下記の記事は東洋経済様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
11月末に、2020年国勢調査の人口等基本集計の確定結果が発表されました。そちらの配偶関係別人口に基づき、2020年時点の50歳時未婚率を算出してみたいと思います。
50歳時未婚率とは、厳密には50歳の未婚率ではなく、45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均値を指します。アラフィフの未婚率とお考えいただければよいかと思います。
男女とも生涯未婚率は過去最高に
実は、この50歳時未婚率は、かつて生涯未婚率と呼ばれていました。それは、50歳を超えてからの初婚が著しく少ないために、それを超えたら生涯未婚であると認定しても支障がないという判断だったからです。
とはいえ、晩婚化の進行もあり、50歳以降で初婚が決してないとはいえないという事実もふまえ、呼び方が、生涯未婚率から50歳時未婚率と変更になったようです。
この連載の一覧はこちら
しかし、晩婚化が進んだとはいえ、50歳を超えての婚姻は再婚が多く、2020年に人口動態調査を見ても、初婚ベースでの50歳以上初婚構成比は男性1.6%、女性0.7%と微々たるものです。
50歳を超えての初婚は今でも男女ともほぼ難しいと考えてよいでしょう。よって、本記事では、以前の呼称通り「生涯未婚率」として呼ぶこととします。
未婚率の計算式は、総数から配偶関係不詳や年齢不詳を除いたもので計算するのが今までのルールです。
生涯未婚率=((「45-49歳の未婚者数」÷(「45-49歳総数」-「45-49歳配偶関係不詳数」)+「50-54歳の未婚者数」÷(「50-54歳総数」-「50-54歳配偶関係不詳数」))÷2 2020年の値もそのルールに従って算出します。
2020年の生涯未婚率(外国籍者を含む総数による)は、男25.7%、女16.4%でした。国勢調査が開始された大正時代の1920年からの長期推移のグラフを見れば一目瞭然ですが、男女とも過去最高記録を更新しました。
5年前の2015年が、男23.4%、女14.1%ですから、男女ともそろって2.3ポイントずつ上昇したことになります。男性の4人に1人、女性の6人に1人は生涯未婚となりました。ちなみに、日本人だけに限れば、男25.8%、女16.5%とほんの0.1ポイントだけ高くなります。
2040年には男30%、女20%に?
一部報道で、生涯未婚率を男28.3%、女17.9%としているところがあります。しかし、それは、配偶関係不詳と年齢不詳を按分合算した「不詳補完値」を使用したものです。
前述した通り、2015年までの数値は不詳を除く計算式で算出していたので2020年だけ 「不詳補完値」を使用した数字で推移を見るのは適切ではありません。総務省統計局に直接問い合わせをしましたが、基本的には「不詳補完値」はあくまで参考値であり、それを用いて算出した値を2020年の生涯未婚率として推移表記するのは適切ではないという見解でした。
もし「不詳補完値」を正とするのであれば、それ以前の過去データもすべて遡及集計する必要があります。しかし、2020年の「不詳補完」による計算を過去データにあてはめてすべて遡及集計することは統計局的には不可能だということです。今後、年齢不詳や配偶関係不詳の人数が激増した場合、将来的に「不詳補完値」を正とする時期がくるかもしれませんか、現時点ではそれはありません。
とはいえ、男25.7%、女16.4%だったとしても、過去最高であることに変わりはありませんが、私個人的には、当連載でも何度も書いてきたように、2020年のこの数字は予想通りのもので特に驚きはありません。
国立社会保障・人口問題研究所による2018年公開の将来人口推計においても、2020年の生涯未婚率推計値は、男26.7%、女17.5%でした。推計値のほうが約1%程度高いですが、大きな流れとしては推計通りといえます。
このまま推計通りにいけば、2040年には男30%、女20%近くまで生涯未婚率はあがります。男の3人に1人、女の5人に1人が生涯未婚となります。その中には未婚のシングルマザーを選択する女性や、婚姻せず事実婚で生活を共にする男女も未婚としてカウントされます。
さて、この生涯未婚率の都道府県の推移についてもあわせてみてみましょう。
さきほど、2040年には女性の生涯未婚率は20%、20年後には5人に1人の女性が生涯未婚となると書きましたが、東京はすでにその20年後を先取りして、はじめて大台を突破し、20.1%となりました。
