「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

聖パトリックの日 St. Patrick's Day 2018

2018-03-17 | 2018年イベント
本日3月17日は聖パトリックの日(St. Patrick's Day)でした。
Belfastでは残念ながら粉雪が舞うほどの寒い1日となりましたが、緑のコスプレに身を包みながら、アイルランドの聖人である聖パトリックを祝う人たちが街中で多く見かけられました。
上の写真のように速報が流れていましたが、Six Nations(6カ国対抗ラグビー国際大会)においてアイルランド Irelandが宿敵イングランド Englandを撃破し、アイルランド系の人たちにとっては喜びに沸く1日になりました。

 


昨年はちょうど聖パトリックの日に移動していたので、Belfastがどんな様子なのか判らなかったのですが、今年は暇だったので街中をぶらぶら散歩してみました。あちこちにアイルランド国旗を身にまとった人たちや、緑のコスプレをしている人たちがいました。寒かったので、カフェやパブが大繁盛で、店内にはコスプレを来たまま談笑する方々が目につきましたね。
家族連れから若者の集まりまで、アイルランド系やそうではない人たちも含めて、純粋にアイルランドの祝日をお祝いしている人たちもいれば、アイルランド独立推進派と思われる方々もいました。



市庁舎 City Hallの前では、アイルランドの祝日にもかかわらずユニオニスト(英国派)の方々がいつものごとく睨みをきかせていました。彼らは毎週日曜日などに市庁舎の前にユニオンジャック(英国旗)を掲げて北アイルランドが英国領であることをアピールしているのですが、今日も今日とてユニオンジャックを並べていましたね。
アイルランド独立推進派との衝突を回避するために周辺は警察官がびっしりでした。

聖パトリックの日に合わせて国際パレードがBelfastでも開催されたのですが、私は残念ながら観ることなく、あまりの寒さに震えながら帰宅しました。まあ、機会があれば、また来年。

ホーキング教授の死去

2018-03-14 | 2018年イベント
車椅子の理論物理学者として知られたスティーブン・ホーキング教授 Prof. Stephen Hawkingが亡くなりました。
ケンブリッジ大学の看板である「ルーカス数学教授職 Lucasian Professorship of Mathematics」に就任した、20世紀から21世紀にかけての時代を代表する宇宙物理学者でした。ルーカス教授位はあのニュートンやディラックが就任したことでも有名で、必ずしも数学者が就くわけではありませんが、その時代を代表する数学・化学・物理学者が就くことになっています。つまり、ホーキング教授もまた、科学史に燦然と名を残す人たちと同じ高みにある人物だったのかもしれません。
BBCでもこの偉大な科学者の死をトップで報じています。

ホーキング教授が罹患していた「筋萎縮性側索硬化症」は日本では指定難病の一つになっています。残念ながら、進行を遅らせるのが精一杯で、現在も根治はできません。私は彼の分野である宇宙物理学、理論物理学についてはよく知りませんが、この病気と闘いながら研究を続けた彼の姿には、正直、頭が下がるような思いがします。
ご冥福をお祈りします。

3.11から7年

2018-03-11 | 2018年イベント
今日は3月11日ですね。あれから長い月日が経ちました。
忘れてはいけないこともありますが、忘れないと前へ進めないこともあると思います。

私は被災地を離れ、為すべきことを為そうと思って、色々とあがいてきました。
疲れていないと言えば、それは嘘になるでしょう。
私の旅も、もうすぐ、終わるような気がしています。

Storm Emmaの恐怖

2018-03-01 | 2018年イベント
今日も今日とて、気温は氷点下に冷え込み、雪が降っています。
英国気象庁では英国全体に警報が発令されており、ここBelfastにも「Potential Risk to Life and Property」の警報が出ているようです。簡単に言うと「死ぬかもしれへんから、まぁ、気いつけてな」ということです。BBCの天気予報ニュースなどでもかなり広範に警報が発令されているのが判りますね。
もうだめだぁ、おしまいだぁ。

