べーやんに東野圭吾の『秘密』をすすめたら、その感想記事のコメントで北村薫の『スキップ』が勧められていた。
嫁さんに聞いたら、家にあるということで。
読みました。
昭和四十年代。
十七歳の少女が、運動会が雨で中止になった夕方、レコードをかけて目を閉じた。
目覚めたのは、夫と十七歳の娘がいる、四十二歳の高校教師になった私だった。
感想ですが、以下ネタバレありです。
「人間を構成しているのは、記憶だ」
というのを思い出しました。
すべてとは思わないけれど。
記憶喪失者の話などで、昔からよく取り上げられる話です。
あと、記憶が17歳の少女から40代まで飛んでしまった主人公が、自分の境遇に対して。
「途中で何があったか知りませんけれど、結局、彼女が選んでここまで来たわけですよね。だったら、今の私が時間を貰ってやりなおしても同じことになるはずです。ならなかったら、おかしい」(p198)
という場面。
すごく共感しました。
自分も高校生くらいの時に、「その時点で自分でできる最大限の努力をして、最善の道を選んでいこう。決して、後悔しないように。あのころに戻りたいなんてことは、決して言わない人生を送ろう」と思っていました。
なので今でも、どこからやり直しても、条件が同じであれば今現在の自分になっていたと思うし。
今が一番幸せです。
『秘密』の主人公は、自分の人生にすごい後悔があって、娘の体を間借りして、自分の考える最良の人生を生きなおします。
それを見た夫は、「俺と歩んできた人生も、否定するのか」と悲しむのですが。。。
『スキップ』にある共感と、『秘密』に抱く辛さはこういうところからも出てくるのでしょう。
『スキップ』の主人公は、最後に高校時代の親友にあって、激白します。
その親友に、40代の記憶が飛ぶ直前に起こった事件によって、主人公が自分の年齢を否定したくなったことにより、17から今までの記憶が欠落したのではと責められます。
端から見たら、過去から飛んできたのではなく、記憶の中落ちにしか考えられないと。
その彼女に対して、主人公が「それじゃぁ、わたしは十八から今年の春まで、ずっと忘れてしまいたくなるような生き方をしてきたっていうわけ?」p548と猛反発するのです。
上記の決意をする主人公からは、考えられませんが。
「今」を生きる彼女にとって、知らない過去はどうしようもないのです。
ましてや知らない過去の責任は、取りようがないのですから。
『秘密』では、妻の体と娘の心が喪失しましたが。
今回は、妻の心の一部と、家族との関係性が喪失しました。
娘にとって、自分を産み育ててくれた母はいなくなってしまったのです。
けれでも、北村小説では、それでも「今」を生き続けようとする主人公に、娘は期待をよせ。
悲壮感はありません。
一度失われてしまったものは、まったく元と同じにはなりませんが。
違った形でも取り戻せる!という、優しさのこもった小説でした。
嫁さんに聞いたら、家にあるということで。
読みました。
昭和四十年代。
十七歳の少女が、運動会が雨で中止になった夕方、レコードをかけて目を閉じた。
目覚めたのは、夫と十七歳の娘がいる、四十二歳の高校教師になった私だった。
感想ですが、以下ネタバレありです。
「人間を構成しているのは、記憶だ」
というのを思い出しました。
すべてとは思わないけれど。
記憶喪失者の話などで、昔からよく取り上げられる話です。
あと、記憶が17歳の少女から40代まで飛んでしまった主人公が、自分の境遇に対して。
「途中で何があったか知りませんけれど、結局、彼女が選んでここまで来たわけですよね。だったら、今の私が時間を貰ってやりなおしても同じことになるはずです。ならなかったら、おかしい」(p198)
という場面。
すごく共感しました。
自分も高校生くらいの時に、「その時点で自分でできる最大限の努力をして、最善の道を選んでいこう。決して、後悔しないように。あのころに戻りたいなんてことは、決して言わない人生を送ろう」と思っていました。
なので今でも、どこからやり直しても、条件が同じであれば今現在の自分になっていたと思うし。
今が一番幸せです。
『秘密』の主人公は、自分の人生にすごい後悔があって、娘の体を間借りして、自分の考える最良の人生を生きなおします。
それを見た夫は、「俺と歩んできた人生も、否定するのか」と悲しむのですが。。。
『スキップ』にある共感と、『秘密』に抱く辛さはこういうところからも出てくるのでしょう。
『スキップ』の主人公は、最後に高校時代の親友にあって、激白します。
その親友に、40代の記憶が飛ぶ直前に起こった事件によって、主人公が自分の年齢を否定したくなったことにより、17から今までの記憶が欠落したのではと責められます。
端から見たら、過去から飛んできたのではなく、記憶の中落ちにしか考えられないと。
その彼女に対して、主人公が「それじゃぁ、わたしは十八から今年の春まで、ずっと忘れてしまいたくなるような生き方をしてきたっていうわけ?」p548と猛反発するのです。
上記の決意をする主人公からは、考えられませんが。
「今」を生きる彼女にとって、知らない過去はどうしようもないのです。
ましてや知らない過去の責任は、取りようがないのですから。
『秘密』では、妻の体と娘の心が喪失しましたが。
今回は、妻の心の一部と、家族との関係性が喪失しました。
娘にとって、自分を産み育ててくれた母はいなくなってしまったのです。
けれでも、北村小説では、それでも「今」を生き続けようとする主人公に、娘は期待をよせ。
悲壮感はありません。
一度失われてしまったものは、まったく元と同じにはなりませんが。
違った形でも取り戻せる!という、優しさのこもった小説でした。
今度機会があったら貸してもらえますか??^^