【1964年 2月 アメリカ・ツアーより】
今回は「FAB4の声域」を取り上げてみます。皆様が漠然ともた
れているイメージは、いかがでしょうか。「ポールの声域は広い」、
「ジョージは狭い」といった感じでしょうか。さて、実態はいかに。
ビートルズの公式 213曲を簡単に俯瞰してみました。
【前提条件】
(1)分析対象曲
‘Revolution 9’のように音階では表現できない部分が続く
曲、‘I Saw Her Standing There’や‘I'm Down’のような
スクリーミング(ただし‘I'm Down’は音階として確認でき
るものとしました)、そしてコーラスパートは「対象外」と
させていただきます。
(2)持ち歌の定義
原則、主旋律のパートを歌うメンバーを、当該曲のヴォーカ
リストとします。もちろんカヴァー曲も対象です。共作や、
‘A Hard Day's Night’のように1曲をシェアして歌う曲も
ありますが、あくまでもメンバー本人が歌っているパートや
領域の中で考えることとします。
(3)音の高さの表記
文中で音の高さを表記していますが、以下の通りに表記して
おります。
440Hzの「ラ」を「A1」
その下の「ド」(ピアノの鍵穴近く)が「C1」
「C1」よりも1オクターヴ低い「ド」を「C」
「C1」よりも1オクターヴ高い「ド」を「C2」
(4)声域の定義と表記
声域は、音の高さの「最低音」~「最高音」を「半音階」と
いう単位で表記します。「半音階」とは例えば「C1」から
「C#1」を「1半音階」として算出した結果の数値です。
従って、1オクターヴは「12半音階」です。
1.全体で見た声域
ビートルズの全楽曲の最高音は、初期調査の段階で‘Hey Jude’の
「F3」と定義していました。しかし‘I'm Down’「G3」の「絶叫」
も音階になっていると考えを改めました。この点は迷いましたので、
いろいろと皆様の見解をお聞きしたいと思います。最低音は、‘I'm A
Loser ’他の「G」です。4人全体では以下のとおりです。
ジョン 最高音‘Day Tripper’ 「D3」
最低音‘I'm A Loser’他 「G」
声域 「31半音階」
ポール 最高音‘I'm Down’ 「G3」
最低音‘Rocky Raccoon’ 「A」
声域 「34半音階」
ジョージ 最高音‘For You Blue’ 「A2」
最低音‘Long Long Long’ 「C1」
声域 「21半音階」
リンゴ 最高音‘Boys’他 「F#2」
最低音‘Good Night’ 「C1」
声域 「18半音階」
2.楽曲単位で見た声域
最小声域は、ジョンの‘Polythene Pam ’で、「5半音階」です。
最大声域は、意外にもジョンの‘I Want You’で、「27半音階」です。
ただし、‘I Want You’は、ファルセットの部分があるため、見方に
よっては対象外とするほうがよいのかもしれません。次点はポールの
‘Hey Jude’で、「25半音階」です。平均値にすると、ジョンの場合
14半音階~15半音階、ポールは15半音階~16半音階です。ジョージや
リンゴについては、10半音階前後(ジョージには12半音階以上の曲=
‘Within You Without You’があります)でしょうか。
3.まとめ
一概に「最高音が高いからよい」とか「声域の幅が狭いから悪い」
ということはありません。クールで内省的な曲に対しては、意識的に
音域を低く狭く抑えて(曲を作り)、歌ったりする場合もあります。
また、ストレートにワイルドに「シャウト」し力強さを表現したり、
ファルセットやハーフ・トーンを併用して、柔軟性を出そうとしたり
・・・。この点において、ビートルズの4人、特にジョンとポールは
「歌唱における表現方法」として、多くの「引き出し」をもっていた
のではないでしょうか。
※調査にあたっては、不十分なところがあります。この記事をお読み
いただき、誤り事項等ご指摘いただければ幸いです。
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ただビートルズの作曲は、オクターブをすごく広く使う、しかもグーッと上がったりコロコロと下がったり、ビュっと上がったりストンと下がったりが激しくて、それがドラマチックなメロディになってると、勝手に考えてました。
イエスタディをギターで耳コピしたレベルの僕ですけどね。
ジョンの初期のdo you want to know a secret?とかね。唄ったのはジョージですけど。
中期からジョンはやがてmonotoneな曲もつくるようになったみたいですが。
どうぞ、あーだ、こーだ言ってくださいね(^^)
>ドラマチックなメロディ
まさにこれです!
的確な表現だと思います。
うまく言えませんが、とにかく
V・S・O・Pではないんですよね~♪
いろいろ調べて気がつくのですが
ビートルズの楽曲を後付で「理論」と結びつけて
展開する文献を多く見かけます。
この記事を含めて。
もちろん、その試み自体は否定しませんが
彼らはきっと「感性」で曲や詞を作っていたり
歌ったり、楽器を演奏したりしていたんだと
思います。
だから、今回の声域のハナシもあくまでも
ひとつの結果、見方として受け止めてくださいね。
ポピュラー音楽という領域において
レコーディングによる「加工」を含め
歌唱の表現は声域だけではありませんから。
声の質やその質自体を変えようとする試みや・・・。
いろいろと♪
すごく勉強になります。
I Want Youが最大・・・おぉ・・
高音の持続力と考えたら、やっぱりポールなんでしょうかね。。う~む。。
A Hard Day's Nightの中間部が高すぎてポールに歌ってもらったり、すてきなダンスも同じ理由でジョージに歌わせたり・・と。。やはり、ジョンは歌いやすさ重視だったかしら。。って、文章が変ですよね^^;すいません。
今回は、音の高さの視点で論旨を展開しました。
しかし、ヴォーカリストの魅力って
いろいろありますよね。
声の質そのものや
いろいろな声の引き出しを持っていたり
時に応じて使い分けたりして・・・。
その点、ジョンとポールには
やはりセンスを感じます。