聖バレンタインデー St. Valentine's Day

2018-02-14 | 2018年イベント
え~、今日はバレンタインデーです。
宗派によって若干異なるものの、多くの宗派で聖人とされているヴァレンタイン Valentineが269年2月14日にキリスト教の信仰を捨てなかったために絞首刑に処せられたという言い伝えがあり、それに基づいて本日が記念日とされているそうです。なぜかこのヴァレンタインと恋人とが結びつき、バレンタインデーは恋人たちにとって特別な日となったようです。つまり、リア充どもが爆発すればいい日ということですね。
私の古い友人は「性癖バレタライカンデー」とかつて言っていました。その後、彼は大学卒業後に割と早く結婚しました。一体どんな特殊な性癖なのか今も謎ですが、怖くてちょっと聞けませんでした。

さて、日本の男性の皆さん、チョコレートはもらえたでしょうか?
一説によると、この日にチョコレートを贈り物とする習慣は英国が発祥とのことです。しかし、英国ではべつに女性から男性に送られるものと決まっているわけではなく、親しい人たち同士でカードや花やチョコレートを送り合ったりすることになっています。私も何人かの方々にチョコを送ったり、送られたりしました。
写真は、今日頂戴したバレンタインデーギフトです。折り紙でハートまで作って頂きました。もらうとやはり嬉しいものですね。
ありがとうございました。

春節 2018 in Belfast

2018-02-11 | 2018年イベント
え~、春節(旧正月)は中華圏では祝日だそうですね。
今年は2月16日だそうです。

正月と言えば、初詣、おせち料理、そしてお年玉です。もう、お年玉をもらう立場ではなく、あげる立場になってしまいましたが、正月休みのどこかワクワクした感じというものを今も覚えています。新暦になれてしまった日本人としてはピンと来ませんが、本日、すこしばかり早く新年戌年を祝うイベントがここ Belfastでも開催されました。

Belfastでは中華圏だけはなくインターナショナルなイベントとして、各国の楽しい催し物がアルスターホール Ulster Hallで披露されました。例えば、日本からは盆踊りチームが出場しました。

今日、私も知人の応援に行きました。

もちろん、日本の方々のパフォーマンスも素晴らしかったですが、各国出身者の方々による演技も素晴らしいものがありました。伝統芸能だけでなく、地元の人たちのブレイクダンスも大人から子供までキレッキレッの動きで魅了されました。
素晴らしいは素直に素晴らしいと言うことにしましょう。
古畑任三郎でした。

冬季オリンピック開幕

2018-02-09 | 2018年イベント
本日から冬季オリンピックが開幕しました。
軍事的緊張のある地域で開催されることを不安視する声もあったようですが、2018年の冬季オリンピックがなんとか無事に開催される運びとなったのは良かったのではないかと思います。
BBCでもオリンピックに関する報道がされていますが、日本のフィギュアスケートのペアが演技にアニメソングを採用したことが話題になっています。『ユーリ on ice』という日本のアニメらしいのですが、日本人でありながら私はそんなアニメが放映されていたとは知らず、すこし恥をかきました。それはともかく、日本代表選手には全力を尽くして、4年に1度の国際舞台で頑張って欲しいと願います。

海外に居ると、愛国的な気分になることがよくあります。ろくに日本を知らない外人に日本のことを揶揄されると怒りを覚えますし、日本の良いニュースを聞くと嬉しく感じるものです。おそらく、これは私だけの感覚ではないと思います。
別にメダルを取らなくてもいいのですが、今回のようにある種の日本らしさを世界にアピールするのは面白いですね。オリンピックの今後においても日本人の活躍に期待します。
ガンバレ日本!(^^)!

