1740．1966.08.11

　1966年 8月11日。ビートルズのジョン・レノンが「キリスト発言」
を釈明した日です。

　“We're more popular than Jesus now ”

　事の発端はジョンが発言したこの１フレーズです。このフレーズは
1966年 3月、イギリスの新聞『イブニング・スタンダード』に掲載さ
れました。この記事を取材したモーリーン・クリーブはそれ以前にも
ビートルズを取材したことがあり、しかもメンバーからも信頼されて
いました。また、このフレーズの背景や前後関係も十分に取材した上
で「キリスト発言」を掲載したので、イギリスでは問題になりません
でした。

　しかし、アメリカではそうはならなかったのはご承知の通り。雑誌
『デートブック』がこの記事の掲載権を獲得しその年の７月にインタ
ビューの「一部」のみを転載してしまったのです。しかも、表紙には
「ロックンロールとキリスト教、今じゃどっちが重要なのかわからな
い」というセンセーショナルな文字とともに・・・。「キリストより
有名」という部分だけ、ジョンの意図しないところで誇張された形で
アメリカ中に伝播してしまいました。そしてあの暴動です。

　折しもアメリカ・ツアーの前でした。ジョンは 8月12日に初演とな
るシカゴ公演の前日 8月11日に、シカゴのレイクサイドに位置する、
アスター・タワーズ・ホテルの27階で４人が会見に出席する中、質問
に対する釈明をしました。その映像をどこかで見たことがありますが
ジョンの表情には明らかに狼狽、動揺があるように感じました。あの
ふてぶてしいジョンが・・・です。

　ボクはビートルズが神やキリストよりも上だなんて
　言っちゃいない。テレビとか映画とか車とか、他の
　なじみのあるものを出していたら、こんなことには
　ならなかっただろう。

　５年前なら、もう二度とツアーなんかしないなんて
　わめいて、さっさと帰っておしまいにしているはず　
　だ。でも、レコードを焼かれたことはショックだっ
　た。自分の体を焼かれるようなものだからね。自分
　が世の中にまたひとつ憎しみを増やしたことがわか
　ったからには、逃げ出すわけにはいかないんだ。

　謝ってもいい。謝るよ。（アラバマのＤＪが）怒っ
　ていて本気で謝ってほしいと思っているなら。ただ
　騒ぎを起こしたということは悪かったと思っている
　けど、宗教を否定するつもりで言ったんじゃないん
　だ。


　ビートルズが好きであるファンの熱狂ぶりは、デビュー当時と比較
して変わりはありませんでした。しかし、彼らの言動が「社会問題」
として取り上げられるようになりました。それはまさに「ビートルズ」
という現象に他なりません。



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