■なぜ、夕陽を見るか-夕陽のこころ
前回は星見の出発は夕陽を見ることと申し上げました。その心は「黄道星座」、ゾディアックを天に描けるようになること、でした。
でも、それには1年かかります。毎日ではなし、意欲のある皆さんですし、それほど負担ではないでしょう。
で、その間に、いやその後でも良いので、1回で結構ですから、1回だけ、ぜひ、測角器を使って夕陽を測って下さい。
「測角器?」、知りませんよね。そりゃあ、そうでしょう。私の造語ですから。発明したわけではありません。これ、皆さんのお家にあるものですから。
■測角器とはこれ!
「バカにするな!」と叱られそうですが、測角器とはこれです。モノサシと言う方がおられますが、それは測りたいものに当てて使う場合ですよね。でも、ここで測るのは角度-ものに当てるのではなく、はるか遠方に離れたものの見かけの角度を測るのです。ですから、測角器!
そう、これがこ私たちのアストロラーベ、トランシット!です。ちょっとばかり精度が悪いだけ。でも、これで良いのです。
占星術は2000年前に誕生し、完成した技法ですから、当時の精度があれば十分。もちろん、中には立派な計測器を持っていた人もいましたが、それは例外。これだって、あるのとないのとでは大違い! 安上がりの割には実に強力な助っ人です。
30cm長が平均的ですが、もう少し長い方が使い勝手が良いので、100円ショップに走って下さい。
使い方は簡単です。が、少しだけコツがあります。それは目から57cm離して見ること。別に測る必要はありません。目いっぱい腕を伸ばせばそれ位になります。多少長かろうが、短かかろうが、気にすることはありません。ただ、いつも同じ長さになるよう努めて戴ければ最高です。
これで太陽や満月を見ると、5mmです。まあ、太陽は見ない方が無難だと思いますが、自信のある方はどうぞ、本当に5mmか、確かめてみて下さい。
「長さを測るんじゃないと言いながら、長さじゃないか!」と仰るかも知れませんが、実はこれはプトレマイオスの大著「アルマゲスト」の最初の方にある「弦の表」を実践しているのです。円周に張った弦の長さから角度を求める表が「弦の表」。これを使いこなせるようになる。これが当時の占星術師の第一歩でした。
測角器をバカにした方はどうぞ「アルマゲスト」を開いて下さい。第一巻第九章です。現代のことばではサイン関数ということになるので、これが私たちの三角関数表か電卓代わりというわけです。
いかがですか? 測角器、バカにできませんね。
■夕陽の何を測る?
太陽の縦と横の長さです。
縦は地平線から太陽までの長さ。地平線なんて見えませんから、こんなもんだろうというところで結構です。測角器を上に向け、下端を地平線に当て、太陽の見えた場所を片手の指で押さえて、ハイ、目盛りを読みましょう。15cm、20cm、結構でしょう。
横は遠方の山頂やら木、建物の角など、目立つものを基準にします。斜めにしてはいけません。基準点から水平にしたまま上げて、太陽位置を押さえます。
横方向は適当な基準点を見つけるのがポイント。これが悪いと測角器の目盛りから外れてしまいます。太陽は右下に動いて行くことから見当をつけましょう。
測り終えたらメモします。「4:45、27、83」、時刻、縦、横です。
測定は日の入り2時間前にスタンバイ! 適当な基準点を見つけ、地平線の見当がついたら準備オーケーです。日の入り時刻が分からない? 春3月や秋9月は6時頃でしょう? 夏は7時15分、冬は4時45分あたりですから、だいたい分かりますね。
さあ、測りましょう。測定日は4月20日としましょう。4時30分から、15分ごとで、1時間半で7回です。これだけあれば結構です。
いかがですか、こんなに真剣に夕陽を見たことがありましたか? これでまた後輩に水を空け、専門家=エキスパートにまた一歩近づきました。
福島 憲人(2021.3.18.)
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