ある税理士のつぶやき(旧:とある明石の弁護士、つれづれ日記)

弁護士(りんどう法律事務所)を廃業し、現在、姫路市で税理士をやっています。折に触れ、生活情報等をつぶやきたいと思います。

レオパレス訴訟和解のご報告及びサブリース契約をしようと思っている方へ

2013-08-06 03:17:31 | 社会・経済
 なかなかブログが更新できずに済みません。
 コメントでもリクエストのありましたレオパレスとの訴訟が和解となりましたのでご報告いたします。

 まず、訴訟に至った事実関係を簡単に説明しておきます。

 物件は、平成7年にレオパレスが、一括借り上げを前提として建築した木造アパートです。
 アパートの建築時の説明は、建築したアパートは30年一括借り上げをするというものでしたが、築16年目の平成23年11月30日、レオパレスから一方的に解除されたものです。
 レオパレスから平成22年12月に家賃減額の要請があったのでこれに応じた後、1年もたたない平成23年8月にレオパレスの社員が解除を言いに来たものです。
 当初の30年一括借り上げは口約束でしたが、「レオパレス共済会」に加入した際、平成32年3月まで借り上げをするという「約定書」を締結しています。
 そこで、オーナー側は「解除はできないはず。」として、合意解除に応じなかったところ、2か月後の10月に一括借り上げが終了するとの内容証明がオーナーのもとに届き、10月末までに住居者は全退去となり、11月から家賃は振り込まれなくなりました。
 オーナー側は、3000万円超のローンが残った状態でした。
 そこで、オーナー側が、平成23年10月25日、神戸地方裁判所姫路支部に訴訟提起したものです。
 訴訟での当方及びレオパレス側の主張については、
 当ブログの http://rindou-lawoffice.blogzine.jp/blog/2012/08/post_ec3e.html をご覧下さい。


 長い訴訟の結果、平成25年7月17日、レオパレス側と和解が成立しました。
 和解が成立したということで、
 当方は、レオパレスの解除を認める、レオパレス側は一定の解決金を支払う、ということになりました。
 なお、解決金の額は、和解の約束で、公開することはできません。
 これは、当事務所に個別に電話を掛けてこられても同じです。ご了承下さい。

 当職の裁判の感想としては、レオパレスが解決金を支払ってくれたことで、同社の一定の誠意は見られたと思います。
 しかし、オーナー側に何ら債務不履行がないのに、サブリース業者側から一方的に解除できるということについては、やはり不当、いや違法な行為という思いはぬぐえません。
 それを明確にできなかったことは、この裁判が難しかったことを物語っています。
 ただ、最初は、当職一人で行っていた訴訟ですが、途中で他の先生の助力を求め、弁護団という形で対処し、一定の成果を出せたこと、また本件でサブリースに関する法律的問題点や訴訟における問題点が明らかになったことは、サブリース問題に対処する上で、一つの財産になったと思います。

 本件は、「業者からの一方的解除」というかなりドラスティックな問題でしたが、サブリースには、家賃減額問題、保守契約の一方的変更の問題、またアパート請負契約時の問題、アパートの品質問題等、まだまだ様々な問題があります。
  そして、それはレオパレスだけでなく、大東建託、その他のサブリース業者にも存在します。
  そのような問題が生じる根本は、現在の法律では、サブリース、特にアパート建築請負・賃借一体型のものは、単に請負契約と賃貸借契約の問題として扱われ、しかも賃貸借場面では、業者が法律で保護される賃借人として扱われるという、実態に合わない形でしか、法律が適用できないということにあります。
  ですので、現在のところ、オーナー、またはオーナーになろうとする方が、契約に入る前に自己防衛をする必要があります。
  そのためには、業者に十分に説明させることです。以下の視点が必要だと思います。
 
  1.請負契約は途中解除できるのか。
  2.途中解除した場合に違約金等あるのか。手付けはどうなるのか。
  3.一括借上は解除されることがあるのか。あるとしたらどのような場合のなのか。
  4.解除した後の居住者との関係はどうなるのか。
  5.解除になった時のアパート内の付属物はどうなるのか。
  6.家賃保証何年なのか。
  7.家賃保証期間中に減額されることはあるのか。減額されるとしたらどんなときなのか。減額率の上限はあるのか。
  8.建物の保守(修繕等)はどなるのか。保守契約の見通しは大丈夫なのか。変更があることはあるのか。
  9.オーナーに新たな負担が発生することはないのか。どんな負担が予想されるのか。
 10.新たな負担が必要になった時に、それを承諾しなかったらどうなるのか。
  
  できれば、上記の説明を書面でしてもらうべきだと思います。
  また、サブリースの物件は、建築後直ぐに業者(=建築者)に賃貸されてしまうので、建物に瑕疵があったとしても所有者たるオーナには分かりません。
  分かるのは、サブリースが終了して、建物を返還された時、という事にもなりかねません。
  そこで、できれば、アパート建築後、オーナーが検査できる期間を設けてもらうべきです。
  しかし、建物の瑕疵は、ある程度住み続けた時に、居住者が気づく事が多いので、短期間の検査では全ての瑕疵が明らかになるとは限りません。
  そこで、居住者から、建物に関する苦情があった場合は、オーナーに通知してもらうことを約束してもらうことが必要だと思います。
  賃貸借に関する苦情は、オーナー自身、一括借上で業者任せでしょう。
  そもそもそういうふれ込みでサブリース契約しているので、自分で賃貸業を営んでいる意識は希薄と思います。
  ですから、「業者と居住者のトラブルをいちいち報告してもらう必要はない」と思われるかも知れませんが、こと建物に関する苦情は、自分の所有物に関することです。情報提供してもらう方がよいと思います。
  そうでないと、建物の瑕疵で、居住者の生命身体財産が損害を被った場合、最悪、業者だけでなく、オーナーも賠償責任を負う可能性があります(民法717条)。ご自分の建物には、十分に注意を配られて下さい。