東京の女性の未婚率の高さについては以前もこちらの記事(『東京は高給女と低収入男の「未婚アリ地獄」だ』)でご紹介していましたが、相変わらずその傾向は続いています。しかし、驚いたのは、その東京が女性の1位ではなかったことです。
なんと1位は高知県だった
東京よりも高い生涯未婚率を打ち立てたのは高知県でした。東京より高い20.3%で、わずか0.2ポイント差ですが東京を上回りました。高知は、いままでも決して下位にいたわけではないですが、とはいえ東京を抜き去るとは予想外でした。
こうなると、なぜ高知が? ということを突き詰めたくなりますが、その前に、45~54歳の生涯未婚率対象年齢の女性未婚者数は、高知が約9000人に対しても東京は約22万人です。率だけでみてしまうと誤解しますが、やはり東京などの大都市での未婚は全国的に大きな影響を及ぼします。
ちなみに、東京・埼玉・神奈川・千葉の首都圏と愛知、大阪、福岡の7都府県の女性未婚者だけで、日本全国の女性未婚者の半分になります。大都市であるがゆえに結婚できないという見方もできますが、若い女性の人口移動は基本的に仕事を求めての移動となります(参照:『人口87万減なのに「世帯227万増」日本を襲う変化』)。
経済的自立に足る収入を得た女性は、逆に結婚という選択をする必要を感じなくなるという見方もできます。加えて、女性の場合、全体的に西日本が高く、東日本が低いという傾向があります。
男性のランキングは?
一方、男性をみると、おもしろいことに東日本が高く、西日本が低いという真逆の傾向です。
しかも、1位は岩手県の28.9%、2位は青森県の28.4%、3位は秋田県28.1%と、北東北勢がトップ3を独占です。男性の場合、東京は前回2015年時の3位から大きく順位を落とし、15位でした。男性の東京生涯未婚率は、女性の絶対値よりも高いので、決して低いとは言えませんが、女性と比べるとその順位は大きく違います。
男女の生涯未婚率のエリア差をみてわかるのは、仕事を求めて若年層の人口流入の多い都市部においては、女性の生涯未婚率が高くなり、反対に、若年層の人口流出の激しい地方においては、男性の生涯未婚率が高くなるということです。
勘違いしてはいけないのは、生涯未婚率はあくまで45~54歳の未婚率です。そして、2020年の値が天井ではありません。2040年に男女とも最高値を出す推計がされています。つまり、今から20年後の生涯未婚率が一番高くなるのです。2040年の時に45~54歳ということは、現在2021年時点で26~35歳の若者男女が、生涯未婚の最高記録を出す世代となるということにほかなりません。
まさに、この記事(『恋愛結婚の人は大概25歳で出会っている残酷現実』)で限界結婚年齢についてお話ししましたが、その限界年齢直前の世代によって20年後の未婚率は決定されるし、それは20年後の未来が今ここで決定されているといっても過言ではないのです。
少子化や人口減少の危機がことさら騒がれていますが、今後しばらくは、具体的にいえば2100年頃までは、出生や人口が増える見込みはありません。1990年代に第3次ベビーブームが来なかった時点で、それ以降の若年人口は減り続けているわけですから、万が一全員が結婚して出産したとしても絶対数が減っているので増えないわけです。
「草食化」などのせいにしてはいけない
もちろん、1980年代までの皆婚時代に戻ることが是であるとも思わないし、戻ることも不可能です。結婚しない選択や、子を産まない選択があってもいいでしょう。一方で、本当は結婚したいのに、子どもがほしいのにできないという悩みを抱えている若者も多いことは確かです。
その要因のうちのひとつが経済問題であることは間違いありません。30年間も平均給与があがらない雇用環境を突きつけられ、たとえ正社員であっても年収300万円に達しない若者も大勢います。正社員として雇用されたとしても「45歳定年制」などといわれ、自分が40代を過ぎた時に安定した収入を維持できているか不安ばかりが煽られています。
加えて、子育てや教育費など結婚後にはより一層のお金がかかるという情報も溢れています。そんな状況下では、「経済生活たる結婚」に踏み切れない若者がいたとしてもそれを責めることはできるでしょうか。それを「草食化」などという根拠のない価値観のせいにして、若者を責めても意味がないでしょう。
結婚や子どもを産みたい若者を「お金がないから」という理由で諦めさせないよう、大人たちのお膳立てが求められているのではないでしょうか。
荒川 和久 : 独身研究家、コラムニスト
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます