「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

地下鉄サリン事件と聖路加国際病院

2018-07-06 | 2018年イベント
オウム真理教の教団元代表、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚ら7人の死刑執行について、英国BBCでも報道されました。そして、当時の東京を震撼させたテロ事件である地下鉄サリン事件に関しても紹介されました。

この地下鉄サリン事件の時、多くの急患の対応に当たったのが、上図の聖路加国際病院でした。米国聖公会宣教医師によって1901年に東京に設立されたこの病院は、現在では、優れた質を誇る大型総合病院として知られ、さらに日本屈指の臨床研修病院としても有名です。近年は日本全国から優秀な研修医が集う場所になっています。
1995年の地下鉄サリン事件時、最寄り駅の築地で最も多くの被害者が出ましたが、当時院長だった日野原重明先生の指示により、数多くの被害者の受け入れ先となり、治療に取り組んだことはよく知られています。

原因不明の毒物(その後すぐにサリンと判りましたが)による急性中毒症状に対して、いかに的確に対応するかというのは救急医学・医療的にはとても難しかったと思います。患者に付着した毒物などから医療従事者への二次被害を防ぐためにも、毒物の種類を早急に特定するのが一番良いのですが、それがすぐには出来ない場合には医療側も患者にどのように接したら良いか戸惑いがあるのが普通です。この前代未聞のサリン散布時にひるまず対応した当時の聖路加国際病院のスタッフたちには敬意を払わずにはいられません。

本学で開かれる国際学会

2018-06-25 | 2018年イベント
今日から本学で放射線研究分野の国際学会が開催されています。上の写真は学会会場ですが、歴史ある建物で、かなり趣のある場所です。
英国とアイルランド共和国の両国学会の合同年会です。さらに北米を中心とした国際学会Radiation Research Societyの現会長と次期会長が揃い踏みするなど、私も名前を知るような世界的に有名な放射線研究者たちが集まりました。しかし、日本の学会とは違って、少数精鋭というか、国際学会の割には参加者が少ないのが印象的ですね。全員が顔見知りというか、とてもアットホームな感じの学会です。

私も出来れば知人を作れたならば良いのですが、まあ、最初は様子見しています。
自分の発表はともかく、他の研究者たちの発表を聞いているだけで、色々と勉強になることがあります。ただ、いまだに英語が聴き取れずに何言っているのか判らないことも少なからずあり(とくにアイルランド共和国の研究者たちの訛りが強い)、とりあえずスライドを見るのに集中ですね。頑張ります。

京都賞 Kyoto Prize 2018と、日本人数学者の系譜

2018-06-25 | 2018年イベント
このブログで採り上げるのはちょっと今更かもしれませんが、今年の京都賞受賞者が15日金曜日に発表されました。
上の写真は、京都賞受賞者に渡されるディプロマです。左は妙心寺管長の揮毫だそうですが、格好いいですね。京都賞は、毎年3部門(先進技術部門、基礎科学部門、思想・芸術部門)に与えられる総合学術賞といえますが、今年から各部門の受賞賞金も1億円になりました。世界各国に数多ある賞の中でも、ノーベル賞に比肩しうる、日本発の国際学術賞と言えるでしょう。

自然科学分野としては、先端技術部門では「バイオテクノロジーおよびメディカルテクノロジー」から米国人精神科医・神経科学者のカール・ダイセロス博士 Dr. Karl Deisseroth(スタンフォード大学教授)が、基礎科学部門では「数理科学」から日本人数学者の柏原正樹博士(京都大学名誉教授、数理解析研究所(RIMS)特任教授)が選ばれました。
私の専門からすると、ダイセロス先生のご業績についてこのブログで触れるべきなのかもしれませんが、彼の研究業績「光遺伝学と神経科学への応用」について、今回は割愛します。一言で言うと、ダイセロス先生は天才です。間違いなく、近い将来にノーベル賞を受賞されることでしょう。彼のラボで開発された光遺伝学技術は神経科学にまさに「革命」を起こしましたから。

