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染めを教えてくれ。
染めの弟子にしてくれ。手伝うから。
というような問い合わせが10年以上、途切れる事なく舞い込んできます。
バンドでフジロックに出てください!とか、わたくしレッドホットチリペッパーズと申しますが、良かったら今度対バンお願い出来ませんか?とかいう問い合わせでも来れば考えないでもないんですが、残念ながら染めの弟子云々のお問い合わせはいつもお話になりません。
弟子いらないんです。
すみません。
自分の染めを1ミリでも向上させるのに情熱を注ぐので精一杯ですし、無限に湧くアイデアを試すのに時間と労力が物凄くかかりますので、人に教えてる時間なんてありません。
もし教えるのならば、お金をいただきます。
弟子レベルって事でしたら、本気の本気で私と全く同じレベルになるまで教える事になります。
それはですね。結構なことですよ?
まず。
染めのやり方を全て教える。
それは今まで試してきた膨大な20年以上のトライアンドエラーを全て、現在考えうる最高の状態で手渡す事になります。
その上で、私の場合は染める生地にもこだわりがありまして、タイ国のとあるハンドメイド生地を基本的に使っています。
それが1番私の染めに適していると思っています。
その生地に辿り着くまでに、これも何十回も渡航を繰り返し、試し、相談して、訪ねて、尋ねて、頭を下げて、ようやく巡り合ったわけです。
これにどれくらいの価値があると判断してもらえるでしょうか。
また、今現在もわたしの染めは年間に250枚以上は必ず販売出来ております。
染めるだけでは売れませんし、販売が出来ないと続ける事は難しいのです。
それなりに長期間、一定数を販売出来るようになるには、やはり膨大な努力が必要でした。このブログもその1つです。
以前、私の染めに好意的なお客様に、やはり染めを教えてくれと言われた事があります。
私は、私の染めに好意的なお客様でしたので、本当に私も善意と好意で確か1000万円で全て教えますとか言ったと思います。
値段はよく覚えてなくて定かでないけど、多分そのくらいを言った気がします。
私的には、物凄い出血大サービスの値段だったのです。
結果的には、そういう事ではなかったみたいです。
もしかしたら気分を害されてしまったかもしれません。
私もちょっと残念でした。
全部を渡して、自分は全く違う人生を送るチャンスだなって気持ちがありましたので。
これは値段と価値の話ですが、音楽にもそんなことは沢山あります。
家で、スタジオで。
これも膨大な時間をかけて音楽を自分のものにする。指の形が変わる程に練習して創り上げる。
義理と人情、あとアレやコレや総動員で訴えかけて、なんとかお客さんに来てもらう。
そして会場で、その日のイベントの空気感を読み取り、慎重に、大胆に音を選び音量と音色で物語を創る。
積み重ねた音の最高潮の。クライマックスの。その一瞬のための音を出すあらゆる努力からの。
音を切る。
静寂。
その一瞬の静寂のために膨大な努力が演者には必ずあるんです。
染めも究極に大切なところは「染めない」部分です。
音楽も究極には無音の部分をどれだけ音楽に出来るかだと思っています。
ところが物事にある背景を想像する事が出来ない阿呆はそれが分からんので、その大切なやっと手が届いた静寂をぶち壊しちゃうヤツっているんよねえ。もう台無し笑
デリカシーがなくて超嫌いそんなヤツ。
幸い自分のお客さんでは本当に1人も居ないんですけどね。
だから余計に腹が立つんですけどね。わかんねーならどっか行ってろよ、分からねー自分を主張すんなよ阿呆だな本当に。
おっと、なんか普通に愚痴ってるだけになってしまいましたが、物事の背景を少しでも想像出来ると、色々と考え方も変わってくると記しておきたかったのです。それがないと、こちらとしては厚意でも悪意に受け取られる事になってしまうかもしれません。
値段ってのは欲しい人の人数や世の中の状況なんかで変わるものですが、
価値ってのはこの背景がどれだけ分厚く広く、そして熱かったか、それを自分がどれだけ誇りとして愛せるかで決まると思っています。
なので、そこは余程の事情がない限りは安売りは出来ません。
譲れないものがあるんです。
値段は作品を商品として換算するのに付けますが、価値は人の生き様に相当する事もあるんです。
そして染め教えれって人達が欲しがってるのは実は価値の方だと思うんです。
ついでに、ここ数年で一番のヤツを。
ある日、朝メールを開くと。
「染めを教えてもらいたくてメールしましたー!
◯月◯日の何時に富山駅に着くので迎えに来てください。
もちろんちゃんと染めのお手伝いはしますが、なるべく簡潔にポイントを教えていただけると嬉しいです!」
↑↑信じられるかい?本当にこんなんが届くんだぜ?
これを読んで、「おお!見どころのある若者が来るな!よし!なるべく簡潔にポイントだけをしっかり教えてやるか!おっと、その前に迎えに行ってやらねばな。目印は胸のポケットに薔薇でも刺していくか!」ってなる人がこの世にどれだけ居るんでしょうか?
てか、まずお前は誰なんだ?っていう。
まあ、要するにそのくらい安く思われてしまってるんですね。
まだまだです。
自分でも分かっています。まだまだです。
そのまだまだっぷりをメールで知らない人から突き付けられるようで、結構いちいち傷付くんですが、私は馬鹿には絶対に負けないです。
またきっと凄いの染めますよ。