世界対がんデー World Cancer Day

2018-02-04 | 2018年イベント
本日2月4日は「世界対がんデー World Cancer Day」です。
国際対がん連合 Union for International Cancer Control (UICC) が導入したもので、世界各国でがんに関する啓発行事が行われます。ここBelfastで何か特別な行事が行われていたかどうかは気づきませんでしたが、私の所属する研究センターではがん研究を行っていることもあり、受付にチャリティー関連のものが置いてありました。£2のUnitiy Bandを購入することで寄附出来るという仕組みです。

日進月歩の医学において、「がん」はかなり治療出来る範囲が広がったものの、未だに根治は難しい病気の一つです。この病気は遺伝子発現異常の蓄積によって生じるものであり、それは加齢と密接に関係します。「加齢とは何か」という問いに答えるのは現在の医科学ではまだ難しいのですが、その特徴の一つに遺伝子発現異常の蓄積があることは判っています。つまり、年老いれば、誰でもがんになると言えます。実際、超高齢社会が進行する日本において、2人に1人はがんに罹患しており、3人に1人はがんで亡くなっています。
なんとか治したいと医療人ならば誰もが思うことですが、一方で「高齢者ががんになったとして、それはもはや天寿と言うべきなのではないか?」という意見もあります。例えば、平均寿命を超えている95歳の患者さんに新たにがんが発見されたとして、それを一生懸命に治すために、抗がん剤による化学療法、手術などの外科療法、そして放射線治療、最近ではこれに免疫療法が加わりますが、そのフルセットを全力全開で行うべきなのかどうか。そもそも、その高齢者さんの体力では耐えきれない治療もあるかもしれません。このような状況でどうするべきなのかは、医療従事者の中でも意見が分かれることでしょう。おそらく「対症的な治療(つまり根治は目指さない治療)」を勧める医療従事者が多いのではないかと思います。

がんを征圧するというのは医学(Science)的にも医療(Art)的にもとても難しいです。
私は、かつて腫瘍学の研究に取り組めば取り組むほど、その征圧の難しさに打ちのめされるような気持ちになりました。しかし、がんで苦しむ患者さんに接する度に「これをなんとかしたい」という思いにも駆られました。現在、世界中の研究者、医療従事者の懸命の努力ですこしずつがん研究・治療は発展していますので、私もこの発展に貢献をしたいと心から思っています。

これまでの研究から「がんを治すよりも、そもそも、がんにならないように予防する方が良い」という見解もあります。
簡単に言うと、遺伝子発現異常につながるような行動を抑えることです。例えば、喫煙、飲酒などを控えることです。喫煙と発がんの関係は厳密には明らかになっていませんが、疫学的には因果関係は明らかであり、おそらくこれらは身体の細胞に与えるダメージが大きく、DNAに変異が生じたり、正常な遺伝子の発現を損なうのだろうと考えられています。
がんを征するのは、まだたしかに難しいのですが、身近に出来ることから始めるのは良いですね。

スーパームーン

2018-01-31 | 2018年イベント
本日はBelfastでも、皆既月食は観察出来ませんでしたが、スーパームーンは一時的に観察出来ました。雪交じりの雨が一日中降っていたので、今日は月が見えないかもしれないと思っていたのですが、夕方にDublinからいらっしゃった知人と食事をした帰り道、すこしだけ雲の切れ目から明るい月が顔を見せてくれたのでした。
さすがスーパームーン!
本学が誇る本校舎のちょうど裏に見えた月はとても幻想的でした……

クローン猿

2018-01-25 | 2018年イベント
クローン猿が出来た件は、もちろん、こちらでも話題になっており、BBCも採り上げていました(参照www.bbc.co.uk/news/health-42809445)。おそらく世界の生命科学・医学界に衝撃を与えたニュースでしょう。中国の研究者たちがCell誌(山中教授がiPS細胞論文を初めて掲載したのもこのジャーナルでした)に発表した論文は電子版が公開されていますが、やはり驚きを覚えましたね。

Liu Z. et al. Cloning of Macaque Monkeys by Somatic Cell Nuclear Transfer. Cell. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2018.01.020

Dorry the Sheep クローン羊ドリーの衝撃から20年以上が経過し、クローン技術はついに霊長類にまで及びました。ヒトでも出来るというか、もう、何処かで出来ているのかもしれませんね……

京都大学iPS細胞研究所の論文不正問題

2018-01-24 | 2018年イベント
山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所(CiRA、サイラ)の論文不正問題がScienceのHPでも採り上げられています(参照www.sciencemag.org/news/2018/01/nobel-laureate-suggests-he-could-resign-leadership-post-over-colleague-s-bogus-paper)。そして、山中所長が引責辞任の可能性を自ら提案したことについて「事件の深刻さを強調する目的があるのではないか」という見方を紹介していました。