ところで、歴史上、もっとも優れた日本人数学者は誰か?
関孝和、高木貞治、岡潔、小平邦彦、岩澤健吉、伊藤清、佐藤幹夫、志村五郎…

様々な声が挙がると思いますが、私の知る京都大学RIMS(おそらく日本最高峰の数学研究所)のある研究者はかつてこう言っていました。「現在の日本の数学者でもっとも業績を挙げているのは柏原正樹だろう」と。
歴史上の人物逹に比肩するかどうかはともかくとして、現代日本の最高峰の数学者の1人が柏原正樹先生とのことです。なるほど、と思いました。もちろん、私は柏原先生のご業績のほぼ全てがちんぷんかんぷんです。柏原先生の多彩な業績の中の一つ「D-加群」と言われても、理解できません。しかし、我が国の科学史において重要な意味を持っている、次の数学者の系譜は存じています。

高木貞治、彌永昌吉、佐藤幹夫、そして柏原正樹。

この師弟の系譜は「近代から現代にかけての我が国の数学界を担ってきた」といっても過言ではないほど大きな影響力を持っています。
高木貞治、彌永昌吉は東大の数学教室を主宰し、日本数学会の発展に貢献しました。彌永昌吉の弟子からは数多くの大数学者たちが輩出されています。その中の1人である佐藤幹夫先生は、京大RIMSの所長・教授として、超函数の独創的な成果を挙げて、ショック賞(1997年日本人初受賞)、ウルフ賞などの著名な国際賞を受賞しています。そして、今回、柏原先生もD-加群を中心とした業績で世界最高峰の京都賞をついに受賞されたのでした。
佐藤幹夫・柏原正樹の師弟はとくに有名ですね。

江戸時代の和算家・関孝和は、欧州の科学界とは独立して「微積分」の概念に到達するなど、世界史的にみて、東洋きっての「異才」の持ち主だったと言えるでしょう。
そのような「数学DNA」が日本人の根底にあるということなのかもしれませんが、高木貞治が「類体論」などを発表し、日本人数学者が世界の数学界に仲間入りを果たして以降、日本は優れた数学者を数多く輩出してきました。いまだに世界最高の数学賞であるアーベル賞(2003年創設)を受賞した方こそいませんが、高名なフィールズ賞受賞者3名(小平邦彦、広中平祐、森重文)をはじめ、コール賞、ウルフ賞、そして京都賞など数学をカバーする国際賞の受賞例も数多く、20世紀中に「東洋の数学大国」としての地位を確立するに至りました。

医学分野の研究者の端くれからすると「数学の先生たち、半端ないって」という感じですね。日本が世界に誇る優れた自然科学分野の一つに数学があります。残念ながら、日本の医学は世界に対して数学ほどの存在感を示すことは出来ていません。

私はかつて数学者に憧れた時期がありました。残念ながら、私には明らかに数学の才能がなかったし、それを補うだけの努力をする根性もなかったので、その道は断念しました。仕方なく(?)、医学の道に進み、現在に至ります。しかし、自分の心のどこかにある、数学者への憧憬の気持ちは今も失われることはなく。数学そのものというよりも近年では「数学史」の方に関心が移ってきましたが、日本の数学者の先生方の活躍をとても嬉しく思っています。

柏原先生、おめでとうございます。

コロンビア撃破 2018年ワールドカップ

2018-06-19 | 2018年イベント
英国時間13時からの試合だったため、スポーツパブでビール飲みながらという訳にはいきませんでしたが、コロンビアとの対戦は気にかけていました。まさか「開始3分で相手が10人になり、直後のPKで先制、追いつかれた後に大迫選手の決勝点で勝利」という展開になるとは思いもよりませんでした。昨日の私に「開始3分で相手DFがいきなり退場して日本が勝つよ」と言っても全く信じなかったでしょうが、下手な小説よりもよほど衝撃的でしたね。まさに真実は小説よりも奇なり。
とにかく、勝ちは勝ちです。最終的に勝てばよかろうなのだ。
あとからハイライトなどを見たら、やはり大迫選手の活躍が大きかったようですね。実際、彼がMOM(マンオブザマッチ)です。彼以外のメンバーも素晴らしかったですね。

ラボのみんなと「日本勝ったね~」「そだね~」と喜びを分かち合いました。うちのラボにはなぜか日本の優勝に賭けているデンマーク人ポスドクの女性がいるのですが、彼女もとても喜んでくれていました。また、今回は残念ながらW杯出場を逃したイタリアから来ている博士課程学生の女性も「おめでとう」と喜んでくれました。

