一寸の兎にも五分の魂~展覧会おぼえがき

美術展のおぼえがきと関連情報をすこしばかり。

「士女遊楽図屏風」がおもしろい、「湯女図」と初期風俗画展@MOA美術館

2013-04-18 | 展覧会
先日、熱海のMOA美術館へ行ってきました。

お恥ずかしながら、今回、はじめてうかがいます。

お目当ては、「『湯女図』と初期風俗画展」。MOA美術館が誇る江戸初期、岩佐又兵衛周辺の風俗画がみられるということで、楽しみに行ったのですが……。


(MOA美術館のチラシ)

期待にたがわぬおもしろさ。

展覧会の詳細、展示作品リストについてはリンクのサイトでご確認いただくとして、特に印象に残った作品をピックアップします。

なんといっても、まずは「士女遊楽図屏風」。

「本屏風の右隻では、弓・蹴鞠・双六・囲碁等に興ずる若衆を主に描き、左隻は、内庭で輪舞する男女や湯屋でくつろぐ状況である」(展示室資料より)


そこには、江戸時代初期の「遊び」が具体的に描かれており、1994年に切手趣味週間の図柄として、「将棋、囲碁、双六」の図が選ばれたこともあるようです。

私が個人的に興味をもったのは、左隻の室内と湯屋。

まず、室内の描写で驚いたのは、寝転がって字(手紙?)を書く女性の姿。

リンクのサイトに屏風の全体画像が掲載されいてるので、よくよく見るとわかっていただけますでしょうか(きついかな、こちらのPDFのほうがわかるかも)。

いちおう、私のへたくそな走り書きを載せておきます。



いやー、すみません、変で。でもまあ、だいたいどんな図かはわかっていただけるでしょうか。

それにしても、寝転がって字を書くって、お行儀悪くないですか?

私ですら、子どものころ、やってはいけないといわれたような……。

この頃は、そういうことには寛容だったのでしょうか。っていうか、そういうお行儀が悪いことが許されている状況なんでしょうかね。遊楽図ですし。

そもそも、後ろから男が抱きついているし……。

ちなみに、男女の下半身はくっついていないので、その点はまあなんなのですが。

しかしこれは、どういうシチュエーションなのかなあ。

なんとなく、ぜんぜん関係ないのですが、フランスは18世紀の名著『危険な関係』でヴァルモン子爵が娼婦の裸の背中の上でトゥールヴェル夫人に誘惑の恋文を書くという、あの激烈なシーンを思い出してしまうのですが……(ちょっと違うけど、イメージとしてね)。

あ、でも「娼婦の背中を机にする」のは、ヴァルモン=マルコヴィッチバージョンの映画でのアレンジだったかも。記憶が混乱。スミマセン

まあ、いずれにせよ、これはもちろんそれとは何の関係もないのですが。

なんだか気になる。

想定しうるシチュエーションとしては、「夫が地方に赴任した女が間男を引っ張りこんで遊びながら夫に手紙を書いているの図」かな。

それから、左隻の左側の湯屋。

幾人かの女性が髪を乾かしたり、湯上り姿で座っていたりするのですが、それがなんともなまめかしい。

白い下着(このころも襦袢なんでしょうか、よく知らなくてすみません)から体の線が透けてみえるところなど、よく描けてます。

こういう描写は、歌麿の浮世絵などでは見慣れていますが、こんなに早くにそういうところがきちんと描かれていたとは、勉強不足ながら知りませんでした。

奥が深いな、風俗画。

それにまあ、湯屋で酒を飲みながらくつろいでいるイケメン風の若衆など、実に大胆不敵なポーズでして……、とにかく見飽きないです。

そして最後に気になったのですが、なんだか不思議な前髪の人物が何人かいるのですが、これはこのころ流行った髪形なのでしょうか?



なんかこう、前髪がばさっと束になって顔の前におちかかっているのですが。

もしかしたら、この時代のほかの屏風などにもこういう描写はあるのかもしれません。

ついこの前終わったサントリー美術館の「歌舞伎展」あたりにも似たようなテーマの屏風などがでていたので、よく探せばあったかもしれない、と思いつつ、カタログを買わなかったし、とりあえず保留。

勉強不足で恥ずかしいのですが、おもしろいのであげておきます。

本展のメインの「湯女図」。決して美しいとはいえないけれど、印象的な女性の姿。お尻のラインが妙に色っぽいあたりが……。

ちなみに、「湯女図」は現在ではきれいな掛け軸にしたてられています。

もともとは掛け軸ではなかったものではありますが、現在の表装もなかなか美しいので、その点も着目。

また、「機織図屏風」では働く女性のこめかみのところのほつれ毛がウエーブしているあたり、又兵衛風です。汗ばむと、ほつれ毛ってウエーブするんですよね(悩みの種)。観察力、鋭いな。

また、となりの展示室では、又兵衛の「浄瑠璃物語絵巻」3巻(だったと思います。ちがってたらすみません)や「官女図」が展示されていて、見逃せません。

というわけで、熱海のほうへ遊びにいかれる方も、そういう予定がない方も、江戸絵画に興味がある方もない方も、楽しめると思いますのでお運びください。

海がまた絶景です。



お茶室のある庭も風情があります。





4月24日(水)まで。

********以下美術館のHPより***********


所蔵企画展「湯女図」と初期風俗画【開催中】

2013年3月22日(金)~4月24日(水)

 戦国の乱世が終わり泰平の世を迎えると、現世を謳歌する気分が高まり、絵画の世界においても、それまでの故事や山水などに加え、庶民の風俗や生活が主要な画題の一つとして取り上げられるようになります。これらの近世初期風俗画には、現世に生きる歓びや楽しさが生き生きと描き出され、魅力の一つとなっています。
本展では、重文「湯女図」を中心に、所蔵品から選りすぐった近世初期風俗画を一堂に展観します。「湯女図」は、近世初頭に流行した湯屋で客の垢を流し、髪を洗う女性たちを生命力豊かに描いた作品で、美しい文様の衣裳を身に付けた六人の女性を見事な構図で配し、近世初期風俗画の名品として知られています。このたびの展示では本作品以外にも、京都の市中と郊外を描いた洛中洛外図、野外や邸内で華やかな衣裳を身にまとい歌舞音曲を楽しむ姿を描いた遊楽図、衣桁にかけ並べられた華麗な小袖を描いた誰ケ袖図、来航したポルトガル人の風俗を画題とした南蛮人渡来図など、多様な初期風俗画を展観します。街と人々の華やぎ賑わう姿を是非お楽しみください。







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