VRM4のワイヤーフレーム表示では車両は見られないので正確性にはやや欠けますが、やり方は簡単です。
光源を配置して夜間設定にし、見たい車両をゆっくりと動かすだけ。
そうすると、光源の影響を受ける境目のあたりで、光源の影響を「受ける」「受けない」でポリゴンの形状や配置が何となくわかります。静止画では少しわかりづらいのでVRM4と光源付き部品をお持ちの方は実際に動かしてみるとわかりやすいです。
以下、各部のクローズアップ。
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<絵1:上の絵の部分拡大>
四角ポリゴンのはずなのに対角線上に光の影響が出て三角ポリゴンっぽく見える件については後で書きます。
<絵2:車両テクスチャがある部分>
テクスチャがある部分は、わざわざポリゴンを分割し、貼付け用ポリゴンが作られていることがわかります。またテクスチャが貼られているポリゴンには上で書いた対角線上の光がない(あまり目立たない)ことにも注目。
<絵3:扉の部分>
扉の窓には面取り部分があるので、この後に書く単純なモデルによる説明とはポリゴン分割が少し異なります。これも後で一応書きます。
<絵4:扉左上のコーナー部分>
まずはこの部分を分析します。内R面がありますが今はそれは無視しておいてください。
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さて、ポリゴンでこのような扉の開口部を再現する場合には、普通はその開口部の辺の数以上のポリゴンが必要になります(3Dプログラミングの世界では穴あけ用ポリゴンというものが存在するらしいですが、今は関係ないので捨て置きます)。
そこで数パターンの模式図を作ってみました。扉の開口部というよりは、開口窓のついた扉という感じですが。
図1)この形状を作りたいとします(ソリッドモデラーならポリゴンは気にしないので、この状態で終了なんですが(笑))。
図2)「Shade」のようなスプラインモデラーで作った場合、一番シンプルなやり方だとこうなります。「閉じた線形状」(長方形)2つを「自由曲面」というパート(VRMで言うところのグループみたいなもの)に放り込むだけで作れます。簡単かつ非常に手早い手法で「Shade」ではよく使います。
図3)これは「Shade」の「閉じた線形状」を「ポリゴンメッシュ」(ポリゴン)に変換し、穴部分をブーリアンで繰り抜いた場合のもので、且つ5角形以上のポリゴンを使用許可した場合にこうなります。非常に複雑な形状なのでリアルタイムレンダリング向きではないでしょうから除外します(今の見た目でポリゴン数が少なくても三角形分割処理された時点で一気に増えるはずなので)。
図4)これもブーリアンで繰り抜いた場合ですが、三角ポリゴンに限定した場合のパターンです。で、これが一番一般的な分割パターンだと思っておいてください。ソリッドモデラーからサーフェイスモデラー用にデータをコンバートした時にも大体こんな感じになります。
図5)で、これが対象になるVRMでの分割方法です。意外に思われるかもしれませんが、私にとっては全く馴染みのない配置です。
このVRMでの分割方法というのは、VRM特有なのか、ゲーム用モデリングでは一般的なのか、それともポリゴンモデリングでは一般的なのか、その辺はよくわかりませんが、兎に角この分割方法でポリゴンを配置してやる必要があるということです。絶対とは言い切れませんが、現状のVRM4のモデリングがそのようにやっているので、合わせておいた方が無難でしょう。
私はまだポリゴンモデラーというものに慣れていないのでよくわからないのですが、ポリゴンモデラーだとこういう流れになるのではないでしょうか。
図A)3×3のメッシュを作り、中央部のポリゴンを削除する。
図B)形状を整える。
図C)このままでは8ポリゴンなので、幾つかのポリゴンを一体化して4ポリゴンに減らす。
「メタセコイヤ」のようなポリゴンモデラーではこの方法は多分楽に出来るはず
のように頂点数が増えるからです。2つの「閉じた線形状」の8頂点で再現できるものが、4つの「閉じた線形状」の16頂点で且つ正確に頂点や辺を合わせなくてはいけない(きっちり合わせることによって12頂点になる)ので、普通に「Shade」上でやろうとすれば結構面倒臭いでしょう。数箇所程度なら良いのですがほぼ全てが同様のやり方をしていくと考えると尚更です。(それでもしつこく「Shade」を使う気でいます。USO800鉄道さんも所有されているし、2Dベクトルデータを有効活用する方法は多分こちらの方が近道だろうと思いますので。)。