昨日の大阪の地震で不安を感じていらっしゃる方々を励ますような勝利でしたね。

2018 Osaka Earthquake

2018-06-18 | 2018年イベント
6月18日7時58分頃(日本時間)に大阪府北部で発生した地震について、英国でもBBCなどで報じられています。多くの方々が怪我を負われ、数人の方々が亡くなられたのことですね。ご冥福をお祈り申し上げます。
なんと震度6だったとのことですから、幸いにも怪我などを負われなかったとしても、家や仕事先などがめちゃくちゃになってしまった方々も多かったのではないかと思います。

阪神淡路大震災は子供心にとても印象深いものがありました。
私の家の近くにも、あの震災後に神戸から避難してきたとのことで、引っ越してきた子がいたのでした。彼は今どうしているだろうかと、ふと思いました。今回はあの時ほどの被害ではなさそうとのことですが、まだ地震が続く恐れは十分にありますし、決して油断は出来ないですね。

Londonにて 其の2

2018-06-16 | 2018年イベント
今日は英国の首都ロンドン Londonを流れるテムズ川 River Thamesの船旅を楽しみました。

私は幾度かLondonに来ていますがテムズ川クルーズをしたことがなかったので、今回は家族を連れてウエストミンスター Westminsterからグリニッジ Greenwichまでテムズ川の旅を楽しみました。ロンドンをご存知の方でしたら「ああ、そのルートね、はいはい」と思うのかもしれませんが、普段ベルファスト Belfastみたいな田舎にいる私は、大都会の真ん中を船に乗るだけでなんだか嬉しくなってしまったのでした。この時期のロンドンはとにかく花粉(?)が酷くて船旅中もHay feverが辛かったですが、それさえ除けば実に素晴らしい体験でした。
私が医学生だった頃、同学年の方がオックスフォード Oxfordに海外派遣留学されたことがあって(オックスフォード大学ではなく、ブルックリン大学の方)、その時に彼女がロンドンでテムズ川クルーズに乗った写真を見せてもらったことがありました。その時も好天に恵まれて、楽しくロンドン市街を見学できた様子でしたが、それを見て私も「羨ましいな」と思ったものです。そして、いつか自分も乗ってみたいなと。
その想いがようやく実現できました。

ウエストミンスターといえばたいへん有名な大聖堂がありますね。そこからビッグベン時計塔(残念ながら現在改修中でした)を横目にして、テムズ川の方に進むとロンドン・アイという大観覧車があります。天気の良い日に乗ることが出来れば街を一望できます。
ウエストミンスターから船に乗り、テムズ川から両岸のロンドン市街をゆっくり見物し、上の写真にあるようなタワーブリッジ Tower Bridgeをくぐりながら、1時間弱をかけてロンドン南東部のグリニッジまで到達したのでした。
グリニッジは王立天文台が有名で、現在最も世界で広く用いられているグリニッジ標準時GMT (Greenwich mean time)の基準となる経度0度線は、この天文台を通るように設定されています。まさに大英帝国の首都こそが「世界の時間の基準である」というわけですかね。中学受験の対策時に、「経度は英国のグリニッジ天文台が基準である」という問題がよく社会科で問われていたのを思い出しました。

昨夏、うちのラボに短期滞在していた某日本人留学生は「ベルファストには1ヶ月もいれば十分ですね」と言っていました。たしかにベルファストはこぢんまりとしていてすこし物足りない感があるかもしれませんが、ロンドンはベルファストと比べると見るところが一杯あり、さすがは世界屈指の大都市というべきなのでしょう。いつ来ても、色々な発見があって、楽しいです。

どの街にも、それぞれ固有の顔があるものです。英国の色々な街の顔をもっともっと見てみたいなと改めて思いました。


 

Londonにて

2018-06-15 | 2018年イベント
家族が欧州旅行で英国へ来たので、15日から私もロンドン Londonへ会いに来ています。

英国北アイルランド首都ベルファスト Belfastから飛行機で1時間15分くらいの距離ですが、格安航空会社 LCCで航空代をケチると郊外の空港を利用することになるため、移動には結構な時間がとられてしまいました。朝出たのに、ロンドンに着いたのは昼近くです。
私の指導教官は様々な用件で毎週のようにロンドン出張しているのですが、こんな移動をいつもいつもよくやっていらっしゃるものだと、ちょっと感心してしまいました。

