
という訳で皆さん、【金曜ロードショー】の『バットマン ビギンズ』はお楽しみ頂けましたか?(往年の淀長さん風)
ブルース坊ちゃまことクリスチャン・ベイル、やっぱり可愛かったですね~

以下ちょっと……かなり偏ったことを書いておりますので、ご用心下さいませ。
その前にまず、当ブログで以前書いた『ビギンズ』感想にリンクしておきます。
感想1 2
今回のTV放映版、2時間以上の枠を取ってはいましたが、元が140分の映画ですから、重要なシーンもかなりカットされてしまいました。
そもそも冒頭の放浪シーン、デュカード(リーアム・ニーソン)との出会いからしてカット、両親を殺害されたブルース少年とゴードンさん(ゲイリー・オールドマン)の初めての出会いもカット。
屋敷に戻ってからの「坊ちゃま起きぬけ」と腕立て伏せも重要だと思いますよ(笑)。いや、後の伏線となる台詞もあるし。
細かいことだけど、街の少年とバットマンとの邂逅とかね。
日本語吹替ですが、東地さん良かったですね。ウィル・スミス、ヒュー・ジャックマンと、今回のクリスチャン・ベイルとの演じ分けがきちんと出来ていることに感心しました。
ただ、バットマン姿の時の声に、変にエフェクトがかかっているのには違和感を覚えます。クリスチャンは自前(?)でちゃんと発声を変えられる人だけに。
中村正さんは、何を演じてもやっぱり中村さんなんですが、あの人の場合もうそれでいいんですよ。
その他の声優さんについては、ゲイリー・オールドマンが山路和弘さんだったのにちょっとびっくり。キリアン・マーフィーは関俊彦さんでした。
さて、こんな言い方はどうかと思いますが、クリストファー・ノーラン監督はクリスチャン・ベイルに人生を狂わされた人なんじゃないかという気がします。
もちろん、ジリ貧に陥りかけていた映画『バットマン』シリーズを、バットマン誕生に遡って仕切り直し成功。続く『プレステージ』も(日本はともかく)英米ではヒット。それぞれに作品としての評価も高く、『ビギンズ』続編『The Dark Knight』も任されて、キャリアの上では順風満帆です。
その成功の一因は、主演にクリスチャン・ベイルという俳優を持って来たことによるところ大ですが、ノーランにとってベイルは、今や監督と主演俳優という域を超えた存在になっているのではないでしょうか。
映画監督と主演俳優がパートナー的存在として成り立っている例として、古くはジョン・フォードとジョン・ウェイン(でも真にウェインの個性を生かしていたのは、ハワード・ホークスだという説もあり)、黒澤明と三船敏郎、最近ではティム・バートンとジョニー・デップ等が挙げられますが、ノーラン→ベイルは、彼らの有りようともまたちょっと違いますね。
たとえば、バートンにとってのジョニデは、自らの心情を仮託できる俳優、その作品世界を最もよく理解し、表現してくれる存在ということなのだと思いますが、ノーランにとっては、まずクリスチャン・ベイルありき、というようにさえ(結果として)見えるのです。
敵味方、いい人悪い人ともに曲者揃いの年長者の間で、右往左往する孤独な「少年」。そうして面倒みて貰ったり闘ったり新しいオモチャを貰ったり空回ったりし続ける、何だかんだで「おじさんキラー」なお坊ちゃま。
ノーランの描いたブルース・ウェインとはそういうキャラクターであり、更に言ってしまえば、ノーランの見たクリスチャン・ベイルが、まさにそういう存在であったということです。
『ビギンズ』が、その完成度の高さは評価されながら、『バットマン』映画としてはどこか隔靴掻痒の感あり、と言われたりするのも当然です。クリストファー・ノーランが描いた「作品」とは、実は「バットマン」ではなく、「クリスチャン・ベイル」に他ならなかったのですから。
ベイル出演作品をあれこれ観た後では、ここはあの映画の、これはあの役の引用ではないか?というシーンがあちこちに散りばめられているのが判ります。それだけなら単に「パロディ」ですが、問題は細部の演出に限ったことではありません。
『太陽の帝国』に始まるクリスチャン・ベイルのキャリアや人生を、「バットマン=ブルース・ウェイン」に仮託して語り直したもの。それこそがこの『バットマン ビギンズ』という作品の本質であったと、私は思います。
あえてその表現を使うなら、クリストファー・ノーランのクリスチャン・ベイル「萌え」を形にしたものが、この映画だったのです。
その「萌え」が更に嵩じて作られたのが、『プレステージ』という作品ですが、これについてはまた改めて。
ともあれ、ベテランの豪華脇役陣それぞれに見せ場を用意しつつも、『バットマン ビギンズ』とは、彼らのためではなく、「バットマン」のためですらなく、徹頭徹尾クリスチャン・ベイルのための作品であった、ということが、『プレステージ』を経た今となって、よーく判りました。
ノーランのベイル萌えはどこまで行ってしまうのか、これからもベイルに相応しい企画を探し続けることになったりするのか、何だかハラハラしてしまいます。
そして、『The Dark Knight』はどうなるのか、今や怖いもの観たさに近い気持ちで期待しています。
そうは言っても、坊ちゃまと執事さんが一緒にいるだけで、やっぱりシアワセな気持ちになっちゃうんだろうな、とは思いますが。