜日とか、あの、一緒に行ってくれませんか?」
 つい先週に公開されたばかりの、前評判も高いラブストーリー。
 久保田のまわりに、そんな気のきいたチケットをくれる友人などいないはずだった。
 みえみえの嘘は、気付かないふりで流してやる。
「本当に誘ってくれるなんて、嬉しい……日曜日、楽しみにしているわ。わたしなんかと一緒で、いいの?」
「あっ、ありがとうございます! いいにきまってるじゃないですか……水上先生じゃなきゃ、だめなんです。じ、じゃあ、待ち合わせ場所と時間は……」
 真っ赤な顔をして、メモ用紙に待ち合わせ場所と時間を丁寧に書きつける姿は、真面目な久保田らしく好感が持てる。
 そのペンを握る無骨な指が、想像をかき立てていく。
 この子はいったい、どんなセックスをするのかしら。
 ……日曜日が楽しみだわ。
 マヤは確実に久保田を夢中にさせるための算段を、頭の中で組み上げていた。

 久保田が夢見心地といった表情でふらふらと教室を出て行った後、カタン、と音がした。
教室扉の外側に備え付けられた、袋状の新聞受けが揺れている。
そこには保護者や生徒から、たまに手紙が入れられることもあるが……。
すでに真夜中に近い。
こんな時間に、いったい何?

 マヤは嫌な予感を胸に抱きながら、ドアを開け、新聞受けを探った。
 薄い封筒のようなものが手に触れる。
 取り出してみると、なんの変哲もない茶封筒で、宛名も何も書かれていない。
 びっちりとのりづけされた封筒をハサミで開ける。
 中身は写真が1枚。

「あっ……!」
 そこには上半身裸のマヤと、その胸に顔を埋める男……松山サトシの父親の姿がしっかりと写っていた。
 お互いの服装から、それが間違いなく今週の水曜日、公園での戯れのときのものだとわかる。
 写真の裏には『最低の淫乱女に似合いの罰を用意した 逃げるな』と書かれている。
 ……こうなったら早く事を進めなければ。
 カチカチとパズルゲームをするかのように、脳内でやるべきことが箇条書きにされていく。
 ふっと息をついて顔を上げても、教室の窓からのぞく曇った空には、星屑ひとつの輝きすら見当たらなかった。

(つづく)


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