「星が話してくれたことを、友だちに話してあげるのはかまわないんでしょ?」
「それはいいよ。だができないだろうね。」
「どうして?」
「それを話すためには、おまえの中でことばが熟さなくてはいけないからだ。」
「でも話したいの、なにもかも!あそこで聞いた声を、うたって聞かせられるといいな。
そうしたら、なにもかもまたよくなると思うわ。」
「ほんとうにそうしたいのなら、待つこともできなくてはいけないね。」
「待つなんて、わけのないことよ。」
「いいかね、地球が太陽をひとめぐりするあいだ、土の中で眠って芽をだす日を待っている種のように、
待つことだ。ことばがおまえの中で熟しきるまでには、それくらい長いときが必要なのだよ。
それだけ待てるかね!」
「はい。」とモモはささやくようにこたえました。
「それでは、おやすみ。」と言って、マイスター・ホラは彼女のまぶたをかるくなでました。
「眠るのだよ!」
モモはふかぶかとしあわせそうに息をすうと、すぐに眠りに落ちてゆきました。
『 モモ 時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間に
とりかえしてくれた女の子のふしぎな物語 』 ミヒャエル・エンデ 作
モモとマイスター・ゼクンドゥス・ミヌティウス・ホラの会話
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