下記の記事は東洋経済様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
コロナ禍によって、子どものフラストレーションがたまっている。
「国立成育医療研究センター」(世田谷区)による、0歳から高校3年生までの子ども・保護者を対象とした「コロナ×こどもアンケート」によると、15~30%の子どもに中等度以上の「うつ症状」の傾向がみられたという。
同調査は、コロナ禍以降4回にわたって行われ、直近の2020年11~12月に実施したアンケートでは、回答した小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状がある――ことに加え、その保護者の29%にも中等度以上のうつ症状がみられたと報告している。
子どもの相談が「以前の4倍」に
「当院でも中高生の子どもの相談がとても増えています。ここ3ヵ月で、以前の4倍ほどの急増です」と語るのは、うつ病のカウンセリングや依存症の認知行動療法を専門とするライフサポートクリニック(豊島区)の山下悠毅氏。
同クリニックは、基本的に成人を対象としているのだが、依存症を専門に取り扱うため、保護者が「ゲーム依存症になっているのではないか?」などの不安を覚え、親子で来院するそうだ。切羽詰まっている、そんな保護者が少なくないという。
実は、昨年9月に実施された「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」(厚生労働省)において、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べた変化の項で、約2割が「ゲーム時間が増加した」と回答している。
男性15〜19歳にいたっては58.1%、女性15〜19歳も43.2%という数字が示すように、10代のゲーム時間の増加は著しい。言わずもがな、休校や外出自粛などにともなうイエナカ時間の増加に比例する形でゲーム時間も増加しているわけだが、どうやら話はもっと複雑のようだ。
「私も、当初は『イエナカ時間の増加によるゲーム依存』といったケースを想像したのですが、ふたを開けると『子どもがコロナを怖がり学校に行かない』『感染しても無症状と伝えても家から出ない』といった相談ばかりでした。そのため、『過度に不安が強いお子さんや、理解力がまだ不十分なお子さんなのかな』と思ったのですが、診察室でお子さんと二人きりで話してみると、不安を語る子どもは少なく、新型コロナウイルスへの理解も問題のない子ばかりだったのです」(山下氏、以下同)
いったいどういうことか。
「診察を重ねていくと、どうやらこのたびの不登校の子どもたちは、私が今まで相談に乗ってきた、いわゆる“学校に行きたいのに行けない”子どもではなく、“学校には行く必要がないから行かない”と考えている印象です。もちろん、前者のようなケースの相談もありますが、緊急事態宣言の発令で学校が急に休みとなり、登校が再開したかと思えば、異なるクラスや学年の感染により再び休校となる。しかし、家族や友人が誰もが健康であり、『コロナはただの風邪』なんて話す大人までいる。その結果、一部の子どもは『学校は休んでも問題がないのでは』と疑い始めているのです」
これまでであれば、親が「学校へ行きなさい!」としかりつけることに、一定の効果はあっただろう。しかし、コロナ禍を経て、「え? どうして行かないといけないの。だって、学校へ行かなくても何とかなっているよ」が、一つの回答として間違いではないことが示されてしまった。
ゲームに依存しているのではないかという不安は、入り口にすぎず、奥へと進むと子どもと保護者の関係性に関する悩みがほとんどだという。「義務教育という、ある種の洗脳が解けてしまった。学力が低下することを危惧する保護者もいます」と山下氏が指摘するように、コロナ以前では通用した親から子への教育のフォーマットも、ニューノーマルを迎えているというわけだ。
どうすれば「子どもとの軋轢」を防げるのか?