本件について、日本の有識者の方々のご意見もすこし見てみましたが、色々な見方が存在するようですね。
個人的な意見を言えば、山中所長は当該論文の著者に含まれていないので不正に対する責任をとる必要はないとは思いますが、たしかにCiRA所長を辞任すれば研究所内の風紀粛正にはつながるかもしれないとは思います。
そして、そのまま京都大学の一教授として、もっと現場に近いところで活躍してもらえばいいのではないかとも思うのですね。マネジメントが主な仕事になる所長職ではなく、iPS細胞研究をより直接的に牽引できるラボ主宰者の立場の方が、ノーベル賞を受賞した研究者としての力量がより発揮されて、結果として、日本のiPS細胞研究がより活性化されるかもしれません。

世の中から犯罪が決して無くならないように、研究業界から不正は決して無くなりません。しかし、それでも犯罪を極力少なくするための治安維持の試みが重要であるのと同様、研究不正を減らしていく努力も続けていくべきでしょう。
今まさに栄華を極めたノーベル賞受賞者が自身の進退をかけて警鐘を鳴らそうとしています。その心意気を賞賛します。

明治150年

2018-01-02 | 2018年イベント
あけましておめでとうございます。
今年2018年は平成30年であり、明治150年に当たる年でもあります。明治維新を振り返る催しが日本国内でも色々と行われていることと思いますが、私もこちらで引き続き、明治期に西洋医学を日本へ導入した英医ウィリアム・ウィリスの調査を行っています。

先日、エニスキレン Enniskillenの学校に調査協力を依頼しました。これからウィリスの幼少期について迫っていくつもりです。ウィリスの伝記などによって、彼がグラスゴー大学へ進学、後にエジンバラ大学医学部課程に転学し、外科医になったことはよく知られているのですが、大学へ進む前の彼の幼少期については判っていないことが多いのです(あまり幸福ではなかったようですが)。知られているのは医師だった長兄の援助によってウィリスも医師になったということくらいでしょうか。
鹿児島大学医学部関係者のご尽力によって、ウィリスのことはこれまでにも色々と調査が進められてきました。ウィリスの子孫に当たる方々は今も日本に住んでいらっしゃるようです。私も研究の合間にではありますが、すこしこの医学史的な調査にご協力できることがあればと思っています。明治150年に明治期にもたらされた西洋医学の源流について新たな何かが判ればいいですね。

もちろん、放射線研究も鋭意進めていきます。
実は、昨年まで積み重ねた実験結果から、すでに新しい事象を見出しています。一流誌であるNatureやScienceで発表できるほどかと言われると正直自信はありませんが、福島被災地などに見られる低線量放射線被ばくを考える上で有意義なデータであることは間違いありません。
昨年12月に学会発表した時や、所属医局ですこしお話しした時は、残念ながら諸事情により紹介しなかったのですが、実は、共同研究者の先生方、放射線医学の大御所の方々にはこの新しい事象について相談することが出来まして、すでにある程度の手応えをつかんでいるのです。今年はこの成果をなんとか論文として発表したいと願っています。
問題の一つは「再現性」です。小保方晴子氏が「あります」と叫んで、しかしついに再現できなかったSTAP細胞論文が提起したように、新しい事象を報告するときに大事なことの一つは「誰がやっても報告通りの手順通りにやれば再現できること」なのです。私も今回見出した事象はすでに慎重に検討し、ある程度の再現性までは確認できています。ただ、メカニズムがよく判らない部分が残るのです。もちろん、山中伸弥教授のiPS細胞のように「詳細なメカニズムは不明だが、とにかく創ることが出来る」という点を高く評価されることもあるのですが、今回の私たちの研究は放射線を使ったものですからより慎重な議論が必要な類になるでしょう。
様々な問題と取り組みながらも、なんとか前に進みたいと願っています。

今年も微力を尽くしたいと思います。