ということで、久しぶりにロンドン散策をしました。
日本と往復する時にいつもヒースロー空港を経由しているので、ロンドンに来た回数はそれなりに多いはずですが、あまり街中を真面目に観光した記憶はありません。昔、オックスフォード Oxfordを訪ねた時に、数日間ロンドンに滞在したことがありますが、たぶん観光らしい観光はその時くらいだけでしょうか。
観光客なのか、地元民なのかは判りませんが、かなり日本人の姿を多く見かけました。やはり、在英日本人の多くはロンドンに集中しているのでしょうかね。

上の写真は聖マリア病院 St. Mary Hospitalです。
この病院はアレクサンダー・フレミング卿 Sir Alexander Flemingによってペニシリンが発見された場所として医学史に名前を残しています。彼のペニシリン発見にまつわる逸話は世界に広く知られており、アオカビが黄色ブドウ球菌の培地にたまたま付着したという話は有名ですね。その後、ハワード・フローリー博士 Dr. Howard Floreyとエルンスト・ボリス・チェーン博士 Dr. Ernst Boris Chainのオックスフォード大学のグループによって、ペニシリンは精製、製薬化されて、第二次世界大戦において英国含む連合国側の勝利に大きく貢献したとされています。1945年にこの3人はノーベル生理学・医学賞の栄誉に輝きました。
言うまでもなく、ペニシリンは世界で一番最初の抗生剤です。ここから人類と病原菌の絶え間ない争いが始まったと言えるでしょう。そのような歴史的な場所というのがロンドンには多くて、あちこち見て回るのはやはり面白いですね。

 


ベイカー街 Baker St.を通ってシャーロック・ホームズ博物館に足を運びました。思ったよりも小さい博物館でビックリしました。その後は、ハイド・パーク Hyde Parkへ。地図で見るよりも遙かに広く感じる公園です。ロンドンの公園と言えばハイド・パークですが、私は生憎の花粉症で、公園には長く滞在できませんでした。おそらく芝か何かの花粉だと思うのですが、ちょっと無念でした。

まあ、一言でいうと、観るべき場所が多過ぎです。
さすがはロンドン。

W杯ロシア2018と日本代表チーム

2018-06-11 | 2018年イベント
今日、うちの研究センターの事務の人とたまたまサッカーW杯の話になり、「日本のナショナルチームはグループリーグで勝てそうかい?」と無邪気に聞かれたので、「Maybe」と無駄にキムタクの真似しながら答えてしまいました。

英国からはイングランド代表だけが参加ですが、普段は北アイルランド代表を応援している彼も、今回はイングランドを応援しようかなとのことでした。「ロシア開催だから、勝てるか判らないね」と言ってましたが、イングランドは順当に行けば決勝トーナメントへ進出できるでしょうから、すこし羨ましかったですね。
私は賭け事はしないのですが、ブックメーカー Bookmakerなどではすでに色々と盛り上がっているようです(日本の倍率は悲しくなるので見たくありません)。うちの研究センターにもEU諸国からの留学生やポスドクがそれなりに多いのですが、彼らもすこしずつソワソワしてきたような印象です。とくにうちのラボのポルトガル人たちは楽しそうです。

W杯が近づくと「にわかサッカーコメンテーターが増える」のは、日本国内に限った話ではなく、ここでもそうみたいですね。ラボでもみんな「あ~でもない、こ~でもない」と色々言っているのを耳にします。元フットサル部の私も、まともなサッカー歴なんてないくせに、色々と日本代表については思うところを述べたくなってしまいます。

Maybeとか言っちゃいましたが、個人的には、今回のW杯はかなり悲観的に見ています。もちろん、日本代表には勝ち進んでもらいたい気持ちがありますが、正直言えば、今回は「まあ、無理だろべ~」と思っています。6月19日に日本代表対コロンビア代表の試合があるそうですが、W杯の檜舞台で屈辱的な一方的展開にならないことだけを祈っています。

ハリルホジッチ監督をわずか2ヶ月前にああいう形で解任して、本田選手や岡崎選手や香川選手や長友選手や長谷部選手や川島選手などのこれまでと大して代わり映えしないどころか年齢的にはむしろパフォーマンスが劣化しているだろうという選手たちを代表に残したわけですが、世界中の超一流が集まる大会目前でこんなことをしていたら普通に考えれば勝つのは無理でしょう。もしこんな体たらくで勝ててしまったら、むしろ他国代表が「どんだけダメなんだよ」という気さえします。たとえ監督交代のドタバタがなかったとしても、2014年に勝てなかったメンバー構成をほぼ踏襲したところで、世界で勝つのは厳しいのではないでしょうかね~。

