一寸の兎にも五分の魂~展覧会おぼえがき

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本日のミュージアムグッズ21 谷文晁画「石山寺縁起絵巻」の絵はがき@谷文晁展・サントリー美術館

2013-07-16 | 展覧会
数日前に、「おもしろ美術帖」の「たにぶん帖」をご紹介した「谷文晁」展@サントリー美術館が、期待以上におもしろいです。

何がおもしろいかって、一人の絵師がここまでテイストの異なる絵を描いたということ。一人で何人分かの顔をもつ絵師といっても過言ではないでしょう。その様子を本展では、「様式のカオス」と呼んでいます。

その多彩ぶりは、チラシに掲載されている4つの作品に顕著にあらわれています。

が、実はこのチラシの裏にも表にも出てこない5つめの顔?が私は個人的に一番好きです。主に墨の濃淡(+淡彩)だけで風景や人物を写生した作品で、本当にラフなスケッチなど、肩の力が抜けていておもしろみがあります(「画学斎図藁」〈田原市博物館蔵〉の西洋人のスケッチなど)。

それはそれとして、谷文晁の業績として忘れてはならないのが、「石山寺縁起絵巻」の復元・補完です。

「松平定信は、古文化財の保存・整理分類からさらに一歩進めて、過去に失われた作品の復元に着手します。「石山寺縁起絵巻」は正中年間(1324-26)に七巻本として企画されましたが、江戸時代に至るまで、巻六・七は詞書のみが存在し、絵を欠いていました。文化2年(1805)、石山寺座主尊賢(そんけん)の強い願いに定信が応え、お抱え絵師の文晁によって補完されました。近年、重要文化財「石山寺縁起絵巻」(石山寺蔵)を文晁が写した模本が当館所蔵となりました。本章ではサントリー美術館本「石山寺縁起絵巻」を修復後初公開するとともに、一切の私意を加えず古様に従い補完の構想を練った文晁の挑戦をご覧いただきます。」(サントリー美術館HPより)

その復元された「石山寺縁起絵巻」のうち、石山寺所蔵のものとサントリー美術館所蔵の模本とが出展されているのですが、サントリー美術館所蔵の絵巻のなかからいくつかの場面が絵はがきとなって販売されており、おうちでも楽しむことができます。



(谷文晁筆「石山寺縁起絵巻」七巻、サントリー美術館所蔵より)


(谷文晁筆「石山寺縁起絵巻」七巻、サントリー美術館所蔵より)

実はショップではこの倍くらいの場面が絵はがきになって販売されているのですが、予算の関係でとりあえず今回はこれだけ。特に気に入った場面を選んできました。

次回は残りを買ってきます。

細部が非常にかわいいです。


上の段、右の槍をぐるぐるまわしているおじさんとか、真ん中の絵はがきの白い竜とか(ファンタジー映画に出てくるようだ)……。

「石山寺縁起絵巻」の復元にあたって、文晁さんはもともと絵巻が描かれた当時の絵巻などを参考にして、「当時のテイスト」を再現できるよう努力したようなのですが、単にそのためだけではなく、自分自身にも「ゆるかわ心」があったに違いない、ひそかに確信しているのであります。


いっぽう、下の段の左の馬が荒波を泳いでいる図などは、波の描写がものすごく迫力があります(これはぜひ、生で見ていただきたいです)。その波にもみくちゃにされそうになりながら、勇猛果敢な白馬にしがみついている女の子は、うってかわって簡略化されたゆるかわな表現……。

このように「石山寺縁起絵巻」ひとつをとっても、絵巻の復元という枠組みのなかで、さまざまな側面を見せる谷文晁。なかなか手ごわい絵師です。

というわけで、駆け足のご紹介ですが、文晁の魅力の一端をお伝えできたら幸いです。

余力があったら、少しずつ追記していきたいと思います。

「谷文晁」展
会場:サントリー美術館

会期:7月3日(水)~8月25日(日)
10:00~18:00 (金・土は10:00~20:00)

毎週火曜日休館










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