保護者の戸惑いはイライラとなり、子どもにも伝わる。先の第4回「コロナ×こどもアンケート」では、「すぐにイライラするか?」という設問もあるのだが、小学生以上の子どもを持つ保護者の36%が該当すると答えている。さらに、子どもたち自身も、小学1~3年生32%、小学4~6年生37%、中学生42%、高校生27%が、「すぐにイライラする」と回答しているほどだ。いつ割れるともわからない巨大風船が膨らみ続けている。
こうした軋轢をどのように解決したらいいのか。山下氏に尋ねると、「我々としても初めてのケースなので、日々向き合っている最中」と前置きした上で、「親の価値観を見つめ直さないと、子どもを導くことは難しい」と説明する。
「私が、診察室で『どんな親だったら子どもは言うことを聞くと思いますか』と親御さんに尋ねると、多くの方が言葉に詰まってしまいます。『何と言えばいいか教えてください』と聞かれることもしばしばです。しかし、大切なことは“何を言うかではなく誰が言うか”です。『学校に行くのは当たり前。子どもの仕事は学校に行き勉強をすること』では、子どもは納得しないのです。この話は子どもに限った話ではなく、誰だって、尊敬や信頼できない人からのアドバイスに耳を傾けたいとは思わないですよね」
ライフサポートクリニックへ親とともに来院したある男子中学生は、「義務教育というのは子どもが学校へ行く義務ではなくて、親が子どもに教育を受けさせる義務であって、子どもの義務ではない」といった正論を展開したそうだ。感心してしまうほどの頭の良さ。だが、もし親である自分が言われたらと思うと頭が痛い。言い返す言葉がない……。
大事なのは「親としての器」
「『社会で生きていくことは大変。お父さんもお母さんも、必死で仕事を頑張っている。だからお前も学校へ行け』なんてことを言いたくなる気持ちは、もちろんわかります。しかし、子どもにしてみたら『そんな人生がつらそうな親のアドバイスを聞いたなら、自分も将来、同じ目に遭いかねない』と意識下で感じ取るため逆効果です。
そうではなく繰り返しになりますが、人を導びくには、相手からの信頼や尊敬が不可欠。『ゲームの時間を守らせたいなら、親も帰宅したらスマホをいじらない』『家で勉強させたいなら、まずは親が読書や勉強をする』『早く寝かせたいなら、親も一緒に早く寝る』というように説得力をともなわなければいけません。もちろん、『子どもと親は別』もその通りです。しかし、私たちだって『遅刻するな』と口うるさい社長がいつも遅刻していたら、『社員と社長は別』であることを知っていながらも、その社長を信頼や尊敬することは困難なわけです」
経済力や職業といったスペックが大事なのではない。大切なのは、親としての器をどう作り上げていくかということ。
そして、言葉で説明する際は、抽象的な説明は避けることも控えたほうがいいとも。例えば、「遅刻はよくない」ことを伝える際も、「ダメなものはダメ」ではなく、なぜ遅刻がいけないのかを具体的に伝えなければ信頼を得ることは難しいとも。たしかに成人すれば、遅刻=デメリットだとイヤでもわかる。しかし、子どもの時分では、せいぜい先生から注意される程度。子どもには理解できないだろうから、親自身が想像力を働かせて、伝えることが肝要となる。
「心理学の世界に、“社会的結末を共有する”という考え方があります。遅刻を続ければ、いずれ保護者が先生に呼び出されて、子どもと一緒にしかられる。ところが、多くの親がそれを面倒くさがり嫌がるわけです。つまり、社会的結末を共有したがらない。ですが、それをやってあげることこそが親の愛情なのです」
診察では「先生の言いたこともわかるが、そもそも痛い目を見る前に行動を変えられる子どもにしたい」と補説する保護者もいるという。
「社会的結末を共有すれば、子どもは考えるきっかけを得ることができます。しかし、その共有もせずに親の言いつけを守らせたい気持ちは『親のコントロール願望』」と言えます。また、言われたことをむやみに実行する子どもは、将来、人から簡単に騙されかねないのです。子どもは子どものうちにたくさんの失敗をすることで、自分の頭で考える大切さを学び、人を見る目を養うのです」
特に大事なのは「良好な夫婦関係」
尊敬や信頼は、社会的結末を共有する際にも効果を発揮する。
「親子で先生に呼び出された際に、先に謝るのは子どもではなく保護者である場合が多いでしょう。なぜなら呼び出されて困るのは、子どもではなく親なわけですから。ただし、そうした場面でも子どもからの尊敬や信頼が強ければ強いほど、『親に迷惑がかかるから、同じ失敗は避けよう』と子どもは考えるのです。
最後に、私は夫婦そろって受診にいらしたケースでは、決まって良好な夫婦関係の再構築をお願いしています。言うまでもなく、子どもにとって両親はどちらも大切な存在です。そして、子どもはそんな二人が仲睦まじく生活する姿を通して、両親への尊敬や信頼を深めるからです」
コロナによって社会の様式やルールが刷新された。保護者自身、子どもとの向き合い方をバージョンアップする局面を迎えている。
山下 悠毅(やました・ゆうき)
精神科医、ライフサポートクリニック院長、極真会館東京城北支部指導員。専門は依存症治療、うつ病やパーソナリティ障害のカウンセリング。
追記:今の子供が青年・大人になったとき何人かは犯罪に走らないか心配です。マスコミで報道されいるような犯罪です。親はどうすることもできません。
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