今の日本代表にはもはや絶対的スターなんていないのですから、むしろ喧嘩両成敗という口実で旧い日本代表メンバーを一掃して、新しくフレッシュなメンバーでやった方がまだ良かったのではないかと個人的には思います。おそらくハリルホジッチ監督は選手をかなり入れ替えるつもりで色々試していたために、危機感を抱いたベテラン選手たちから反発されたのではないでしょうか。
しかし、2010年のように中村俊輔選手などのベテラン勢をサブに回したように、今回のW杯も本田選手などをサブに回してでも、フレッシュな若手を試すべきだったでしょう。たとえ大敗したとしても、若手が大舞台を体験してくれた方が将来に活きるという意味もありますから。もしかしたら1998年の中田英寿選手のように、W杯をきっかけにして世界に羽ばたくような、驚くべき新スターが若き日本代表からどんどん出たかもしれません。

サッカーに限らずとも、どの分野においても、今の日本は若い人達がかなり頑張っていると思います。
最近、将棋の藤井七段、野球の大谷翔平選手など若手とよばれる方々の驚嘆すべき活躍が目をひきます。おそらくはサッカーも同様なのではないでしょうか。機会さえあれば才能ある若手がどんどん出てくるようなことはないでしょうか。今回のW杯の日本の窮地を脱するのに、若い選手たちの力がうまく引き出される展開になればいいなと願っています。

Spring Bank Holiday 2018

2018-05-28 | 2018年イベント
今日はスプリング・バンク・ホリデー Spring Bank Holidayと呼ばれる英国(北アイルランド含む)の公休日です。5月に2つあるBank Holiday(文字通り銀行が休みとなる日で、いわゆる公休日に相当する)の後半にある方ですね。
しかし、なぜか本学は休みではありませんでした。
本学はさらにSummer Bank Holidayも休みではなく、Early May Bank HolidayもあくまでMay Dayということで休日に指定しており、Bank Holidayを無視しているような印象です。その理由はよく判りませんが、Bank Holidayは基本的に月曜日なので、「年間で月曜日が少なくなる」現象を回避する為には良いような気もしますね。日本では移動休日がやたらと多く、週単位で考えたときに月曜日が明らかに少なくなるという弊害があり、月曜日の業務を遂行する上で病院や大学では色々と困ったことがあったような記憶がありますから。

というアレで、なんとなく休みの気分のままラボに行って、これまでのデータをまとめていました。振り返ると、英国に来てからは色々なことがあり、書きかけの論文や現在進行している実験データなどを見ていると感慨深いものがありました。
明日はラボミーティングで私の発表の番になっていて、20~30分程度で研究の進展や問題点などを報告し、ラボ全体で討論することになっています。2~3ヶ月に一度この順番が回ってくるのですが、自分自身でも毎回「どのくらい前へ進んだか」を確認する意味で、いい契機となっています。また、英会話の練習に好適というのでしょうか、私もまだまだ英語運用能力は拙いのですが、ラボ内で討論する分にはなんとかなるというか経験は積めてきたような気がしています。

来月には本学で開催する国際学会もあり、幾つかの申請事項の締め切りも迫っていて、色々と忙しいです。立ち止まらずに済むのであれば多少の忙しさも歓迎すべきかなと、最近、そんなことをふと思ったりもしますね。

アイルランドで人工中絶禁止法が撤回される

2018-05-26 | 2018年イベント
本日、アイルランド共和国で実施された国民投票の結果が発表され、人工中絶禁止法が覆されました。アイルランド共和国、英国ではこのニュースがトップに飾っています。
私は全く存じませんでしたが、アイルランドでは女性の人工中絶は「女性が命の危機に瀕する限りの除いて」基本的に禁止だったのでした。例えば、レイプ事件の被害に遭った女性が望まない妊娠をしてしまったとしても、人工中絶は法的に禁止ということです。そのような状況なので、以前には、アイルランドでは中絶が(法的に)出来ないことから、わざわざ英国へ渡ったという話もあったようです。
日本と欧州の宗教観の差異もあるのでしょうが、21世紀の今日に至るまでこのような法律が機能していたというのは、日本で医療に携わってきた者として少し驚きを感じました。

