企業の経営は、設備など固定資産を持ち、正社員を多く雇い安定的に給与を出すという体制をもっているので、急激な利益の下落を起こさないようリスク管理できていることが望ましい。(資源ビジネスなど外部要因が大きい業種の変動はある程度制御できないと思われる。)
何かを成し遂げようとするのにリスクは不可避だが、その程度は企業ごとに吸収可能な範囲に収めることが安定の基礎である。
経済社会全体でみれば、「今は転職が一般的なので企業が一つ潰れようと他のより優れた企業に人材が移動するだけだから良いのだ」という見方もあるかもしれないが、少なくとも経営層や株主はリスク管理に本気で取り組んでいるべきだ。
そのようなわけで、巨額損失のニュースが報道されるとき第一に気になるのは
・経営陣によってリスクを査定出来ていたのか、
次に気になるのが
・リスク管理体制が作られる為に経営陣や株主は何をすべきか
である。
巨額損失が出たとしても、それは巨額利益を得るためにあえて行なった投資の結果なのだと経営層も株主も納得済みなのであれば、外からとやかく言うものでもないのだと思う。(例えばソフトバンクグループなどはこのパターンに見受けられる。ここについて言えばトータルで勝っていてベンチャー投資の実力を感じさせる)
リスク査定が出来ていたかどうかは、公表されるニュースの中で「〜のせい」と指名されるのが明確に経営トップであるかどうかで判断可能だ。
リスク管理の責任者は、ウォーレン・バフェットの考えによれば経営トップであり、複雑すぎて出来ないなら事業撤退するのがあるべき姿と考え、バフェット自身買収した会社の抱えていた多くのデリバティブを解消したという。(「バフェットからの手紙第4版」)
こうしたリスク管理や、必要ならば撤退まで出来る経営トップを探して投資したり、経営層のこうした対応を株主総会での投票で支持することが株主にとって良い結果をもたらすのは分かりやすいと思う。
そうした経営トップが見当たらない企業の場合、リスク管理体制が作られるために、株主は外部から登用する取締役等の働きかけでトップ交代に期待するか、投資をやめるべきだろう。
会社法の規定からすれば、リスク管理体制の構築は取締役会の責任であり(会社法362条)、有識者として外部からやってきて「リスク管理出来ていない」と気づいた社外取締役は声をあげるべきだ。
バフェットによれば、取締役会が声をあげづらい空気だというのであれば、辞めるのが意見表明になる。
リスクをとって何かを成し遂げようとすることは素晴らしいが、そのリスクを把握して適切に行動することも、両方大事なのだと思う。
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