<今回のまとめ>
1.VRMのモデリングは基本的には図5のような長方形のポリゴンを配置するように心掛ける必要がある。
2.テクスチャを貼り付ける部分は、そのためのポリゴンを配置する必要がある。
3.細かい部分の形状については、光源を使った調査で各部位を調べてポリゴンを配置する。
結局のところ「VRM4のモデリングを自分で観察し、自分で考え、自分で作るように。」という非常に当たり前でつまらない話です(笑)。
「六角大王」はポリゴンの表裏に関してどうやら甘そうで、LWO出力後が面倒になりそうな感じなので、一応ここで候補から外します。ポリゴンモデラーが得意なら「メタセコイヤ」、スプラインモデラーが得意なら「Shade」という構図になりますが、「Shade」の場合は一工夫必要という状況です。
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さて、何箇所か素っ飛ばしたので補足をば。
<絵1の四角ポリゴンのはずなのに三角ポリゴンっぽく見える件>
3Dプログラミングの世界のことはよくわかりませんが、結局VRM車両が四角ポリゴンで作られていても、表示するDirect3D側が三角ポリゴン単位で処理しているから、こうなっているのではないかと予想しています。Direct3Dの場合はよくわかりませんが、OpenGLのベンチマークの場合に、対象モデルを何ポリゴンと呼ぶ代わりに、何トライアングルと呼ぶ事例を幾つか見たことがあります。
またWikipediaでポリゴンの項目を見てみると、やはり
リアルタイムコンピューターグラフィックスの世界では、三角形ポリゴンが使用されるのが普通である。
とあるので、モデリング上では四角ポリゴンなんだけど、光源の影響はDirect3Dによって無理矢理にでも三角ポリゴン単位にされるので、あんな表示になっているのではないでしょうか。
VRMのFAQにて、
※ポリゴンモデルの制作は、模型制作とは相当様相がことなります。高速な表示を実現するためにポリゴンの設計レベルから高速化を念頭に入れる必要があります。高度なポリゴンに関する知識が必要です。
とありましたが、四角ポリゴンを使っていること自体は「高速化」には反するような気がします。しかしながら、これはポリゴンモデラーでの作業性向上という面も考えられますし、もう一つ三角ポリゴン状態だと光源の影響を受けると光と影の表示が美しくないということも考えられます。つまり下の絵で考えると、
<左は四角ポリゴンの場合(VRMの現状)、右は三角ポリゴンの場合>
三角ポリゴンになると光と影のライン(青のハッチング部が影だと思ってください)が鋸の歯のようにギザギザ状態がクッキリと出てきて、多分今以上に美しくない表示になるだろうと予想されます。現状の表示もあまりうれしい状況ではありませんが、無理矢理なせいで多少ボケた感じになっている分まだマシかなぁ・・・微妙・・・という感じです。
VRM3のようにテクスチャーを全面に貼り付けることが、これを目立たなくする一番良い方法のような気がするのですが、これはこれでまた歴史的な背景がありそうなので、次回の第3.5回「VRM4車両の生い立ちを推測してみる余計な話」にて少し推測してみるつもりです。
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<絵3の扉の面取り部分の分析>
この時点で細かい部位の話をしても、あまり意味はないと思いますが一応。
扉の窓の面取り部分は下の絵の左のように感じで分割されていると思われます。
で、Direct3Dの影響による分割線を書くと、右の水色の点線のようになり、大体絵3の状態になるというわけです(実際には色違いのラインで更に分割されていますから全く同じではありませんが)。
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今後の予定は以下の通りです。
第3.5回 VRM4車両の生い立ちを推測してみる余計な話
第4回 ソリッドモデラーならこんなに簡単にモデリング出来るという与太話
第5回 「Shade」でVRMモデリングを試してみる話
第6回 (執筆出来るかどうか現時点では不明)「メタセコイヤ」でVRMモデリングを試してみる話
以上、予定は未定ということで。