私は、医学部、研修医時代を通じて、実は人工中絶に立ち会ったことがありません。人工中絶術は医師に必須の技術ではなく、したがって教科書レベルでしか私も知識がありません。おそらく人工中絶の施術は産科の中でもかなり特殊な領域だと思います。
中絶を人殺しと同義であると主張される方々もいらっしゃいますが、日本では人工中絶が可能な期間が法的に設けられていて、それを選択する方々が少なからずいます。私も人工中絶された方と会ったことはありますが、だからといって何か特別な対応をしたわけではなく、他の女性と何ら変わらないと思っています。

中絶の可否については、もちろん母親となる女性の意思を尊重してあげたいのですが、医療的に最も安全と考えられる選択も考慮すべきですし、さらには「生命とは何か」という生命倫理上もっとも重要な論点を含んでおり、容易に結論できません。
とくにキリスト教の教義の中に「受精した瞬間からヒトの命と見做す」というものがあり、受精卵はもちろん、受精能がある卵子の扱いなどは生命科学・医学においても細心の注意が求められています。ヒトの命を尊重するのは当然ですが、「どこからヒトなのか」を考えるのは非常に難しく、人によって判断が分かれるところなのですね。出産後の赤ちゃんはもちろんヒトであるとして、胎児のどの段階からヒトとして考えるべきか。

中絶法についてですが、私としては今回のアイルランドの判断は妥当なのではないかというのが率直な感想です。しかし、1/3以上の方々が反対票を投じていることの意味もよく考えなくてはいけないのでしょうね。

たまには音楽でも ~Summer Concertへ行ってみた

2018-05-23 | 2018年イベント
最近、気温の高さは北アイルランドにしては尋常ではなく高く、もうすっかり夏になった心地がします。街中を歩くと軽く汗ばむほどです。異常気象のレベルではないかと疑っているのですが、地元の方に聞いたら「スペインみたいだね」とのこと。この陽気さが北アイルランドクオリティーという気がします。

今日は友人に誘われて、本学オーケストラのSummer Concertへ行きました。学生主体のシンフォニー・オーケストラで、本学の場合50人くらい構成員がいるとのことですが、コンサートを訪ねたのは初めてでした。
私も一通り試練が「色々な意味で」終わったので、気分転換もかねてクラシックでも聴きにいこうかという気軽な感じで足を運んだのですが、思いがけずなかなかレベルが高い演奏を聴くことが出来て、とても良かったです。音楽にうるさい友人も「アマチュアレベルにしてはまあまあ」との評で、まあ、ご満悦の様子でした。

いつも遊んで暮らしている訳ではありませんが、まあ、たまにはね。

Royal Wedding 2018 ヘンリー王子とメーガン・マークルさんの結婚式

2018-05-19 | 2018年イベント
本日19日はロイヤル・ウェディング Royal Weddingの日です。ヘンリー王子 Prince Harryと元女優の米国人女性メーガン・マークルMeghan Markleさんの結婚式が挙げられます。会場にはGeorge and Amal Clooney夫妻や、David and Victoria Beckham夫妻などの有名人ゲストも集まっているようです。
米国人女優が君主一族と結婚というと、モナコ大公と結婚したグレース・ケリー Grace Kellyさんの例が有名ですが、今回の新たなプリンセスストーリーもなかなかセンセーショナルでした。新婦には離婚歴もあり、昨年の婚約以来様々な報道がされてきましたが、ついにゴールインですね。
上図のように、Googleでもこの結婚式を讃えて、ロゴ絵が専用のものに変更されました。

ヘンリー王子は結婚に際して、エリザベス女王から新たな爵位も贈られています。先日の新王子誕生といい、英国王室では慶事が続いていますね。

DNA二重らせん構造をめぐる物語

2018-04-25 | 2018年イベント
本日4月25日は、Nature誌に、あの「ワトソンとクリックのDNA二重らせん構造」論文が掲載された日です。

WATSON JD, CRICK FH. Molecular Structure of Nucleic Acids: A Structure for Deoxyribose Nucleic Acid. Nature 171, 737–738 (25 April 1953).

