不定期に書く怪物くんスピンオフ小説。小説になっていないかも。悪役主役ー。
「毎日抜け出そうとするのは、授業がつまらないからだよ」
デモキン王子はそう言いながら黄色いオープンカーの鍵を探していた。ブラックベアに没収された鍵を探しているのを手伝うタイガー。王子の気まぐれは今に始まった事じゃないが、何故自分を毎回誘うのかは分からない。
「そもそも分身人形とか犬とか脅迫だよね?あんなつまらない授業を抜け出したらお仕置きとか脅迫だよね?」
まだ先日の事を根に持っているらしい。
「逃げ出したらまたお仕置きされるんじゃないですか?」
タイガーはそう言いながらも臭いで鍵を探してあげている。
「でもつまらないんだ。ドール先生は僕に魔法教えているのは、人間に復讐するとか災いをもたらす為とか個人的趣味の押しつけなんだろ。僕が大魔王の2代目だから魔法を教えてるんじゃないよ」
つまらなそうに言うデモキンに対してタイガーは困った王子だが束縛を嫌う気持ちは分かるので黙っていた。
あまり迂闊な事言うと大魔王に何を言われるか分からない。中間管理職は辛すぎる。
悪魔ランドの悪魔は大魔王デーモンの魔法で今の姿にして貰った無生物や動物も存在する。タイガーは元は虎だった。お酒を飲むと本性の虎になり暴れてしまう悪い癖があった。そんな彼だが何故かデモキンに好かれていた。
「ありましたよ王子!」
タイガーは鍵を物置きの荷物入れの中から見つけ出した。
「やったぁ!これで抜け出せるぞ!あ、授業はまた次回ちゃんと受けるからね♪」
デモキンは嬉しそうに鍵を手にすると、外に出て行ってしまった。
「あーあ。やっぱりやめとけば良かったかな…わし王子に頼まれると断れない」
タイガーがぼやくと、足元の影が動きだした
「ならわしがあの気まぐれ王子を止めてやろうか?」
影が喋り、立体化した。タイガーを威嚇するように四つん這いになり吠えた
「うわぁ!?」
機嫌良さそうにデモキンは口笛を吹きながら黄色いオープンカーを魔法で出現させて鍵を入れたその時、背後からタイガーの影が
王子の身体を掴み、押さえつけた。
「王子、いい加減に授業から逃げるのは止めて欲しいですぞ!」
タイガーの声を低くしたような声の影が言う。
「お前はタイガー!…じゃないな。何者だ!」
デモキンはマジックステッキを掴もうとしたが思っている以上にタイガーの影の腕力が強くて振りほどく事が出来ない。
「よくぞ聞いてくれました!」
不意に陽気な声が足元から聞こえた。影が喋っているのだ。
その影がいきなり立体化して中年の男の姿になった。
「見て見てこの胸の銀バッジ!デモーニッシュ幹部の一人、影使いのミスターシャドーですよ!」
やけに陽気な黒人の姿をした中年の悪魔は胸に付けたバッジを見せびらかした。どうやら自慢しているらしい。
「何だよ。またパパの組織の人?」
デモキンは面倒だなと内心思うが、ミスターシャドーはお構いなしに喋る。
「そうですよ。友達のドールが王子に魔法を教えたいのに毎日抜け出すので困っていると愚痴を言うから、代わりに連れ戻しにきたんですぞ!さぁ、教室に戻りましょう」
「でもシャドーおじさんは僕に魔法を教える先生じゃないんでしょ?それに人間界で怪物族に負けたとかいう話だけど?」
ちょっと反抗的に応えるデモキン。
「うむむ…確かに怪物こぞうに負けたが、あれは相手の弱点を良く調べなかったからじゃ。王子の弱点はちゃんと調べているぞ!結論ー!!悪魔王子は犬に弱い!」
「ちょっと!それずるいよ!」
「悪魔だからずるいのが当たり前ですぞ!行けー影犬!」
ミスターシャドーは取り出した犬の影に命令した。
影犬が吠えると身体の力が抜けていく。
「犬に吠えられると魔法の力も使えなくなるというのは決定的な弱点ですぞ」
ミスターシャドーはそう言いながらデモキンを連れ戻す。
「…次回は絶対抜け出すからね」
それでもまだデモキンは懲りていないらしい。
「もうやめた方がいいんじゃないですか?」
タイガーはそう言いながらも付き合っている。