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英語でも墨絵を教えておりますと、
海外から単独で、墨絵を習いに来て下さる方々と
出会う、貴重な機会に恵まれます。
2時間の墨絵のお稽古の間に、
おしゃべりをしたり、あるいは、休憩をはさんで
その間にお話しをしたりしています。
今日は、ニュージーランドから、墨絵を習いに来てくださったGさんのお話です。
Gさんは、「最近、バイオリンも始めたんです…。」と
ご自分の事を語り出してくれました。
---バイオリンも、習得に時間がかかる楽器でしょうから、
ひょっとしたら、Gさんは難しい事に挑戦するのが
お好きなのかな?と思っておりますと、
そういう話では なかったのです。
「ずっと、やりたかった事を、
大人になった今、始められる喜びで、いっぱいなんです。
今日も、こうしてずっとやりたかった墨絵を、
始めていることが 嬉しくてなりません。」
との事なのです。
そして、更に、
「私は、人と違っていたのです。
幼い頃から、癇癪持ちでした。すぐカッとなって 怒る。
そんな自分が どうしようも抑えられませんでした。」
「そんな私でも子供の頃に、本当はバイオリンが習いたかったのです!
それで、念願のレッスンに通いましたが、
やはり出来ないと、怒りが鎮まらなくて、
レッスンを続ける事も出来なかったのです。
あんなに、やりたかったのに。
それ以来、自信を失くして不安でした。」
「就職してからも、職場でも、私はすぐに怒る人でした。
いろいろ工夫しましたが、ダメで、もう仕方がないと思っていたのです。
ところが半年ほど前、同僚が連絡ミスで、計画通りに仕事が進まなかった時、
突然私は、
「いいよ。」と答えました。
そして、胸の中で「それでなるようになっているんだから。
なりゆきに任せてみよう。」
と思ったんです。もう、突然に!」
「いや~。その瞬間の感動は いまだに忘れられませんね。
あまりに感動して、「今日から、コレだ!!」と思い、
その後の事も、おなじように成り行きに任せてみたのです。
すると、別にどうという事もなく、
いえ、色々あったんですが、
それすらも成り行きに任せてみることにしたのです。
もう、とことん、行き着くところまで、「いいよ。」って言い続けてみる事に。
まあ、実は、実験のようでしたけど。
そして、「なんだ、これで大丈夫だったんだ」という確信を得ました。
いや~、以前の自分では考えられない!…いや、本当に。」
---なるほど。
「そして、どんどん心が穏やかになっていくのを、
実感しました。」
「この今の私なら、バイオリンも出来るかも知れない。そう思いましたね!」
---今、いい感じじゃないですか!
「そうなんです、ありがとう。
バイオリンを練習していて、下手ですけど「いいよ。いいよ。」と
自分に思えます。何より、誇らしい。」
「今回、時間があって、憧れていた日本に来ました。
ずっとやりたかった墨絵を、もう今の私は出来るんじゃないか、と思って。」
---よく来てくれました!
「同僚は、私に言います。
バイオリン?大人になってから そんなもの始めて、どうするの?
膨大な時間がかかって、レッスンにお金もかかるし。
今からの時間とお金を、将来の役に立たないものに
使うかな?と。まあ、そうでしょう。
今からプロになろうとか、私も思いません。」
「でも、私は、皆さんに
大人になってから始める お稽古ごとの素晴らしさ、を
知ってもらいたいのです。」
「子供は、子供なので、出来ない事もあるのです。
でも大人になったからこそ、自制心も持てるようになり、
できる事があるのです。」
「そして、やりたい事をやる、という
この心の幸福を。」
---
わたしは、墨絵の道具が後世にも続いており、
こうして人々の人生を、描く方面からも照ら続けてくれている事を、
心から願わずにはいられません。
わたし自身もそのために、力を尽くし蘊を発して惜しむことのないように
続けてまいりたいと思います。
このGさんとの出会いは、約1年程まえの事なのですが、
今でも心に染みています。
(お道具を買って行かれたGさんの、自宅学習風景。左中央の「キーウィ鳥」に注目!)
琳派墨絵クラブ