わずか1ページ程度の内容ですが、今から65年前の1953年に発表されたこの短報は、20世紀で最も重要な論文の一つと言われます。この偉大な業績によって、James WatsonとFrancis Crick、そして「第三の男」Maurice Wilkinsは1962年にノーベル賞の栄誉を受けることになりました。

しかし、自称・正直者であり、ある意味で恥知らずでもある、ワトソンの自著によって、この素晴らしい発見の陰には1人の女性科学者の貢献が大きかったことが広く知られるようになりました。
そう、ロザリンド・フランクリン Rosalind Franklinです。
ここではフランクリンの功績が如何にして無視されたかという点には触れませんが、65年前のケンブリッジで起きた出来事は一つの人間ドラマとして非常に興味深いものがあります。もし興味がありましたら、ぜひ調べてみて下さい。

さて、そのDNA二重らせん構造の解明とフランクリンの功績を称えて、本日、うちの大学院でも特別講義が開催されます。
DNAが遺伝情報の記憶媒体であることが判明し、DNAに切り込む分子生物学の様々な研究成果によって、今日、遺伝子と疾患の関係性についての理解はかなり進みました。それこそ65年前とは医学者たちの目前には全く異なる光景が広がっています。そして、患者さんひとりひとりの特徴に合わせた「精密医療 Precision Medicine」は、現在、世界を席巻しています。このようにDNA構造の解明は今日の社会の在り方に大きな影響を与えています。
特別講義でどんな内容が語られるのか楽しみです。


Royal Baby 第二王子誕生

2018-04-23 | 2018年イベント
イングランド守護聖人を祭る「聖ジョージの日」である本日23日、キャサリン妃は3人目のお子さんとなる第二王子を出産しました。BBCでも速報が流れ、Royal Babyの誕生を祝福する雰囲気が広がっています。

この王子の王位継承権は第5位であり、英国女王エリザベスⅡ世にとって6人目の曾孫になります。日本の皇室は世代的にまだ当分は新しい赤ちゃんは産まれないだろうと思われますが、こちら英国の王室は新しいカップルも誕生したばかりですし、しばらくは小さい子供たちを温かく見守る時間が続きそうですね。
北アイルランドは、あまり大騒ぎする空気ではなく、王子の誕生を静かに祝福しているようです。私は、5年前にジョージ王子が誕生した時もたまたま英国に滞在していましたので、正直、今回の誕生は「またですか」という感じがしますね。

子は生まれを選べません。
英国の王室に産まれることは幸運か、あるいは不運か。
その意見はもしかしたら分かれるのかもしれません。
何はともあれ、新しい生命に幸あれ。

ベルファスト合意から20年

2018-03-30 | 2018年イベント
本日は復活祭(イースター Easter)前の聖金曜日 Good Fridayです。

イースターが暦上変動するため、この聖金曜日も変動するのですが、今年は今日が聖金曜日に当たります。1998年の聖金曜日にここベルファスト市庁舎 City Hallにて、英国とアイルランド共和国の間でベルファスト合意が為されました。その後、アイルランド共和国は北アイルランド6州の領有権主張を放棄し、共和国憲法を改正しました。
その政治的動向によって北アイルランド紛争は、現在、一応の解決をみています。平和を取り戻した英国領北アイルランドの首都ベルファスト市はその後、EU(欧州連合)からの援助を受けて、一転、経済都市、観光都市として変貌を遂げてきました。

歴史的な今日の午後、市庁舎前まで散歩してきました。相変わらずと言うべきか、観光客も含めて、多くの人々で賑わってきましたが、市庁舎は厳粛な雰囲気に包まれていましたね。

実は、恥ずかしながら、私は20年前にこのベルファスト合意という一大イベントがあったことをこの地に来る直前まで覚えていませんでした。たしかに当時も生きていたはずなのですが、北アイルランドが日本から遠く離れていたこともあって、ほとんど関心の外にあったのでしょう。1998年と言えば、長野オリンピック、フランスFIFAワールドカップ、Windows98発売などがあったことは覚えていたのですが。

ベルファストは、英国のEU離脱(Brexit)を控えて色々と不穏な情勢もあるのかもしれませんが、今はただ平和の素晴らしさに感謝したいと思います。願わくば、この穏やかな時間が末永く続かむことを…